納戸といえば、本来思いつくのが収納スペースとしての役割でしょう。
しかし、現在の住宅では、納戸の多方面の利用価値により、その必要性に注目が高まっているのです。
そのため、納戸に窓を設置して、より快適さを求める方も増えてきました。
ここでは、その際のポイントなどをご紹介していきましょう。
納戸の起源とは?その必要性は平安時代から
納戸の起源は、平安時代にさかのぼります。
当時の貴族社会の建築様式は寝殿造りであり、人が出入りするため以外の開口部がほぼありませんでした。
俗に塗籠(ぬりごめ)と呼ばれていたこのスペースは、14世紀の絵巻物にも残っています。
塗籠は寝室用のスペースとしても使われていましたが、宝物などを収納するスペースとしても使われていました。
また、後者のことから、納殿(おさめどの)とも呼ばれるようになりました。
そして、時代の流れとともにその役割も変化し、後に大切なものを収納しておくスペースとして使われるようになり、それが現在の納戸の原点となったといえるでしょう。
納戸は建築基準法において、「居室」としての基準を満たしていない部屋のことです。
それによると、例えば居室に必要な窓が設置されていなかったり、設置されていても基準に満たない大きさだったりするなどの場合は納戸になります。
他にも、天井の高さや換気に関する基準などもあります。
ちなみに、不動産取引の場ではこの納戸をサービスルームなどと呼ぶこともあります。
とはいえ、納戸は窓がないなどの点から目を背ければ、小さな居住スペースとして使うことも可能です。
そのため、居住数の少ない住宅では、納戸を書斎などに位置づけて使う方も増えてきました。
では、納戸をより快適に居室として使う場合、どのようなことが重要なのでしょうか。
次項で詳しくご説明していきましょう。
納戸は収納に最適!居室として使う場合は事前準備が必要
現在の納戸は、クローゼットなどのスペースに比べ、広く設計されていることが多く、それゆえ大きな物を収納するのことにも長けています。
例としては、冬場で活躍するスキー板や、夏場の浮き輪やプールなどの季節物の収納にも便利でしょう。
また、窓がないなど、納戸の光を取り入れることが難しいという点を逆手に取り、食料品などの直射日光を避ける必要がある物の収納にも適しています。
同じく、直射日光による衣類などの日焼けも懸念されるため、それらを納戸に収納することは有意といえるでしょう。
しかし、先に触れたように、書斎などの居室として納戸を使う場合、居室としての本来の機能が備わっていないことを認識する必要もあるでしょう。
つまり、エアコンなどの機器を設置するというコンセプトのもとに造られていないという点も考慮する必要があるということです。
そのため、納戸を収納スペースとしてだけでなく、居室として使う場合、事前にこれらの設置が可能かを確認しておくとよいでしょう。
設計時に確認!納戸を収納スペースとして使う際の注意点
ここまで述べた通り、納戸は収納スペースとして大きな役割を果たします。
では、その収納スペースとしての役割を大いに活かすには、設計の際、どのような点に注意したらよいのでしょうか。
まず、納戸では大きな物を収納したいと思う方が多いため、ある程度天井に高さが必要です。
また、大きな物が出入り口で引っかかりやすいことも考えられます。
そのような場合の対策としては、ドアの種類を考慮することが必要となってきます。
例としては、引き違いタイプのドアなどがおすすめです。
また、納戸自体の形ですが、あまり奥行きのあるものはおすすめできません。
納戸の入り口に入った際、一目でどこに何が収納されているかがわかるような形がよいでしょう。
それに加え、意外に盲点なのが住宅における納戸の位置関係です。
それには、納戸の特徴である窓が設置されていないという点が関係しています。
なかでも、納戸の位置が北にある場合、寒暖差に大きな影響を受けるのです。
それにより、収納した物などを壁に密着させた状態では、結露の発生も懸念されるでしょう。
また、場合によってはその結露が原因でカビが発生することも考えられますので注意が必要です。
大きすぎると逆効果?納戸は窓の大きさを考慮することが必要
現在の住宅では、納戸を収納スペースとして使うだけでなく、窓などを設置して居室として使う方が増えてきたというのは先に述べました。
しかし、そのような場合、設置する窓の大きさは考慮する必要があるでしょう。
まず、納戸は他の居室に比べ、閉め切りの状態であることが多いですよね。
窓を設置して風通しをよくすることが、居室として使う場合には欲しくなるところです。
その際、より大きい窓を設置することにより、風通しをよりよくしようと考える方も多いかもしれません。
しかし、それにより日当たりがよくなりすぎてしまい、結果として収納した物が日焼けしてしまうことが考えられます。
それに加え、夏場などの強い日差しにより納戸内の温度が高くなる原因にもなります。
そのため、納戸に設置する窓の大きさは、納戸自体の広さなどに合わせて考慮しましょう。
窓だけじゃない!納戸を居室として使う際の注意ポイント
前項でご説明した納戸に設置する窓の大きさ同様、納戸における注意ポイントをご紹介していきましょう。
納戸を居室として使う場合、他の居室に比べ費用をできるだけ抑えようとする方も多いのではないでしょうか。
そのため、よく耳にするのが照明を設置しなかったという場合です。
納戸であっても昼などの日照が望める時間帯であれば、照明が必要ないこともあるでしょう。
しかし、当然ですが照明器具がなければ夜では真っ暗な状態になります。
また、コンセントについても忘れてはなりません。
住宅の居室において、コンセントはさまざまな家電を使う際などに必要となります。。
もちろん、それは納戸においても同様です。
コンセントがないことで掃除機を使えなかったり、書斎として使用する場合はパソコンなどにもコンセントが必要となります。。
そのため、納戸にはいくつかのコンセントを設置しておくことをおすすめします。
窓の代わりに換気扇も!納戸の費用を抑えるポイント
納戸を居室として使う場合には、窓の設置がおすすめと述べましたが、窓の代わりに換気扇を設置して空気の循環をするというのもよいでしょう。
また、費用を抑えたい方にもおすすめで、窓に比べ換気扇を設置する方が安く済みます。
それに加え、スイッチで操作できる換気扇の方が、窓の開閉に比べ手間がかからないという考え方もあります。
それから、これは納戸以外の各居室にも共通する点ですが、窓を設置する場合には家具などの配置にも気をつける必要があるでしょう。
特に大きな家具などは、配置する場所によっては窓の開閉を困難なものとする場合もありますよね。
また、忘れがちなことですが、窓を納戸に設置する場合、カーテンやカーテンレールなども同様に設置することが必要となります。
そのため、これら費用を抑えたい方にはカタガラスの窓を設置するのもおすすめです。
また、納戸ではたんすなどの収納家具を配置する場合もありますが、あえてそれらを配置せず、納戸の壁に棚を設置するのもよいですね。
これには一見費用がかかるように思えますが、ホームセンターなどで材料を購入し、自分で設置すれば費用を抑えることに繋がるでしょう。
納戸をどう位置づける?使い方に合った設計や設置を
現在の納戸は、本来の役割である収納スペースという以外にも、書斎などの居室として使われる場合もあります。
また、各住宅により納戸の位置づけも様々でしょう。
そのため、納戸を収納スペースとして使う場合には天井の高さなど、一方居室として使う場合には窓や換気扇の設置などと、必要となるポイントにも違いがあります。
これらを考慮することにより、納戸をより快適に使うことができるでしょう。