一般住宅の戸・ドアとよばれるものには、「開き戸・開きドア・開き扉」と「引き戸」というものがあります。
日本では古くから、開き戸と引き戸の両方を、部屋の大きさや用途によって使い分けていました。
しかし、国によっては引き戸を使うという文化がなく、日本に来ると引き戸の開け方がわからないということがあるようです。
今回は、住宅平面図で引き戸を書くときの書き方について、ご紹介しましょう。
住宅平面図を紙の上に書いてみよう
住宅平面図を紙の上に書くときは、100分の1で書くことがよくあります。
関東間の半間が910mm、1間と呼ばれるものは1820mmになりますので、紙の上では半間を9.1mm、1間を18.2mmとして書きます。
方眼紙を使うと書きやすいです。
壁の厚さは、外壁の厚さと内壁の厚さを足したものを書きます。
外壁から順番に、外部銅縁・遮断型透湿防水シート・構造用パネル・高性能グラスウールボードの中心まででおよそ95~97mmになります。
さらに、内壁は高性能グラスウールボードの中心から防湿機密シート・石膏ボードを合わせて82~83mmです。
合わせて約180mmですが、紙の上で書くときは、1.8~2.0mmで書くと良いでしょう。
方眼紙の上に、壁の中心となる線を一点鎖線で書きます。
その上から壁の厚さ分を乗せます。
一点鎖線で書いた壁の中心から外側へ1mm、内側へ0.8~1mmの位置に線を引きます。
そのまま平面図を書く人もいますが、分かりやすいように壁を塗りつぶすこともあります。
室内の壁は薄くなりますので、内側も外側も0.8~1mmの位置に線を引きます。
部屋の間仕切りや段差と区別するために、壁は塗りつぶします。
そして、戸を書くための開口部の位置は、壁を書かずに空白にしておきましょう。
壁の一部が途切れたようになっている、何もないところに開き戸や引き戸を書いていきます。
開き戸は戸が開く方向に、90度の扇形の曲線を引きます。
引き戸は蝶番や枠がない分、開き戸よりも大きくなります。
1枚が900mm前後のものが多く、紙の上では1枚を9mmの長さで書きます。
引き戸は、そのまま横にスライドしますので、壁と同じように直線で書きます。
実物の戸の厚さは20~30mmくらいになりますので、紙の上で戸の厚さは必要ありません。
普通に鉛筆の線で書きましょう。
引き戸には色々な種類があり、引き戸の種類によって、戸だけでなく壁の書き方にも違いが出てきます。
住宅平面図の引き違い戸の書き方
それでは、住宅平面図の引き戸の書き方をご紹介します。
一般的な住宅平面図で利用される引き戸は、全部で4種類あります。
左右両方に引いて開けることができる引き戸を「引き違い戸」と言います。
引き違い戸は、和風住宅の玄関の他に、押し入れや和室の出入りの戸襖(とぶすま)、縁側に出る時の障子戸、ベランダや庭に出る時のガラス戸でも利用されています。
ベランダに出るガラス戸は、アパートやマンション、団地などでも使われていますね。
引き違い戸は、2枚の戸が右にも左にも寄せることで、開けることができます。
そのため、鴨居や敷居のレールが2本あります。
戸を閉めると2枚が、戸の幅分をずらして横に並びます。
前述のとおり、戸は1枚が900mm前後のものが多いです。
そのため、開口部が戸2枚分の900mm×2=1800mm、紙の上では18mm必要になります。
2mmの厚さで書いた壁の線を18mm空白にします。
空白にした部分に、壁よりも0.1mmほど内側に2本の線を引きます。
2枚の戸は開けたときに重なりますね。
そこで、2本の線はまっすぐの1本にはせず、0.2~0.3mmずらした位置で9mmの平行な線を引きます。
9mmの平行の線は、右は右の壁から、左は左の壁からそれぞれ引きます。
2本の線を中心で1mmくらい重ねます。
2枚の戸の重なった中心に、縦に0.5~1mmくらいの縦線を入れます。
これが引き違い戸の書き方です。
出入りができる開口部はほとんどがこの書き方になります。
ベランダに出るガラス戸は、窓ではなく引き違い戸になります。
私たちの身の回りには、引き違い戸がたくさんありますね。
住宅平面図の片引き戸の書き方
引き違い戸の次に、よく見かけるのが「片引き戸」です。
片引き戸は、戸が一枚で、開けた時に壁や開かない戸に重なります。
壁の内側には余裕があるけれど、外側は作り付けの棚になっている、または片方は開けない方が良い、という場合に使われます。
住宅平面図を書く時は、壁を普通に書いて戸一枚分9mmを空白にしておきます。
空白の部分に9mmの戸を書きます。
この時、戸は壁よりも内側、または外側に書きます。
そのまま、重なる壁に戸が重なったときの9mmの点線を書きます。
これが片引き戸の書き方です。
しかし、片引き戸にはもう一つ種類があります。
重なる壁を他の壁よりも薄くし、そこに戸が重なるようにする方法です。
これを紙に書く場合は、重なる厚みの分、壁を薄くします。
初めに書いた壁の中心線の外側は、他の壁と同じ用に塗りつぶしますが、内側は9mm分空白にします。
戸は壁の薄くなったところに引き込まれますので、空白にした部分に点線を9mm引きます。
壁と重なる点線と、実際に引き込まれる戸は同じ高さに書きます。
重なる部分が壁ではなく、開かないガラス戸「ハメゴロシ戸」になることもありますが、書き方は同じです。
どちらも片引き戸の書き方になります。
住宅平面図の両引き戸の書き方
今でも、大きな和風住宅に使われているのが「両引き戸」です。
最近の一般住宅では、部屋と部屋の間に4枚の襖をはめ込むだけの広さがある家はあまりありません。
昔は20帖くらいの和室を4枚の襖で仕切って、2つ~3つの違う部屋にして使うことがよくありました。
また、長い外廊下や縁側に出るための障子やガラス戸、雨戸でも4枚の戸を使うことがあります。
この時、真ん中になる2枚の戸は、中心でピッタリとくっつくように閉めます。
そして、開ける時は中心の戸2枚を右の戸は右へ、左の戸は左へ引きます。
時代劇などで侍役の人が両引き戸を、2枚同時に勢いよくパーンと開けるシーンがありますね。
あの気持ちの良い音とともに開く戸のことです。
時代劇などで見られる両引き戸は、4枚戸です。
しかし、これは両引き戸という見方もできますが、正確には引き違い戸が2つ並んでいるものになります。
本来の両引き戸は、両サイドが壁やハメゴロシ戸で、真ん中の2枚の戸だけが開くものです。
そして、住宅平面図上での引き違い戸との違いは、戸の鴨居や敷居のレールが一本になることです。
真ん中の戸2枚は、重なることなくピッタリとくっつきます。
それでは両引き戸の書き方です。
まずは、壁を書きます。
壁の内側、または外側に2枚分、18mmの直線を引きます。
直線の中心に縦線を入れます。
ここが、2枚の戸の境目になります。
そして、戸の左右の壁の延長線上に9mmの点線を書きます。
簡単に言うと、片引き戸が左右対称で2枚になっている戸が、両引き戸になります。
両引き戸はレールが1本で良いのですが、両サイドに戸を重ねるだけの壁が必要になります。
住宅平面図の引き込み戸の書き方
最後にご紹介する引き戸が、「引き込み戸」です。
引き込み戸というのは、あまり一般の家庭では利用されることがありません。
イメージとしては、昔ながらの家の雨戸ですが、雨戸の場合は壁ではなく「戸袋」に戸が入りますね。
引き込み戸は、戸袋ではなく壁の隙間に戸が入ります。
私たちが一番近いものを目にしているとしたら、住宅平面図ではなく在来線の電車の扉です。
電車の扉は新幹線のように片引き戸もありますが、ほとんどは扉が開くと電車の車体の壁に引き込まれます。
あの扉と同じように、戸が壁に引き込まれるものを「引き込み戸」といいます。
引き込み戸を作るためには、戸が入るだけの壁の厚さと、その中に隙間が必要になります。
そのため、一般家庭で見かけることはほとんどありませんね。
それでは、引き込み戸の書き方です。
まず、壁と戸の空白は、片引き戸と同じように書きます。
戸の位置は、壁の厚さのほぼ真ん中に書きましょう。
サイズは引き込み戸も9mmです。
違うのは、戸を引き込む壁の真ん中は塗りつぶさずに、壁を引き込むためのスペースを空洞にしておくことです。
戸を書いたら、引き込まれる壁の空洞に9mmの長さの点線を書きます。
片引き戸の点線は、壁に沿って書くのではなく、壁の空洞の中に引き込まれるように書くのが特徴です。
本来の壁の中心に、ちょうど戸の点線を引くことになります。
壁の厚みの部分も戸を引き込むところも、閉じずに空けておきましょう。
引き込み戸の良いところは、戸を開けたとき、すっきりと壁の中に引き込まれるため、外側から戸が見えずにすっきりとキレイに見えるところです。
デザイン性のある家なら、とてもおしゃれかもしれません。
住宅平面図の引き戸と窓の書き方の違い
手書きで住宅の平面図を書くときの引き戸の書き方は、このように色々あります。
しかし、住宅平面図の書き方で知っておきたいことは、戸以外にもたくさんあります。
例えば、住宅平面図を書いてもらうと、窓と戸の区別に悩む人がいます。
時々、ベランダやバルコニーに出る戸を「窓」と勘違いする人がいます。
ベランダやバルコニーに出る戸は、出入りができれば「出入口」、つまり戸になります。
一方、窓には開口部の下に「壁」があります。
つまり、この場合は戸ではなく、窓になります。
窓は、開口部の下に壁がありますので、窓のマークの上下に壁の線を残しておきます。
出入り可能な戸の開口部には、戸の下に壁がありません。
そのため、戸を書くときは、壁の線のない空白に書きます。
しかし、雑誌や広告、ネットで見ることができる住宅平面図では、戸の記号にも上下に線が入っていることがあります。
窓のマークの上下の壁の線に似ているので、窓と見間えそうですが、これは、戸がある場所に段差があったり敷居と区別する必要があるために、線が引いてあるケースです。
よく見ると、壁と線の太さが違うことがありますが、どうしても解らない時は、住宅平面図を書いたメーカーや、建築士の人に聞いてみましょう。
引き戸の書き方を知って平面図を見てみよう
同じ引き戸でも、引き違い戸・片引き戸・両引き戸・引き込み戸と色々な種類があります。
この他にも、ガラス戸の外にあるシャッター型の雨戸や戸袋のある雨戸など、私たちが住む家のイメージを変えるくらい、戸の種類はたくさんあります。
戸の書き方を知っていると、住宅平面図をある程度読み取ることができます。
建て売りの家や中古の家を選ぶとき、マンションを購入する時に知っていると、役に立つこともあります。
戸の書き方を知って、ご自身が住みたい家を書いてみませんか。