新居を構え、新たな生活をスタートする中で、隣人関係には特に配慮したいものです。
しかし、新築後には土地の境界をめぐる境界塀トラブルが起こるケースも少なくなく、出鼻から隣人関係が悪化してしまうこともあります。
そのため、新築の外構工事をする際は、所有地の境界を踏まえた上で、塀の設置を行う必要があります。
この記事では、境界塀を設置する際の注意点や予防策について、詳しくお話ししていきます。
よくある境界トラブルとは?境界上に塀を設置する「共有塀」
近年では、境界塀の設置に際する基本的なルールを知らなかったために、隣人と境界トラブルに発展するケースが増えており、長期的な隣人関係の不仲にまで及ぶケースもあります。
せっかく念願の新築が叶っても、塀設置の際の注意を怠ったために、隣人とトラブルになってしまえば新生活も台無しです。
では、実際に境界塀を設置する場合、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。
そこで早速、塀を設置する際に押さえておきたいポイントについて、2つのケースに分けてご説明していきましょう。
まず一つ目は、「境界上に塀を設置する場合」です。
土地と土地の境界上に設置される塀は、隣地と共有される「共有塀(共有財産)」となるため、境界トラブルが起こりやすい塀とも言えます。
民法上、その設置費用を隣地所有者と折半することができますが、前提として、隣地所有者同士の合意が求められます。
つまり、話し合うこともなく、一方の独断によって設置できるというわけでありません。
仮に、境界線上に独断で塀を設置した場合、相手方に費用の負担を請求することはできず、場合によっては敷地内への越境として訴えられる場合もありますので注意が必要です。
また、塀の設置費用の負担に関しては、お互いの合意内容次第では、必ずしも折半にする必要はありません。
いずれにしても、境界線上の塀は共有塀になるため、設置の際はお互いによく相談することが求められます。
境界トラブルのリスクは少ない!所有地内への塀設置
二つ目に、「所有地内に塀を設置する場合」について見ていきましょう。
自分の敷地内(境界の内側)に塀を設置するので、その権利と費用負担は土地所有者にあります。
つまり、隣地所有者と相談する必要もなく、自分の好きなように自由な設置ができるメリットがあります。
そのため、隣人との境界トラブルに発展する可能性は小さいと言えますが、注意しておきたい点もあります。
それは、あまりにも高さのある塀を設置することです。
境界線上に設置する共有塀に関しては、2m以下というルールが存在する一方で、自分の所有地に設置する場合は、建築基準法に則っている限り、2mという制限はありません。
しかし、だからと言って、目隠しや防犯対策として2m以上の高い塀を設置してしまえば、隣家の日当たり・通風を大きく阻害する可能性があり、訴えられる場合もあります。
また、例えばブロック塀であれば倒壊するリスクもあり、実際に、隣地側に崩れて損害賠償を請求されるケースも少なくありません。
ただし、塀の高さをしっかり考慮することができれば、やはり隣人との境界トラブルに発展することは低いと言えます。
あくまでも所有地内に!「越境」は境界トラブルに多い
これまでのお話で、共有塀よりも所有地内に塀を設置するほうがリスクが小さいことが分かりました。
しかし、所有地内に塀を設置する場合、それはあくまでも「所有地内」であることが重要になります。
と言うのも、境界トラブルの事例として、隣地への塀のはみだし、つまり「隣地への越境」が多く挙げられるからです。
もし、所有地内を超えて塀を設置してしまった場合、隣地所有者からは「土地所有権侵害の回復のための移設・取り壊し」が求められ、塀所有者には速やかな対応が求められます。
もちろん、費用は全て塀所有者の負担になり、取り壊し後は新たな塀を建て直さなければなりません。
ただし、ほんの数センチ越境しているだけであれば、法的な請求は難しくなるため、看過される可能性が高いでしょう。
いずれにしても、所有地内に塀を設置するのであれば、隣地との境界をしっかり把握した上で進めていくことが必要です。
境界の判断は何が目印になる?所有地内に塀を設置する場合
では、所有地内に塀を設置する上で、隣地との境界を確認するには、何を判断材料にすれば良いのでしょうか。
そもそも、土地と土地の境界に直接線が引かれているわけでもないため、境界の判断はできませんよね。
そこで、判断の目印となるのが「境界標」です。
「境界標」とは、土地の境界が確定している場合に設置される杭などの標で、測量士による土地確定後に、土地家屋調査士や隣地所有者などの立会いによって設置が行われます。
境界標は敷地の角に設置されており、その点を結ぶ線が敷地の境界線になるので、まずは境界標が設置されているかチェックしておきましょう。
境界標の種類は様々で、コンクリート杭や石杭、金属標、プラスチック杭などがあります。
もし、この境界標が敷地の全ての角に設置されていない、もしくは確認できない場合、そのまま塀を設置してしまうと境界トラブルにつながる可能性があります。
そのため、まずは所有地の境界がどうなっているのか、「境界確定図(地積測量図)」の有無を確認することが求められます。
境界標は「境界確定図」をもとに復元しよう
「境界確定図(地積測量図)」とは、所有地の境界が書面化されたもので、これが確認できれば境界確定が済んでいるということになります。
境界標が敷地の角に揃っていない場合、土地家屋調査士に依頼することで、この境界確定図をもとに境界標の復元を行うことができます。
一方、もし境界確定図がない場合は、所有地の境界を明確にする必要がありますが、土地の売買契約においては境界確定が必須事項となっているため、境界確定がされていないことはまずありません。
なお、境界確定図は法務局で取得することができます。
厄介な境界トラブルに発展させないためにも、念入りな境界標・境界確定の確認を行い、塀を設置するようにしましょう。
境界トラブルで困ったら!境界問題相談センターを頼ろう
これまでに、境界塀トラブルを予防するためのポイントや注意点についてお話してきました。
お話してきた境界塀の問題は決して他人事ではなく、被害者・加害者のいずれの立場にもなる可能性があります。
そのため、境界塀トラブルが起こった場合、まずはその塀は誰の所有物なのか、境界はどこなのか、その境界は正しいのか、などについて追及していくことが求められます。
しかし、境界トラブルは泥沼化しやすいため、当事者同士で話し合っても解決が見込めない場合もあります。
その場合、裁判によって解決することもできますが、全国に拠点を置く「境界問題相談センター」に頼ることをおすすめします。
「境界問題相談センター」では、境界の専門家である「土地家屋調査士」と「弁護士」からの協力により、境界トラブルの穏やかな解決が望めます。
裁判による解決を避けたい方は、こういった比較的手軽な相談機関を頼ることで早急な解決が期待できるでしょう。
境界トラブルを避けるために
境界塀の設置は、確定されている境界をもとに行う必要がありますが、まずは共有塀なのか、個人で所有する塀なのかを決める必要があります。
共有塀を設置する場合は、独断で進めてしまうのではなく、必ず隣接地所有者との話し合いと合意によって行ってください。
また、将来的に共有するのを避けたい方は、所有地内に塀を設置することで、トラブルのリスクを大きく減らすことができるでしょう。