不動産を購入する際によく目にする「建ぺい率」や「容積率」は、住宅を建築する上で大切な数値となってきます。
購入したあとで、「思い描いた理想の家が建てられなかった」という事態を防ぐためにも、建ぺい率や容積率の計算方法についてしっかりと理解しておきましょう。
建ぺい率、容積率ともに場所によっては規制が緩和されることもあるので、この点についても確認しておいてください。
建ぺい率の計算方法は?
建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことを指します。
もっと簡単にご説明すると、「敷地のどれくらいを建物に使えるか」ということです。
例えば建ぺい率が60%であれば、土地100㎡あたり60㎡の建物を建築できるといった具合です。
建ぺい率が高ければ高いほど敷地いっぱいに建物を建築できますが、その分防災や風通しの観点では望ましくありません。
建ぺい率を指定することによって、建物の密集を抑制できるようにしているのです。
一般的に建ぺい率は、容積率と同じように都市計画において定められていますが、用途地域によって建ぺい率の上限が決まっていますのでご紹介します。
【第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、工業専用地域】
30%、40%、50%、60%
【第1種・第2種住居地域、順住居地域、準工業地域】
50%、60%、80%
【近隣商業地域】
60%、80%
【商業地域】
80%
【工業地域】
50%、60%
【用途地域の定めがない地域】
30%、40%、50%、60%、70%
このように都市計画によって定められています。
建ぺい率の計算方法は
「建築面積÷敷地面積×100」
で求めることができます。
建築面積が60㎡、敷地面積100㎡だとすると
60÷100×100=60
となり、建ぺい率は60%と算出できます。
建ぺい率には緩和条件がある!
建ぺい率の計算方法は先程ご紹介した通りですが、容積率と同じように緩和条件というものがあります。
一定の要件を満たせば建ぺい率の制限が緩和され、より大きな建物が建てられるようになりますので確認しておきましょう。
建ぺい率の緩和条件には3通りあります。
①指定建ぺい率が80%以外の地域で、防火地域にある耐火建築物は+10%できます。
防火地域にある耐火建築物というのがポイントです。
準防火地域内の耐火建築物には適用されません。
②角地である場合には+10%できます。
特定行政庁が角敷地と指定することが条件です。
ただし、道路に二項面しているだけでは、建ぺい率は緩和されません。
③①、②のどちらも満たす場合には+20%できます。
防火地域にある耐火建築物で特定行政庁が角敷地と指定する場合、20%加算できます。
この他にも建ぺい率の制限がなくなる場合もあります。
それは、建ぺい率が80%の地域で防火地域内にある耐火建築物です。
建ぺい率の制限を受けないため、敷地いっぱいに建物を建築することが可能です。
用途地域が2つ以上にまたがっている時の建ぺい率の計算方法
建ぺい率の計算方法でややこしくなってしまうのが、敷地が2以上の地域にまたがっている場合です。
用途地域が2以上の地域にまたがっている場合は、単純にどの地域により多く土地が存在するかを考えればよかったのですが、建ぺい率や容積率はそうはいきません。
2以上の地域にまたがっている場合の建ぺい率や容積率の計算方法は、敷地面積を按分して適用することになっています。
いわゆる加重平均というものです。
計算方法が少し複雑になってしまいますので、例を挙げてご説明していきます。
全体で600㎡の土地があったとしましょう。
そのうち200㎡が建ぺい率80%、400㎡が建ぺい率60%の場合、まずはそれぞれの面積を出していきます。
200㎡×80%+400㎡×60%=400㎡
これがこの土地で建てられる建物面積の最大値となります。
この数字を全体の敷地面積で割ると
400㎡÷600㎡=66.667%
となり、これがこの土地の建ぺい率となります。
容積率の計算方法は?
容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合を示すものです。
もっと簡単にご説明すると「どれくらいの高さの建物が建てられるか」と言い換えることができます。
容積率が大きければ大きいほど、より空地を活かすことができるため不動産の価値が上がるといえます。
容積率の計算方法は
「延べ床面積÷敷地面積×100」
で求めることができます。
容積率も建ぺい率と同じように用途地域によって上限が決められており、都市計画によって定められています。
しかし容積率の場合は、都市計画によって定められた容積率がそのまま適用されるわけではありません。
容積率の上限は、敷地の前面道路の幅員によって左右されることがあります。
前面道路が12m以上の場合は問題ないのですが、12m未満の場合は
「前面道路の幅員×40%(もしくは60%)」
という計算方法で出された容積率と比較し、値が小さい方が容積率の上限となります。
40%というのは住居系の地域で、その他の工業地域や商業地域では60%を乗じる決まりです。
例えば指定容積率200%でも、前面道路の幅員が4mの第1種住居地域では、
4m×40%=160%
となり、小さい方の160%が容積率となるのです。
容積率の不算入部分とは?
容積率にも建ぺい率と同じように緩和措置が存在します。
先程ご説明した計算方法の延床面積に、条件を満たせば加算しなくていい部分が存在するのです。
これを容積率の不算入部分といいますが、これからご紹介する不算入部分を除けばその分大きな建物が建てられるというわけです。
①共同住宅の廊下や階段部分の床面積
共同住宅であれば共用の廊下や階段、エントランスホール、エレベーターホールなどについては床面積から除外することができます。
一般住宅についてはこの適用はありません。
②住宅の小屋裏、天井裏
天井の高さが平均1.4m以下で直下階の床面積の50%までであれば、不算入部分にあたります。
ただし、収納目的であることが条件となります。
③自動車車庫、自転車置き場
建築物の各階の床面積の合計5分の1までという制限つきですが、不算入とすることができます。
④地階部分で住宅の用途に供する部分
住宅用途に供する部分の床面積の3分の1までを限度とし、不算入部分として計算することができます。
ただし、天井が地盤面から高さ1m以下に限られます。
少しでも大きな建物を建築したい場合には、これら容積率への不算入部分をきちんと理解しておきましょう。
既存住宅の建ぺい率・容積率の計算方法は?
新築住宅では建ぺい率や容積率がオーバーしていることはないのですが、中古住宅においては建ぺい率や容積率がオーバーしてしまっている時があります。
これは「建築確認が降りた後に設計図を変えて建築した」ような悪質な場合もあれば、「建てられた当初は適法だったが、改定によって基準に適合しなくなった」ような場合もあります。
増築などで知らず知らずのうちに違反してしまったケースもありますね。
これらの建築物を、「違反物件」や「既存不適格物件」などと呼んでいます。
どちらも融資が受けにくいというデメリットがあるためか、格安な価格で売買されています。
また、このような物件を売買する場合には、重要事項説明書への記載が義務付けられています。
既存住宅の建ぺい率や容積率も先程ご紹介した計算方法で出すことができるので、中古住宅を購入する場合は実際に計算してみると良いでしょう。
建ぺい率や容積率は必ず確認を!
建ぺい率や容積率は建築物を建築する上で欠かせない、とても大切な数値です。
基本的に不動産業者が把握しているものですが、市役所や役場などに行けば教えてくれるので確認しておきましょう。
最近は自治体のホームページなどでも確認できるようになっています。
購入後に思い描く理想の家を建築するためにも、しっかりと理解しておくと安心です。