家を建てるとき、キッチンやリビング、ダイニングなどは、以前は1階に作るのが当たり前でした。
皆さんも子供時代、実家のキッチンは2階にあったという人は、少ないのではないでしょうか。
ところが近頃は、2階にキッチンやリビングを持ってくるという間取りを選ぶ人も増えています。
そこで、その間取りプランのメリットやデメリットについて、考えてみたいと思います。
2階にキッチンを作る間取りプランの一番のメリットは?
2階にキッチンを作る一番の目的は、なんといっても採光ではないでしょうか。
都市部などでは住宅が密集していて、家と家のあいだが非常に狭いということがよく見られます。
隣の家に日光を遮られて、1階では日中でも電気をつけないと暮らせないというお悩みも、よく耳にします。
そんな悩みを解消する方法が、2階にキッチンを作るという間取りプランなのです。
キッチンでお母さんが料理をし、ダイニングに家族が集まって食事をし、食後はリビングでテレビを見ながら笑ったりくつろいだりする。
そんな家族が集まるスペースは、誰だって明るいほうが気持ちが良いし、家の雰囲気も明るくなるというものです。
1階の部屋では叶えられない、自然光が入り自然の風が通る2階の部屋を、家族が共に過ごす共有スペースにあてるというのは、考えてみれば理にかなった賢い選択と言えるのではないでしょうか。
自然光が入ると、日中の電気代が掛からなくなり、家計が助かるというメリットもありますね。
2階にキッチンを作るその他のメリットとは
採光だけでなく、2階にキッチンを作るメリットは、他にもたくさんあります。
2階のベランダからの眺めは1階と比べて、はるかに良いので、2階に共有スペースを設けることで、家族全員がその景色を楽しめます。
また、1階だとカーテンなどで目隠ししなければ、隣の家や道路からの視線を遮ることができません。
2階であれば、隣の部屋の窓の位置などに注意すれば、プライベートを他人の視線から守ることができます。
他にも、2階建ての場合ですが、天井高を1階よりも高くとることができます。
キッチン・リビング・ダイニングを、広々とした空間にすることができます。
また、天窓やロフトなどを設けることで、さらに光を取り入れたり大型の収納スペースを設けたりと、空間の活用の幅が広がるというメリットもあります。
さらに、構造の点でも、家の強度が増すというメリットがあります。
通常、キッチン・リビング・ダイニングなどのスペースは、柱や壁を少なくすることで、広い空間を確保しなければなりません。
それを1階に配置する間取りでは、壁を厚くしたりして、強度を保たなければなりません。
しかし、1階に居室などを配置して柱の数を確保し、2階に壁や柱の少ないスペースを配することで、自然と家全体の強度が増すことになります。
このように、2階にキッチンを作る間取りには、たくさんのメリットがあるのです。
2階にキッチンを作る間取りのデメリット
一方、メリットがあればデメリットもあります。
まずは、1階に個々の居室などを設けることになるので、各部屋は暗くなります。
結局、どちらをとるか、ということになります。
自分の部屋では寝るだけなので、問題はないと考えて、2階の共有スペースの採光を優先して、間取りを決める人もいます。
他にも、1階の玄関にいちいち下りて、来客の対応などをしなければなりません。
寝る以外は、2階で生活するということになると、1階の防犯面の不安も出てきます。
玄関対応に関しては、カメラ付きインターホンなどで確認して、2階に居ながら開錠や施錠ができるように設定することも可能ですが、初期費用が掛かりますね。
また、買い物などの重い荷物を2階に持って上がるのも大変です。
ペットボトルやお米などの重量品があると、結構な重労働になります。
これを良い運動になると考えられれば良いのですが、しんどいと思う人もいます。
それから、夏場は2階のキッチンが暑くなるということもあります。
日光が入り、上に熱を遮る部屋がないので、自然と室内の温度は上がります。
これは逆に言うと、冬は暖かいということでもありますね。
このように、デメリットも大小いろいろとありますが、本当のデメリットは家を買ったときではなく、将来にあるのではないでしょうか。
2階にキッチンがあると老後の生活はどうなる
2階にキッチンがある間取りの最も大きなデメリットは、老後も日常的に階段を上り下りしなければならない、ということではないでしょうか。
外から家に帰ってきて、共有の生活スペースが2階にあるわけですから、必ず階段を上る必要があります。
買い物の荷物も、それだけでも重いのに、持って階段を上るとなると重労働です。
ゴミ出しもそうですね。
ゴミの袋を持って階段を下りなければ、ゴミ出しができません。
朝起きて着替えて2階に上がり、ゴミ出しのために階段を往復し、食事の後に階段を下りて買い物に出て、買い物袋を抱えて階段を上ります。
寝るときは、また階段を下りなければならないので、1日最低でも3往復しなければなりません。
つまり、日々の生活の中で、階段の上り下りを避けて通ることができないということです。
高齢になると足腰が弱るのは仕方がないことで、若い間は良い運動だと思っていたことでも、老後は大きな負担でしかありません。
では、どうすればよいのでしょうか。
将来はリフォームで間取りを変更する?
考えられる解決策としては、老後を見据えて、1階にキッチンなどの生活スペースを移すリフォーム計画を立てておくということです。
そのためには、リフォームをしやすい間取りにしておく必要があります。
例えば、1階の居室すべてを壁で区切るのではなく、可動式の間仕切りなどで区切り、フレキシブルな作りにしておくことです。
ほかにも、2階だけでなく1階にも水回りの配管を用意しておくなど、将来、1階で生活ができるように設計する必要があります。
または、将来、エレベーターを設置できるようにスペースを確保し、電気系統の配線を通しておくという対策もあります。
最もシンプルな方法は、最初からエレベーターを設置しておくことでしょうか。
しかし、世間にエレベーターがある家庭がいくつあるでしょう。
どの解決策にしても、多額の費用が掛かるのが難点と言えますね。
どれも不可能であれば、老後も足腰を鍛えて、がんばるしかありません。
2階にキッチンを作る間取りプランがベストかどうか
広い庭があって、隣家と離れていて1階の採光に問題がなければ、1階にキッチンを作っても何の問題もないでしょう。
ガーデニングや家庭菜園を楽しみ、手入れの行き届いた、眺めの良い庭を造ることもできます。
子育てのことを考えると、2階にキッチンなどの共有スペースを持ってくると、子供部屋は1階に作ることになります。
すると、年頃になると勝手に外出したり、知らない間に友達を連れてくるなどということが、あるかもしれません。
あるいは、2階に子供部屋のスペースをとったため、水回りが1階と2階に分かれてバラバラになってしまうこともあります。
そのため、家事動線が途切れて、効率よく家事ができないということになるかもしれません。
都市部などでは、狭い土地にいかにゆとりある生活スペースを確保するかということが大きな課題で、2階はおろか3階建て4階建ての家も、現在では当たり前になっています。
そのような中で、家族の共有スペースを快適にするために考えられたのが、キッチンを2階に作る間取りプランなのではないでしょうか。
結局、どの間取りにも一長一短があります。
その中で、どれを選ぶかということなのです。
家の購入というのは、どの家庭にとっても、人生の一大イベントです。
それだけに、きちんとメリットやデメリットを分かったうえで、間取りプランを選択するということが、大切ではないでしょうか。
納得して楽しい新生活を
家を建てると決まって、間取りをいろいろ考えているときは楽しいですよね。
特に主婦の方は、使いやすいキッチンにしたいとか、収納は見せるタイプにしたいとか、いろいろと憧れもあるでしょう。
2階に明るいキッチンを作ろうと決めたのなら、将来の対策なども一緒に考えて、末長く楽しく暮らせるよう、素敵な間取りを考えていただきたいと思います。