不動産を購入する時に何かと見かけるのが「建ぺい率」や「容積率」です。
これらは家を建てる上で重要ですが、理解できている人はそう多くはありません。
しかも建ぺい率や容積率をオーバーしてしまっている物件も、多数流通しています。
建ぺい率や容積率をオーバーしていると後にトラブルへと発展してしまいがちですので、しっかり確認しておきましょう。
なぜ建ぺい率や容積率がオーバーしてしまう?
建ぺい率や容積率をオーバーしてしまっている物件は、実はそう珍しくありません。
しかし、どうして建ぺい率や容積率がオーバーしてしまうのでしょうか?
日本には建築基準法という法律があり、基準を満たさない建築物は建築することができません。
建ぺい率や容積率は地域によって違いがありますが、都市計画法によって定められたものなのでオーバーするということは考えられないはずなのです。
ところが流通している物件を見ていると、建ぺい率や容積率が適合していないものを多数見かけます。
これには2つの理由が考えられます。
まず1つめは法律の改定によって、現状の基準に適合しなくなってしまった場合です。
これを「既存不適格物件」と言います。
建てられた当初は適法であったため、仕方がないと言わざるを得ません。
2つめは「違反物件」と言い、建築当初から違反していた場合です。
建築物の建築には建築確認という許可が必要なのですが、建築確認を取った後に設計を変えて建築するなどの悪質なものがこの違反物件と呼ばれるものです。
また、後から増改築した時に基準をオーバーしてしまった場合も、違反物件となります。
同じように建ぺい率や容積率をオーバーしていても、この両者の扱いは全く異なるものとなります。
建ぺい率や容積率がオーバーしているとどうなる?
建ぺい率や容積率がオーバーしている物件は現在も市場に出回っていますが、特に問題はないのでしょうか?
実は先程ご説明した「既存不適格物件」か「違反物件」かによって扱いは異なります。
既存不適格物件は建てられた当初は適法だったため、ある意味仕方がないとも言える物件です。
誰しも建築する時にその後改定があり、基準をオーバーしてしまうなんてことは想像もつかないでしょう。
だからこそ、既存不適格物件については「原則そのままの状態での存在」が認められています。
一方で違反物件については、最初から建ぺい率や容積率をオーバーしていることを知った上での建築となるため、悪質な場合には行政指導の対象となります。
もちろん、取り壊しや修復などが求められることもあります。
ただし違反物件について明確な罰則が定められていないため、自治体判断によりどのような行政指導が行われるかはっきりと言えないのが現状です。
建ぺい率や容積率がオーバーしている物件を見分ける方法は?
「既存不適格物件」も「違反物件」も建ぺい率や容積率などがオーバーし、建築基準法を満たしていないことに変わりはありません。
「既存不適格物件」も増改築や修繕時には建築基準法通りに適合させなければなりませんし、同規模の建て替えはできません。
このような建ぺい率や容積率をオーバーした物件を見分けるためには、どうすればいいのでしょうか?
建ぺい率や容積率は都市計画法によって定められていますから、簡単に調べることが可能です。
また、登記簿謄本は誰でも簡単に取れるので、建ぺい率や容積率を計算することはさほど難しくないでしょう。
しかしもっと簡単な方法があります。
それは仲介業者である不動産業者に聞くことです。
土地や建物を不動産業者の仲介によって購入する場合、売買契約締結前に不動産業者は土地や建物についての重要事項説明をする義務があります。
そして容積率や建ぺい率がオーバーしている既存不適格物件や違反物件は、その旨を重要事項説明書に記載し、説明しなければなりません。
ただし、売主と直接売買契約を結ぶ場合にはこの方法は使えませんので注意が必要です。
建ぺい率や容積率がオーバーしていると売却しづらい!?
建ぺい率や容積率がオーバーしている既存不適格物件や違反物件は、行政指導の対象となるだけではなく売却もしづらくなってしまいます。
なぜなら、建ぺい率や容積率がオーバーしてしまっている物件には銀行は融資をしないからです。
既存不適格物件、違反物件どちらであっても、この点は同じです。
つまり、どちらも建築基準法の基準を満たしておらず、担保価値がないとみなされてしまうのです。
住宅ローンが通らないとなると、現金で買うことしかできず、買い手が限られてきてしまうのは言うまでもありません。
ただし自己資金が十分にあり、住宅ローン融資が少額で済む、土地のみの評価額が借り入れ額より高いなどの場合には融資が受けられることも稀にあるようです。
また、建ぺい率や容積率がオーバーしている物件の売買では、重要事項説明書にその旨の記載がなされます。
文脈は様々ですが、「建ぺい率、容積率の超過により違反建築物として監督官庁より是正命令を受ける場合があります」というような内容が書かれます。
これを見た買主はどう感じるでしょうか?
やはり不安になってしまいますよね。
この点も売却しづらい理由となっているのは間違いないでしょう。
既存不適格物適法物件に戻すことは可能?
では、建ぺい率や容積率をオーバーしている既存不適格物件を適法に戻す方法はないのでしょうか?
いくつかの方法をご紹介します。
①土地の再測量
オーバー比率が2~5%程度であれば、土地の再測量をしてみると良いでしょう。
特に昔登記された土地は、測量技術の関係で正確ではないものもあります。
現在の測量技術で測量すれば、土地面積が増える可能性があります。
②建ぺい率や容積率に参入しなくていい部分を探す
登記簿上の床面積と建築基準法上の床面積では若干の誤差が発生します。
建築基準法では出窓や軒、庇、バルコニーなどは建ぺい率に算入しなくて良いことになっています。
同じようにピロティやバルコニー、廊下、ベランダ、玄関、駐車場などは容積率に算入する必要はありません。
このような部分が登記簿上の床面積として計算されていないか確認してみましょう。
③減築リフォーム、土地の合筆をする
①や②のどちらも当てはまらない場合には、減築リフォームをすることで合法の建築物へ戻すことが可能です。
また隣接した土地の一部を買い取り、合筆し土地の広さを広げることでオーバーした建ぺい率や容積率を適法に戻すことも可能です。
増改築の際は建ぺい率、容積率オーバーにご注意を!
購入した中古物件が「建ぺい率や容積率をオーバーしていないものの、ギリギリだった」という場合、購入後の増改築についても注意しなければなりません。
もちろん建ぺい率や容積率に算入しなくていい部分の増改築については、特に問題ありません。
しかし建ぺい率や容積率に算入する部分について、しっかり確認しないで増改築をしてしまうと結果的に建ぺい率や容積率をオーバーしてしまう可能性があります。
増改築により建ぺい率や容積率がオーバーしてしまった物件は、違反物件となり行政指導の対象です。
さらに売却もしづらくなってしまうため、所有し続けるか更地にして売却する、オーバー部分を壊して適正にし売却する、などの対象が必要となります。
いずれにしても金銭面はもちろん、時間や労力の面で大きな負担となることは間違いないでしょう。
建ぺい率、容積率オーバー物件を購入の際は慎重に
建ぺい率や容積率をオーバーしている物件は銀行の融資がつきにくく、買い手が見つかりにくいためなかなか売却ができません。
だからこそ市場へは通常の物件相場よりも安く出回るのですが、行政指導や処分の対象であるため注意が必要です。
また、増改築によって建ぺい率や容積率をオーバーしてしまうことも多いので、しっかりと確認するようにしましょう。