建蔽率の角地緩和における要件とは?東京都ではどうなる?

新しい家を建てるとき、建蔽率や容積率など、土地選びの段階から様々な法令に注意しなければなりません。

特に注意したいのは「建蔽率」ですが、その地域や土地の立地によっては「角地緩和」が適用される場合があります。

「角地緩和」という言葉自体、あまり聞く機会がありませんが、東京都を始めとする各自治体では、この緩和を建築基準法などで定めています。

この記事では、聞き慣れない建蔽率の角地緩和について、詳しくご説明していきます。

建蔽率に関わる角地緩和とは?まずは建蔽率について

不動産に深く携わる機会がない場合、建蔽率の「角地緩和」という言葉は聞き馴染みがないかもしれません。

そもそもの話、建蔽率やその目的について詳しく知らないという方もいることでしょう。

では、角地緩和についてご説明していく前に、まずは建蔽率についてご説明していきます。

建蔽率は、敷地面積に対する建築面積の割合を指し、全ての土地には都市計画や建築基準法によって建蔽率が定められています。

この建蔽率がなければ、購入した土地に最大限の建築面積を充てることができてしまい、その結果、住宅環境や防火上に深刻な問題が生じる可能性があります。

具体的に言うと、家と家の間隔が適正でない場合、風通しや日当たりの障害、そして火災の延焼拡大に繋がるリスクが高まります。

しかし、都市計画などによってその土地に応じた建蔽率を設けることで、そのようなリスクを排除することができます。

この建蔽率は、都市計画や用途地域によって変わってきますが、住宅用地の場合は30~60%になっています。

例えば、建蔽率が60%である場合の建築面積を計算するとき、「敷地面積×建ぺい率」の式で求めることができます。

敷地面積が200m²である場合、「200m²×60%=120m²」と求めることができ、建築面積は120m²となることが分かります。

東京都など、各区市町における詳しい建蔽率を知りたい場合は、国土交通省が設けているホームページから調べることが可能です。

建蔽率が緩和される角地緩和!東京都を始め「特定行政庁」に委ねられる

前述した通り、土地に関わる建蔽率は、都市計画や建築基準法に規定されています。

しかし、用途地域によっては建蔽率の上限が緩和される場合もあり、その一つとして「角地緩和」が挙げられます。

「角地緩和」とは、その土地が道の交差点に面した角地、またはそれに準ずる敷地である場合、建蔽率が10%の緩和を受けるというものです。

例えば、その土地の建蔽率が60%である場合、10%の緩和が上乗せされるので、建蔽率は70%になります。

ただし、角地であるからといって全ての角地が緩和の対象になるわけではなく、「特定行政庁」が指定する角地に限り、建蔽率の緩和を受けることができます。

つまり、特定行政庁が指定する要件を満たした角地にのみ、緩和が許されることになっているのです。

特定行政庁とは、建築主事を置く地方公共団体で、その街の建築の確認申請や完了検査などを行っています。

建築主事は、主に主要市区に配置されており、例えば東京都の場合は、特別区やその他の区市にそれぞれ置かれています。

その土地の特定行政庁がどこにあるにかは、各都道府県ごとにネットを通して調べることができるので、チェックしてみてください。

角地緩和の対象になりうる3つのポイント

建蔽率の角地緩和の要件は各自治体によって異なるため、地域によっては要件が緩い場合もあります。

そのため、角地緩和の詳しい要件については、各都道府県、市区町村の建築基準法施行細則で確認する必要がありますが、基本的には、角地緩和の対象になりうる3つのポイントがあります。

では、その3つのポイントについて見ていきましょう。

①街区の角にある土地

道の交差点に面した土地である場合、角地緩和の対象になることがあります。

②道路に挟まれた土地

土地の両側に道路が面しており、道路に挟まれた土地である場合、形的に角地ではありませんが、建築基準法によって角地扱いになることがあります。

③公園、河川などに接する土地

公園や河川などに接している道路とその土地が面している場合、建築基準法によって角地緩和の対象としてみなされることがあります。

以上のように、形的に角地ではなくとも、それに準じた土地である場合は角地緩和の対象になりうることがあります。

ただし、いずれにしても各特定行政庁の指定される角地や土地が対象となるため、それによっては上記の限りではありません。

では次に、各自治体がどのように角地緩和を定めているのか、一例として東京都足立区を見ていきましょう。

建蔽率に関わる角地緩和の詳しい要件とは?東京都足立区の場合

建蔽率の角地緩和について、まずは東京都足立区を例として見てみましょう。

足立区における建築基準法施行細則では、建蔽率の緩和について以下のように定めています。

まず、前提として、道路、もしくは公園、河川などに接している土地の辺が1/3以上であることが条件とされます。

それに加えて、以下の3つのいずれかに該当する場合、建蔽率の角地緩和が適用されます。

①2つの道路が120度未満の角度で交差する角地

②幅員がそれぞれ8m以上の道路に挟まれた土地で、道路間が35m以上離れていない

③前面道路以外に接面する道路は、「道路」だけに限らず、「公園、広場、河川」も含まれる

これはあくまでも東京都足立区の施行細則になるため、それぞれの地域で角地緩和の施行細則を確認する必要があります。

東京都以外の角地緩和の要件は?大阪府高槻市の場合

では続いて、東京都ではなく、大阪府高槻市の角地緩和について見てみましょう。

高槻市の建築基準法施行細則でも、まずは前提として、道路、もしくは公園、河川などに接している土地の辺が1/3以上であることが条件とされます。

それに加えて、以下のいずれかに該当する場合、建蔽率の角地緩和が適用されます。

①2つの道路が120度未満の角度で交差する角地

②それぞれの道路の幅員が6m以上で、その合計が15m以上

③それぞれの道路の幅員が4m以上で、敷地面積が200m²未満

④2つの道路に挟まれた土地の場合、道路間が25m以上離れていない

⑤前面道路以外に接面する道路は、「道路」だけに限らず、「公園、広場、河川」も含まれる

以上のように、前述した足立区の施行細則と比べると、要件に若干の違いがあることが分かりますね。

実際の施行細則では、一見理解しづらい書き方で記載されているため、その地域の建築指導課などで直接確認してみても良いでしょう。

角地緩和を受けられない地域も!地区計画と風致地区

これまでに、建蔽率の角地緩和について、東京都などの施行細則を例に挙げてご説明してきました。

しかし、土地の中には、角地緩和の対象になる土地でありながら、別の法規制によって緩和できない土地も存在します。

それに関わる規制の一つに、「地区計画による制限」が挙げられます。

地区計画とは、地区の住民と区市町村が連携しながら、地区の将来的な全体像を見据えた街づくりを推し進めていく方針です。

この地区計画の対象となる特定の地区においては、地区計画の制限によって、建蔽率が40%と定められており、角地緩和を受けることができません。

また、「風致地区」においても、同様に建蔽率に40%の制限が設けられています。

風致地区とは、都市計画において、水や緑などの自然環境を維持するために指定される地域を指します。

このような特別区域では、一般的な建蔽率よりも厳しい制限が課せられており、角地緩和の適用も難しいため、あらかじめ理解しておく必要があります。

購入を検討している角地があれば、建築基準法施行細則を踏まえ、これらの地区計画や都市計画の取り決めにも目を向けてみるのが良いでしょう。

それぞれの自治体で角地緩和の要件をチェック!

土地選びをする上では、建築面積に関わる建蔽率は決して無視できません。

その土地が角地である場合、角地緩和の対象になりうる場合がありますが、あくまでも「特定行政庁」が指定する角地に限ります。

特定行政庁は各都道府県、市町村に置かれているため、角地緩和の要件も異なります。

まずは、建築基準法施行細則を確認するか、それぞれの特定行政庁で確認することが大切です。