建築基準法での用語の定義「居室」に台所は含まれるのか?

建築基準法で定められている用語の定義の中で、よく耳にする「居室」という言葉があります。

居室とは、「居住、作業、娯楽などの目的のために継続的に使用する室のこと」と、建築基準法第2条4号で定められています。

それでは、継続的に使用する室に、「台所」は含まれるのでしょうか。

建築基準法上での建物別の居室の例

建築基準法上でいう、居室の定義は、人が住むための部屋(住居)だけではなく、事務所や店舗などの建物内の執務、集会、娯楽などの部屋も居室となります。

建物別の居室の例として、下記のようなものがあります。

住宅:食堂、居間、応接間、寝室、書斎など

事務所:事務室、応接室、役員室、会議室など

店舗:売場、事務室、喫茶室、厨房など

工場:作業所、食堂、事務室、休憩室など

病院:病室、診察室、ナースステーション、医局、待合室など

ホテル:ロビー、客室、レストランなど

映画館:ロビー、客席など

建築基準法の、居室の定義にある「継続的に使用する」という意味は、特定の人間が継続的に使用するということだけではありません。

不特定多数の人間が入れ替わり立ち替わりで、居室に該当する部屋を使用する場合も含まれます。

ですから、店舗などの売り場や、工場の作業所、病院の病室、待合室なども居室となるというわけです。

上記にあげた例として、台所という明確な言葉は書かれていません。

居住に関する台所が居室に該当するか否かは、後ほど詳しく説明いたします。

建築基準法上での建物別の非居室の例

居室ではない部屋を「非居室」といいます。

建築基準法では居室とみなされるもの、居室とみなされないものとしています。

「非居室」の具体的な室名は以下の通りです。

住宅:玄関、廊下、階段、トイレ、洗面所、浴室、物入、納戸など

非住宅:倉庫、機械室、車庫、更衣室、納戸、リネン室など

倉庫は物を保管しておく場所で、人が継続的に使用する室ではないということから、非居室扱いになります。

ここでも、台所は明確に書かれていません。

事務所などの給湯室は非居室扱いになりますが、喫茶店や飲食店の厨房は居室となります。

台所だけは居室、非居室、どちらにも明確に書かれていません。

建築基準法には無限の解釈があります。

台所が居室か、非居室かという部分も、曖昧な解釈に含まれるかもしれません。

また、各地方自治体の建築指導課の主事によっても、建築基準法の定義の解釈は若干の違いもあります。

住宅の台所は居室?非居室?

では、住宅の中の「台所」は居室なのか非居室なのか、どちらでしょうか。

建築基準法には明確な記載はされていません。

ですが、建築基準法解説のような書籍や資料などでは、台所は居室とみなされると明示しています。

また、以下のようにも台所の居室の取り扱いに関する解説があります。

「住宅の台所は、下記の各号に該当する者は、居室として扱わないことができる。

(1)調理のみに使用し、食事など用には供しないこと。

(2)床面積が7.5平方メートル程度であって、かつ、他の部分と間仕切等で明確に区画されていること

具体的には、食事をするようなスペースがあるような広い台所は、居室扱いとされます。

7.5平方メートル程度(3~4.5帖程度)の台所で、他の部屋と区切られている台所は居室とみなさないということです。

ここでの居室とみなさないという取扱いは、採光や換気、避難施設等の規定において、居室として扱わないことができるものです。

間仕切等で区切られているという解釈は、建具のほか、スライディングドア、アコーディオンカーテン、50cm以上の下がり壁、対面型システムキッチンなどがあります。

建築基準法での台所の居室としての取扱い

建築基準法の用語の定義で、「台所」は居室になることがわかりました。

しかし、居室とみなさないという場合があることもわかりました。

それでは建築基準法での台所の居室としての取扱いとはどのようなものなのでしょうか。

居室には、課せられるさまざまな制限があります。

天井高や床高などのほか、採光、換気などの計算があります。

居室は、採光、換気が必要になるために、窓を設けることが必要です。

窓の大きさは、各居室の床面積に対し、割合が決められています。

割合も、建物の居室の種類により数値も決まっています。

しかし、台所は前述した居室とみなさないという取扱いにより、間仕切等で区画されていたら、採光のための開口部は設けなくてもよいとされています。

換気に関しては、台所は居室の定義のほかに火気使用室の扱いになるので、換気設備が必要となります。

採光のみ、非居室として台所は換気計算に算入しなくてもいいということになります。

台所以外の居室の取扱いが曖昧な室

台所以外にも、建築基準法上の居室、非居室の取扱いが曖昧な部屋があります。

建物の用途や状況によって居室とみなしたり、居室とみなされなかったりする室です。

まずは「浴室」です。

住宅などでの浴室は、継続的に使用しないので、居室とみなされません。

ですが、公衆浴場や温泉旅館の浴室(浴場)は、居室とみなします。

建物によって変わる浴室の居室の定義というところでしょうか。

ほかにも老健施設などの浴室はデイサービスでの継続的に使用する居室としてみなされることが多いようです。

しかし、老健施設の用途の範囲が広いため、施設によっては、居室とされない場合もあります。

この見解は、設計者の判断、もしくは行政との協議の上決定することも考えられます。

設計の段階で、どのような利用者がどのように使用するのかを明確にし、居室、非居室の判断になります。

浴室以外では、多目的室や相談室と言った明確に居室と位置付けられていない部屋などがあります。

これらの部屋は、やはり会議室や応接室、作業室などと同じく、使用する用途などにより、設計者、行政、確認検査機関などの協議により明確にするといいでしょう。

いずれにしても、建築基準法に則り、さまざまな使用用途により居室、非居室を決定するのが適切になります。

居室に対する制限

建築基準法による「居室」は、継続的に使用する部屋ということから、さまざまな制限や規定があります。

居室であるか否かによって、制限も大きく違ってきます。

住宅の台所、銭湯の浴室のような部屋は、制限への対応も設計段階から考慮することができます。

しかし、居室か非居室かの判断が難しい場合は、居室に対する制限をどのように判断したらいいか迷うところでもあります。

建築基準法に則った法規チェックの判断も、ほとんどが居室である部分のチェックだと言っても過言ではありません。

居室には環境、衛生、防火、避難に関する制限が細かく定められています。

設計者の考えにより、居室、非居室の判断をする場合が多いと思います。

居室扱いの判断がしにくい場合は、行政、確認検査機関などとの事前協議が大いに有効になります。

特殊な用途での使用の部屋は、前例がない場合、審査機関も慎重に判断をする必要があるためです。

確認申請を出してから指摘が入るよりは、まずは、事前協議で居室、非居室を明確にしていくことがいいでしょう。

台所は居室だが条件をクリアすることで非居室扱いにも

台所をはじめとする、居室の定義に当てはまるのかが曖昧な部屋はさまざまです。

建築基準法上での居室の定義に該当すると細かい制限がありますが、適切な対処法を知っておくことで住宅の台所のように非居室に該当する場合もあります。

いずれにしても、判断が曖昧な場合は、行政や確認審査機関との事前協議をするのが適切と言えます。