ご近所トラブルで意外と多いのが、駐車に関することです。
ある住宅メーカーの調査によると、騒音や挨拶などに次いで、車や駐車に関するトラブルは3位、21.5%にもなります。
特に私道での駐車に関してのトラブルは多く、話し合いで解決されずに、裁判にまで発展してしまうこともあります。
それでは、私道での駐車トラブルについて見ていきましょう。
私道の駐車トラブルはなぜ起きる?
私道の駐車トラブルは、なぜ多いのでしょうか。
駐車する側から見てみると、私有地なのだから駐車して当然と思い、迷惑を受けた方は通行妨害と思うからです。
特に共同で持っている私道ですと、トラブルは複雑になります。
感情的な問題に発展してしまうと収拾がつかなくなってしまうこともしばしばで、前述したように裁判にまで発展してしまうこともあるのです。
また、道路交通法による駐車違反の取り締まりと、私道の権利侵害の訴えは、適用される法律が異なるので違った角度から検証する必要があります。
共同私道で勘違いされやすいのが、共有スペースを駐車場だと思い込んでしまうケースです。
共有スペースが空いていて、自分も何分の1かの権利があるので、自宅前なら駐車しても良いと勘違いしてしまう方が多いのです。
駐車するのであれば、自分の敷地内にするべきですし、駐車スペースが足りないのならば、他に借りる必要があります。
私道の駐車トラブル!私道の奥に家がある場合
土地の形態によっては私道を通って自宅に入る、というお宅もあるでしょう。
その私道に土地の所有者が駐車している場合は、なんとも悩ましいですね。
私道なので、トラブルに発展してしまうのではないかと遠慮してしまう方もいるでしょう。
人や自転車の場合は、駐車してあってもなんとか通れるかもしれませんが、車では通れません。
この場合、土地の所有者は自分の土地なので駐車しても構わないと思いがちですが、それは違います。
私道であっても、人や車が自由に通行している場合は道路です。
ましてや、奥に住宅があり、その道を通らなければ生活ができない、というのであればなおさらです。
建築基準法では、幅が4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければ、原則として建物が建てられません。
このことから見ても、奥に住宅がある場合は、私道であっても道路なのです。
道路は人や車が通行する場所で、車庫や駐車場ではありません。
私道の駐車トラブル!道路交通法から見てみる
では、道路交通法は、私道にも適用されるのでしょうか?
道路交通法第2条(定義)1では、道路は「一般交通の用に供するその他の場所」としています。
つまり、私道だとしても「一般交通の用に供するその他の場所」と認められれば、道路交通法が適用されるということです。
その地域が駐車違反区域だとすれば、駐車違反として摘発できることになります。
しかし、駐車違反区域でないとなると、道路交通法の適用は難しくなります。
また、公道からの出入りを遮断している私道ですと、先程の「一般の交通用に供するその他の場所」には当てはまらないので、民地内通路と見なされることがあります。
しかし、ひとくちに私道といっても、さまざまなケースが考えられるので、安易に判断することはできません。
したがって、私道に関する統一した見解を出すには時間が掛かります。
また、間違った判断をし、処分すれば大問題になり、トラブルが大きくなってしまいます。
このように、私道に関する判断は慎重さが求められるので、積極的な取締りは難しいのです。
私道の駐車トラブル!車庫法から見てみる
次に私道の駐車トラブルについて、道路交通法の車庫法から見てみましょう。
まず、車を所有するときには、保管場所を確保しておかなければなりません。
これは、「車庫証明」と呼ばれているものです。
地域や車の種類によっても条件が変わりますが、普通車は車庫証明がないと車の登録ができません。
つまり、車を買うこと自体ができないのです。
ちなみに軽自動車の場合は、購入後に保管場所を申請します。
また、保管場所にできるのは自宅から2kmまでと決められています。
このように、ほとんどの場合、車庫や駐車場などの決まった保管場所がないと車を持つことはできません。
そして、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」では、保管場所としての道路の使用禁止を次のように定めています。
・道路を自動車の保管場所として使用すること
・道路上の同じ場所に、12時間以上駐車するような行為
・自動車が道路上の馴染場所に、夜間(日没時から日出時まで)8時間以上駐車するような行為
このような違反に対しては、罰則の対象となります。
つまり、定められた保管場所以外に駐車することは違反になるのです。
共同私道の駐車トラブルはより難しい
これまで、私道についての道路交通法をご紹介してきました。
通常の私道でも、駐車違反などの積極的な取り締まりはかなり厳しいようです。
それでは、共同私道の場合はどうでしょうか?
共同私道は、共有者、権利者が多いことから、さらに問題は複雑になり、トラブルに発展しやすくなります。
道路交通法の適用の前に、その私道の共有者、権利者の同意がなければ問題にすることは難しいでしょう。
例え、皆の同意が得られ、違反行為の抗議をしたとしても、当事者が従わなければ問題は解決しません。
また、裁判で私道に駐車することを禁止する判決が出ても、当事者が従わなければそれまでです。
最終的には、警察に駐車違反として取り締まってもらうしかありません。
こういった駐車トラブルは、感情的な部分でも問題が大きくなりがちです。
生活していく上で、ご近所とのトラブルはどんなことであっても避けたいものです。
私道所有者の権利とは?
これまで、私道の駐車トラブルについてご紹介してきました。
最初に、「道路交通法による駐車違反の取り締まりと、私道の権利侵害の訴えは、適用される法律が違う」とお話ししました。
それでは、最後に私道の所有者の権利侵害について見ていきましょう。
まず、私道は土地であり、私有地ですから、所有者にはその土地の私道を廃止する自由があります。
また、所有する私道部分の土地の権利を売却、賃貸する権利もありますし、私道の利用に関するさまざまな事柄に承諾をする権利もあります。
ただし、「建築基準法で認める道路の場合は、この限りではない」のです。
建築基準法上の道路とは、位置指定道路や開発道路などの道路で、それを廃止することは建築基準法第45条によって、原則的に禁じられています。
このような私道は、公共性が認められているので、「所有者ではない第三者の権利」として、人の通行の自由、またその権利が認められる場合があります。
そのため、道路として公共性があることが認められれば、その部分の固定資産税が免除されることもあります。
このように、私道が公共性を持つと、自分のものであっても自分のものではなくなってしまうのです。
私道の駐車トラブルにはコミュニケーションが大切!
ご近所トラブルの最たるものである、駐車について見てきました。
迷惑行為は常に感情がともなうため、問題が大きくなってしまうケースが多くあります。
毎日の生活で関わっていかなければならないご近所さんとは、気分良く付き合いたいものです。
権利を主張し合う前に、話し合いで解決するよう心掛けていきましょう。