住宅を購入する時に大抵の人は、金融機関から融資を受けて住宅ローンを組みます。
ところが、購入物件自体が原因で住宅ローンが組めないことがあります。
そのひとつに、建ぺい率オーバーという建築基準法違反の物件があります。
今回は建ぺい率とは何か、また建ぺい率と融資の関係について記していきます。
建ぺい率とは?
建ぺい率とは、上空から見たときの建物の面積が、敷地面積に対して占める割合を指します。
建物を上空から見たときの建物の面積を建築面積といいます。
建ぺい率の計算方法は、「建築面積」÷「敷地面積」×100=建ぺい率、となります。
ちなみにバルコニーや軒の出が1メートル以下の場合は建築面積に含まれません。
また、地下室も建築面積に含まれません。
この建ぺい率は用途地域ごとに上限が設定されており、その上限を超えて建築することができないよう決められています。
用途地域とは住居系7種類、商業系2種類、工業系3種類の全12種類に地域を分類し、それぞれの地域ごとに建築できる建物が制限されています。
つまり、用途地域によって建ぺい率の上限が決まっているということです。
例えば、建ぺい率の上限が50%に設定されている地域で、敷地面積が100平方メートルの土地に対して60平方メートルの建物を建てると建ぺい率オーバーとなり建築基準法の違法建築物となります。
そして、違法建築物は住宅ローンの融資を受けられない一つの原因となります。
建ぺい率オーバーと住宅ローン融資
前項で記しましたように、建ぺい率オーバーの建物は違法建築物件ということになります。
違法建築物件に銀行が住宅ローンの融資をするということは、違法建築物件を事実上、銀行が認めることになります。
銀行のように、信用を看板としているようなところは、社会的立場上そのような融資を認めることはできません。
しかし、買主がキャッシュで購入する場合は、融資そのものがありません。
違法建築物といっても購入することに関しては、法律に規制もなく問題になることもないのです。
ただし、買主がこの物件を売却する時には、ローン融資が基本的にできないので売りにくく価格は下がります。
また、ほとんどの金融機関はローン融資に応じてくれませんが例外もあります。
地域によっては少々の建ぺい率オーバー、つまり超過率によってローン融資に応じてくれる場合もあります。
特に信用金庫などでは、購入者の属性が良ければ融資してくれるかもしれません。
買主が購入の仲介を不動産業者に依頼している時、融資に応じてくれる金融機関を探すのも担当者の腕の見せ所といったところでしょう。
なぜ建ぺい率オーバーの建物が発生するの?
これまで、建ぺい率オーバーについてと住宅ローン融資との関連について記してきましたが、なぜ建築基準法違反の建築物が存在するのしょうか。
その理由に、既存不適格建築物と違法建築物があります。
既存不適格建築物とは、建物が建築された当初は適法でありましたが、その後の法律の改正により現在では違法建築物となってしまった建築物です。
違法建築物は、当初から違法に建築された建物と判断された建物です。
では、なぜこのような違法建築物が存在するのでしょうか?
新築の建物を建築するには、建築基準法に抵触しない建物を建築することが建築業者に義務づけられています。
建築基準法では、工事に着手する前にその建築計画建築基準法の規定に適合しているかどうか、建築主事の確認を受けなくてはなりません。
これを「建築確認」といいます。
建築計画が法の規定に適合していると確認された場合に、交付される文書が「建築確認済証」です。
工事の着工も「建築確認済証」の交付を受けていないと着工できませんし、その建築物の広告も同様です。
そのため、建ぺい率オーバーとなることは通常ありえません。
ただし、「建築確認済証」あるいは「建築確認検査済証」の交付を受けた後に増築をした場合、その部分が建物面積に参入されて、建ぺい率オーバーと判断されるケースもあります。
10平方メートル以上増築する際、建築確認を役所への届け出を要しますが、それ以下の場合は注意が必要です。
役所へ届け出をし、建ぺい率がオーバーしている場合は、増築の許可がおりず増築ができないので、建ぺい率がオーバーすることはありません。
ところが、10平方メートル未満ですと届け出義務がないので、知らず知らずのうちに建ぺい率オーバーとなってしまう可能性があるからです。
建ぺい率オーバー物件を再確認!融資を受けられる可能性がある?
こちらでは、建ぺい率がオーバーしている物件を再確認することにより、融資を受けられる物件になる可能性について記します。
古くから登記された土地の中には、登記簿謄本にある土地面積が正確でないものがあります。
そこで、もう一度土地を測量し直してみるのです。
再測量をすることにより、土地面積が狭くなってしまう可能性はあります。
しかし、建ぺい率のオーバー率が2~5%でしたら、再測量で面積が増え、その結果建ぺい率が適法となりローン融資が通る物件となる可能性もあります。
土地家屋調査士などにまず相談することも一つの方法です。
建物をチェックすることで、建物の中に本来は建ぺい率に含めなくても良い箇所が登記されていることに気づくことがあります。
具体的に例を挙げれば、「出窓」です。
床から30センチ以上の高さでなおかつ、壁から出ている長さが50センチ以下であれば建ぺい率に算入されません。
また「バルコニー」、「軒(のき)」、「庇(ひさし)」も、外壁から突き出している長さが1メートル未満であれば建ぺい率に算入されません。
物件をチェックすることで、建ぺい率が適法になる可能性もあります。
建物図面や設計図を見直してみるのも一つの方法です。
カーポートや物置設置で建ぺい率オーバー?融資不可になる可能性も
自宅にカーポートや物置を設置することで建ぺい率がオーバーとなり、住宅ローン融資を受けられない物件となることもありますので要注意です。
カーポートや物置は建築物に含まれます。
建築基準法での建築物とは「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)」と建築基準法第二条により定義されています。
従って、カーポートや物置を増築した場合、その増築面積は建築面積に加算されます。
10平方メートル以上ですと、建築確認の届け出も必要となります。
ただし、カーポートの場合は「車庫における建ぺい率の緩和措置」で一定の条件を満たせば、車庫の柱から1メートルまでの部分は建築面積に含まれません。
前述の通り、知らず知らずのうちに建ぺい率オーバーで融資不可の物件となる可能性もありますので要注意です。
建ぺい率オーバーのまま売却する方法とは?
前項までに、建ぺい率オーバーは違法建築物であり、融資が通りにくいと記してきましたが、条件次第では建ぺい率オーバーのまま売却する方法もあります。
売却しようとする建物の築年数がかなり経過していたり、建物の傷みが激しい場合などは、建ぺい率が少しオーバーしていても、古家付き土地として売却することが可能なのです。
このような物件を、リフォームをして貸し出すために購入する人もいます。
この方法で不動産仲介業者に相談するのも一つの方法です。
次に売買価格が安くなるかもしれませんが、不動産会社に仲介を頼んでも売却できない場合は、買取業者に買取を依頼する手もあります。
ただし、現金決済のところも多いので、買取業者をきちん選定した上で買取交渉することが重要です。
違法建築物とローン融資の関係
これまで、建ぺい率オーバーが違法建築物件になることやその物件の融資について記してきました。
建物を建築する場合は、建ぺい率以外にも様々な法令上の制限があります。
また、この法令も時代とともに変化していきます。
不動産業者はもちろんのこと、売主や買主も、このような法令をできるだけ知っておくことが重要といえるでしょう。