若い世代のみなさんは「濡縁(ぬれえん)」という言葉を聞いたことがありますか。
濡縁とは、家の外壁から張り出した外側の床のことをいいます。
日本の住居ではとても馴染み深くて、古き良き時代を思い出させてくれます。
見かけることが少なくなってきましたが、実は現代の住宅にもよく合う存在なのです。
庭をより身近にしてくれ、木材の魅力たっぷりの濡縁と、ウッドデッキの違いについて調べてみました。
天然木材の魅力が光る!濡縁とは
冒頭でもお話ししたように、現代の若者は、濡縁についてよく知らない、もしくは聞いた事もない、という人が多いかもしれませんね。
一番イメージしやすいのは、ドラマなどでよく晴れた日に、お爺さんとお婆さんが木材でできた縁側に座って、お茶を飲みながらゆったりとした時間を過ごしているシーンです。
この縁側の部分が外にでたものを「濡縁」といいます。
濡縁とは反対に、縁側という言葉は耳にしたことがあると思います。
縁側は部屋内にあり、庭に面した木材でできた廊下の様な場所を指します。
濡縁と縁側の最も大きな違いは、濡縁は屋根のない外に出ているので、雨ざらしになってしまうということです。
濡縁と呼ばれる由来は、「濡れてしまう縁側」という意味合いが込められているとも言われています。
濡縁には、ガラス窓などを開ければすぐに出ることができます。
ですから、下足を履かないまま気軽に部屋の中から濡縁に出て、外の日差しや新鮮な空気を楽しむことができます。
濡縁は天然の木材で作られているものも多いので、昔ながらの和風住宅ととてもマッチしています。
かつては木材製の濡縁が多かった!濡縁の魅力
ここからは、昔ながらの和風住宅でよく見かける、濡縁の魅力に迫ってみていきましょう。
濡縁は、かつては木材で作られているものがほとんどでした。
木材は私達日本人にとって、昔から欠かすことのできない大切な資源です。
木材で作られた濡縁に座っているだけで、木材の温もりや優しさを感じられ、心も身体も元気になれる気がするはずです。
そして濡縁の最大の魅力は、濡縁があることで部屋の中と外との繋がりが緊密になることです。
もしも濡縁がなかったら、部屋のガラス窓を開けるとすぐ真下に地面があることになります。
地面までの段差は、平均しておよそ60cmくらいあるでしょう。
庭に出ようとすると、この段差を飛び降りることになります。
みなさん、このシーンを頭の中でイメージしてみてください。
気軽に庭に出ようとは思えませんよね。
特に足腰に自信が無くなる年齢になると、怪我を避けるためにも敬遠しがちになるでしょう。
その点、濡縁が地面との間に入っていると、段差を飛び降りることもなく、また下足を履かずにサッと庭に出ることができるのです。
濡縁があることで、部屋の中では得られない楽しさや豊かさを発見することができます。
新築に濡縁をつける際は、濡縁を地面に近づくように低くすることで、庭との一体感を図ることができますよ。
濡縁の素材は木材だけじゃない!種類について
近頃では、純和風スタイルの住宅は少なくなりました。
また、狭い土地に住宅が密集しているので、一戸当たりの敷地面積も小さくなり、広い庭を持つことも難しいのが現状です。
しかし、たとえ敷地が狭くても、濡縁を上手く取り入れて、庭との関係性を豊かにすることはできます。
前項では濡縁の魅力についてお話ししましたが、今度は濡縁の素材についてご紹介します。
<天然木材製>
天然木材の魅力は、何と言っても質感や見た目の良さにあります。
人工の濡縁とはやはり異なった、独特の風合いがあります。
木材の温かみを感じたい人におすすめです。
とはいえ、天然木材はどうしても腐りやすかったり、割れやささくれも発生します。
ですから、天然木材には定期的なメンテナンスが必要です。
<樹脂木製>
人工木材です。
木材の温もりも感じつつ、メンテナンスの簡便性も兼ね備えているので、人気があります。
ただし、夏場は表面が熱くなり、冬場には冷たくなるなど、気温を反映してしまいます。
<アルミ製>
最大のメリットは錆びない、腐らないという特性があることです。
そして軽くて丈夫です。
忙しい現代人にとって、やはりメンテナンスフリーは魅力的です。
デメリットとしては、樹脂木製と同様に、気温をそのまま反映してしまうことです。
濡縁とウッドデッキの違いは出幅
濡縁はこれまで天然木材が主流でしたが、最近は色々な素材が出てきましたね。
今現在においては、洋風住宅の人気に火がつき、どんどん増えてきました。
それに比例するように、濡縁というよりもウッドデッキを設置する人が増えているのです。
ウッドデッキも雨ざらしになるという点においては、濡縁とそれほど違いがないように思えますよね。
簡潔に言うと、
・濡縁 和風住宅の室外に張り出した縁側
・ウッドデッキ 洋風住宅のダイニングなどの前庭に、木材を組んで作られたもの
となります。
また、出幅に関しても濡縁とウッドデッキでは違いがあります。
濡縁は腰をかけて使うことが多いため、住宅からの出幅も長くないものが多いです。
反対にウッドデッキには、広いスペースが確保されています。
濡縁がおよそ90cm~120cmくらい、ウッドデッキは180cmが標準的なサイズとなっています。
ウッドデッキは標準サイズよりも、大きくも小さくもできます。
ウッドデッキを設置している住宅を見ると、イスやテーブルを置いて、カフェスタイルを楽しんでいる人も多い様です。
そうなると、もう一つの違いとしては、リビングの延長として使用するか、長椅子のように使用するかといった部分ですね。
濡縁とウッドデッキの違いは床の形状
引き続き、濡縁とウッドデッキの違いについてお話しします。
前項では、濡縁とウッドデッキの違いは出幅にあるとお話ししましたね。
しかし、ウッドデッキにも濡縁同様の小さいサイズもあります。
確かに、天然木材などで大工さんが作った濡縁とウッドデッキには、明瞭な違いはないかもしれません。
それが小さいサイズであれば、なおさら見分けがつかないでしょう。
しかし、大工さんの手作りではなく、市販されているメーカーの商品には違いを見つけることができます。
それは、床が「すのこ状」になっていることです。
ウッドデッキは濡縁と違い、ウッドデッキ上の空間で楽しむことを主眼に置かれています。
ウッドデッキの上でティータイムや読書を楽しみたいと思う人は、イスやテーブルを設置します。
ですから、ウッドデッキに大きな隙間があると、イスやテーブルの脚が落下してしまうのです。
これでは、ウッドデッキの設置目的が快適に達成できませんよね。
濡縁のように腰を掛けることが主な使用用途だとすれば、お尻が落ちてしまうほど大きな隙間でなければ問題ないわけです。
むしろ適度な隙間があることで、より水はけや風通しが良くなり、長く使用できるというメリットに繋がるのです。
ですから濡縁には、「すのこ状」の工夫が施されているのです。
とても境界が曖昧な濡縁とウッドデッキですが、使用用途という点でも違いがあるのですね。
濡縁とウッドデッキは施工方法も違う
住宅に濡縁やウッドデッキを設置することで、普段はあまり長く滞在することのない庭で、のんびりとした時間を過ごすことができます。
色々な使い方ができますが、特に過ごしやすい季節には、とても気持ちのいい場所となります。
素材が天然木材の場合は、木材の香りや温もりを感じられて、最高の癒し空間となるでしょう。
さて、濡縁とウッドデッキの違いは施工方法にもあります。
風雨にさらされる屋外で使うウッドデッキ素材には、耐久性や、施工性、快適性などの要素が求められます。
それらは、使用する素材が天然木材か人工木材かという大きな分類以外にも、木材の種類や施工タイプによっても違います。
ウッドデッキは、テラス屋根みたいに打付けをして設置するわけではありません。
基本的には独立タイプなので、置けるスペースさえ確保できれば、庭のどこへでも設置可能なのです。
濡縁はというと、長椅子の様に持ち運びができる独立タイプと、住宅への打ち付けを必要とする壁付けタイプがあります。
こういった点も、濡縁とウッドデッキの違いとして挙げられます。
新築する住宅が明らかに和風な場合はやはり濡縁が、明らかに洋風な場合はウッドデッキがよく似合いますよ。
濡縁は内と外を繋げてくれる存在
濡縁は今や、懐かしい言葉になってしまいましたね。
住宅が密集していることによって、外と絶縁されがちな現代です。
歴史ある濡縁は、内と外を繋げてくれる存在なのかもしれませんね。
現代の密集地住宅でも、濡縁は活用できます。
決して広い庭は必要はありません。
気軽に使え、外の心地良さを感じながらくつろげる濡縁を、新築する際に設置してみませんか。