土地には一つ一つ地目が決められており、所有する土地が「田」や「畑」のような農地とされている方もいるでしょう。
その中には、「農地を転用して宅地にしたい」と考える方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、農地転用するメリット・デメリットについてと、宅地に転用するのにかかる費用の相場についてご紹介していきましょう。
農地転用とはどういうこと?
農地から宅地に転用する場合の費用の相場についてお話をする前に、まずは農地転用についてお話をしていきましょう。
農地転用とは、「農地」とされる土地を別のものにすることをいいます。
農地は、農地法により「耕作を目的に供される土地」と決められています。
そのため、今耕作として使用されている土地はおおよそ農地とされていますが、今は耕作されていなくても耕作できる土地であれば、このような土地も農地になります。
原則、原状を基に地目も決められますので、同じ農地でも「田」や「畑」として使っていればそのように、特に耕作などを何もしていなければ「耕作放棄地」とされ、地目では「雑種地」とされる場合もあります。
中には、この所有する農地を耕作とは別の目的で使いたいと思う方もいるでしょう。
例えば、家やアパートなどを建てたいと考えているならば、農地である土地を「宅地」に変えなくてはなりません。
農地を宅地のような別の地目の土地に変えることを、農地転用というのです。
農地転用して宅地に!メリット・デメリットをご紹介
所有する農地を宅地にしたい場合、農地転用するメリットとデメリットがありますのでご紹介します。
まずは、宅地に農地転用するメリットについてみていきます。
期待できるメリットとしては、以下のものです。
・活用できる幅が広がる
・使用次第で大きな収益を得ることができる
・将来に対しての不安が少なくなる
宅地となれば、土地を活用できる幅が広がり、使い方次第では安定した収益を得ることにもつながります。
耕作を行わずただ放置しているだけであれば、宅地に転用することで多くのメリットが生まれます。
しかし、メリットもあればデメリットも当然ついてきます。
デメリットとしては、
・転用の手続きが大変(場合によっては転用できないこともある)
・固定資産税がかなり高くなる
以上2つが大きなデメリットとなります。
固定資産税に関しては、かなり重要なポイントです。
地域によって異なりますが、500平方メートルの田んぼの場合、固定資産税は年間で700円くらいです。
ところが、この田んぼが宅地に転用されれば、年間の固定資産税は14万円くらいまで上がります。
700円と14万円では、差があまりにもありますから、この点を注意して転用を行わなくてはなりません。
もちろん、宅地の使い方次第では大きな利益を得ることにつながりますので、固定資産税以上の利益を得られれば特に問題はありません。
それでは、次項から農地転用にかかる費用の相場についてお話をしていきましょう。
農地転用にかかる費用にはどのようなものがある?
農地転用して宅地にしたい場合、かかる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。
申請さえすれば済むと思う方もいるでしょうが、そんなことはありません。
転用自体には手数料はかかりませんが、申請になくてはならない書類は多くあり、これらをそろえるのにお金がかかります。
そのため農地から宅地に転用するには、多くの費用がかかるのです。
所有する農地を宅地として使いたい場合は、
①転用許可・届出の費用
②土地を工事する費用
③宅地に転用後にかかる費用
以上の3つに分かれて、それぞれで別の費用がかかります。
それでは具体的にどのような費用があるのかは次項から詳しくお話ししていきます。
かかる費用の相場もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
相場はどれくらい?①転用許可・届出の費用
それでは、宅地へ農地転用する場合にかかる費用と相場についてお話ししていきましょう。
まずは、「転用許可・届出の費用」についてみていきます。
申請に必要な書類は以下のとおりです。
かかる費用の相場も記載します。
【法人の登記事項証明書】
・交付手数料:1通600円
・オンライン手数料:1通500円(郵送)、1通480円(窓口受取)
申請者が法人の場合のみ、「法人の登記事項証明書及び定款又は寄附行為の写し」という書類が必要になります。
【土地の登記事項証明書】
・交付手数料:1通600円
・オンライン申請手数料:1通500円(郵送)、1通480円(窓口受取)
申請者が法人以外の場合、必要な書類です。
【土地の位置を示す地図】
・「都市計画図」「農業新興地域区域図」申請手数料:数百円程度
・「地図(公図)」請求手数料:450円
【申請に係る土地に設置しようとする施設の位置を明らかにした図面】
・行政書士などへの依頼料:数千円程度
自分で作成する場合は、費用はかかりません。
【残高証明書/融資証明書】
・「残高証明書」の発行手数料:700円から900円
・「融資証明書」の発行手数料:数千円から1万円
【地区除外申請書および土地改良区の意見書】
・「土地改良区の意見書」交付手数料:1件あたり数千円
・土地改良区域除外決済金:100円から500円(1平方メートルあたり)
・専門家への依頼料:数千円から1万円程度
【その他の書類】
各市町村で提出しなければならない書類は異なります。
ここで必要となる書類でも、発行するのに手数料がかかるものがあります。
すべて集めるだけでも、1万円は相場として見た方が良いでしょう。
さらに、行政書士などに依頼する場合は、その依頼料も15万円から20万円が相場とされています。
相場はどれくらい?②土地を工事する費用
農地転用する場合、農地だった土地を宅地にしなければなりません。
そのため、土地の工事代もかかってきます。
これに関しては、依頼する土木事務所などで料金も変わりますので、いくつかの事務所に依頼して見積もりをもらうようにしましょう。
また、農地の場合、道路より低い場所に位置していることが多いかと思います。
宅地にするためには、道路と同じ高さにしなくてはいけませんから、「盛土」および「盛土のための土留め」をすることになります。
例として、10×10の100平方メートルの農地を1メートルの盛土、3面の土留めをする場合についてみていきます。
ここでの各費用の1平方メートルあたりの金額は、
・整備費:500円
・地盤改良費:1,500円
・盛土費:4,500円
・土留め費:55,000円
となります。
ここでは100平方メートルですので、以下のように計算されます。
【整備費】
500円×100平方メートル=50,000円
【地盤改良費】
1,500円×100平方メートル=150,000円
【盛土費】
4,500円×100平方メートル=450,000円
【土留め費】
土留め費だけ計算方法が少し異なります。
盛土をするためには、四方に土留めの擁壁が必要となります。
しかし、1面は道路に面していますから、必要となる土留め擁壁は3面分です。
盛土は1メートルですので、1面あたりの擁壁の面積は1×10=10平方メートルです。
そのため、土留め擁壁を作るのには、
55,000円×10平方メートル×3面=1,650,000円
と求められます。
これら全てのトータルの金額は、2,300,000円となります。
あくまでも相場の金額ですので、土木事務所によって各費用の金額は異なります。
先ほどもお話ししましたように、いくつかの事務所に見積もってもらってから検討すると良いでしょう。
相場はどれくらい?③宅地に転用後にかかる費用
宅地に無事転用した後にも、まだかかる費用はあります。
宅地にした後でかかるものは2つで、以下のものです。
・地目変更の登記申請
・固定資産税
登記上、地目は「田」や「畑」になっているので、農地転用したのであれば、地目変更の手続きを行わなければなりません。
しかし、この手続き自体には登録免許税はかからないので、費用といってもお金はほとんどかかりません。
自分で登記申請すれば、転用許可書があれば済むので数百円で済んでしまいます。
しかし、専門の方などに依頼をする場合は、当然依頼料が発生しますから数万円はかかると見た方が良いでしょう。
費用とは別物かもしれませんが、固定資産税も忘れてはいけません。
デメリットの部分でもお話ししましたが、宅地に転用することで、固定資産税が農地のときよりもかなり高い税額になります。
一般農地の固定資産税の相場は、高くても10ヘクタールあたり数千円ですが、宅地となれば高い税額のところで、数十万円から数百万円の固定資産税を納めることにもなります。
以前の農地のときよりも、10倍100倍の税額になるということを覚えておきましょう。
費用と収益を想定して農地転用を行おう
農地を宅地に転用する場合の費用と相場の金額についてお伝えしてきました。
宅地にすることで得られるメリットも多いですが、収益の見込みがなければ転用してもメリットを得ることはできません。
農地だった土地を宅地に変えるだけでも高額な費用が必要になりますので、かかる費用と見込める収益を想定して、農地転用を検討してくださいね。