年収400万円の会社員の場合、住民税はどうのような計算方法で、いくらぐらいになるのでしょう。
所得税については比較的知られていますが、住民税はそれほどメジャーではないのではないでしょうか。
意外と知られていないその計算方法を、簡単にお教えします。
住民税の計算方法を知らない理由とは
住民税は、社内で計算されているわけではなく、自治体が計算して、通知を送ってくるというシステムになっています。
そのため、経理や総務の担当者であっても、意外とその計算方法を具体的には知らないものです。
みなさんの手元にも、毎年6月ごろに、お勤めの会社を通じて、前年度の住民税の決定通知書が配られているのではないでしょうか。
実は、その計算方法は所得税と大変似ています。
ひとつ違うところは、所得税は国税であって、全国で差異はありませんが、住民税は地方税で、自治体によって少し計算方法に差があります。
そこで今回は、年収400万円の大阪市在住の会社員という前提で、住民税の計算方法を解説してみたいと思います。
年収400万円というと、30代の男性の平均年収程度ですので、所得70万円の配偶者と、小学生の子供が一人という設定にします。
また、社会保険料は年額50万円、生命保険は旧契約で年額12万円、住宅ローン控除を受けていて、所得税から引ききれない残額が10万円としておきます。
では、このようなモデルケースで、住民税の計算をしていきましょう。
年収400万円の住民税、計算方法の公式
住民税は、大阪市在住の場合、市民税と府民税に分かれています。
市民税と府民税には、それぞれ均等割と所得割があり、年収が関係してくるのは所得割です。
ここで簡単に住民税の計算方法の公式をまとめておきます。
市民税所得割額=(年収-給与所得控除-所得控除)×6%-調整控除-他の税額控除。
市民税均等割額=3,000円+防災財源500円=3,500円。
府民税所得割額=(年収-給与所得控除-所得控除)×4%-調整控除-他の税額控除。
府民税均等割額=1000円+防災財源500円+森林環境税300円=1,800円。
なお、年収から給与所得控除と所得控除を差し引いた金額のことを課税所得といい、課税所得は1000円未満を切り捨てます。
また、市民税と府民税の所得割については、それぞれ100円未満を切り捨てます。
そして住民税とは、市民税所得割+市民税均等割+府民税所得割+府民税均等割、つまり全部を合算したものをいいます。
では、年収400万円の住民税を算出するにあたり、最初に給与所得控除の金額を計算しましょう。
給与所得控除はサラリーマンの経費のようなもので、給与額により設定されている非課税になる金額です。
年収400万円の場合は、400万円×20%+54万円、計算すると134万円が給与所得控除になります。
年収400万円から134万円を控除して266万円が給与所得控除後の金額となります。
年収400万円の住民税、人的控除とは
次に、年収400万円の住民税の、所得控除の計算方法です。
所得控除は、所得税の計算をする場合と同じようなラインナップですが、その金額が多少違います。
たとえば、納税者全員に適用される基礎控除は、所得税では38万円ですが、住民税では33万円と5万円の差があります。
ほかにも、配偶者控除、一般の扶養控除なども同じ金額で、住民税の方が5万円控除額が少なくなります。
この所得税と住民税の控除の差額を、公式の調整控除のところで調整しますが、ここではまず、人的控除について見ていきます。
人的控除とは、読んで字のごとく人に関する所得控除です。
納税者自身の基礎控除、扶養配偶者の配偶者控除、扶養外の配偶者特別控除、子供や親などの扶養控除、本人や扶養親族の障害者控除などがあります。
また、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除などもそのひとつです。
今回の場合、まずは本人の基礎控除が33万円です。
配偶者は、所得が70万円のため、配偶者特別控除が適用され、70万円以上75万円未満の場合の6万円が控除されます。
子供については、16歳以上でなければ扶養に入れないので、扶養控除はありません。
つまり人的控除については、33万円+6万円で39万円ということになります。
ほかにも控除があるので、計算はあとでまとめてします。
年収400万円の住民税、その他の所得控除とは
次に、年収400万円の住民税で、人的控除以外の所得控除の計算方法についてみていきましょう。
たとえば、社会保険料が全額控除される社会保険控除、掛け金が全額控除される小規模企業共済掛金等控除などです。
また、全額ではないですが医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、雑損控除などは、一定の計算方法により控除される額が決まっています。
今回のケースでは、社会保険料は年額50万円全額が控除されます。
生命保険は旧契約(平成23年度までに加入の契約)で12万円ですが、年額7万円を超えると3.5万円が控除の上限なので、3.5万円が控除されます。
ここまでで、人的控除が39万円、それ以外が53.5万円で合計92.5万円になりました。
給与所得控除後の266万円から、所得控除の92.5万円を引いた173.5万円が課税所得ということになります。
この課税所得に税率をかけて所得割を計算します。
調整控除前の金額ですが、市民税は173.5万円×6%=104,100円になります。
そして府民税は、173.5万円×4%で69,400円です。
住民税の計算方法、仕上げは税額控除の算出
年収400万円の住民税の計算で、残るは調整控除とその他の税額控除です。
調整控除というのも税額控除のひとつで、課税所得ではなく、算出された税額から直接税金を控除するものです。
調整控除は、所得税と住民税の人的控除の控除額に差額がある(住民税の方が控除が少ない)ため、それを調節する目的のものです。
計算方法は、市民税は人的控除の差額合計×3%、府民税が人的控除の差額合計×2%です。
今回の場合、人的控除が基礎控除33万円と配偶者特別控除6万円ですが、基礎控除は5万円の差があり、配偶者特別控除はどちらも同じ金額でした。
つまり、人的控除の差額は5万円で、調整控除はそれぞれ、市民税1,500円、府民税1,000円となります。
最後にその他の税額控除についてですが、主なものでは住宅ローン控除、寄付控除などがあります。
今回は住宅ローン控除ですが、所得税から引ききれなかった減税分を、13.65万円を限度に住民税からも引いてくれます。
モデルケースでは10万円なので、市民税でその3/5の6万円、府民税でその2/5の4万円になります。
年収400万円の住民税を実際に計算してみよう
必要な数字は揃いましたので、年収400万円の住民税を公式の計算方法に当てはめて最後まで出してみたいと思います。
調整控除前の所得割税額は、市民税は173.5万円×6%=104,100円、府民税は、173.5万円×4%で69,400円でした。
調整金額と住宅ローン減税を加味して所得割を計算します。
・市民税所得割=104,100円-調整控除1,500円-住宅ローン控除6万円=42,600円。
・府民税所得割=69,400円-調整控除1,000円-住宅ローン控除4万円=28,400円。
100円未満の端数処理には該当しないので、これが所得割の税額ということになります。
最終的に均等割を足した市民税額は46,100円、府民税額は30,200円となり、合計76,300円が年収400万円の住民税の年額というわけです。。
ちなみに、もし配偶者と子供が扶養対象者だった場合は、所得控除額が152.5万円となり、課税所得は113.5万円、調整控除額は市府民税合計7,500円です。
ただし、住宅ローン控除が10万円全額でなく、課税所得113.5万円×7%の79,450円になります。
これは、住宅ローン減税が、所得税から引ききれなかった金額か課税所得×7%のどちらか少ない方という規定があるためです。
これらの変更を加えると、配偶者と子供が扶養になった場合の住民税は、31,800円になります。
扶養などの所得控除が、かなり住民税の額に影響することがわかりますね。
住民税は、実際に計算しなくても、知っておくことが大切
モデルケースによる年収400万円の場合の住民税を計算してみましたが、わかっていただけたでしょうか。
少しややこしいかもしれませんが、会社員の場合、自分で計算することはありません。
しかし、計算方法を知っておくことで、住宅ローンや扶養、ふるさと納税などの節税対策を考える一助になればと思います。