土地に対してどの程度の規模の建築物が建てられるかを表す容積率ですが、都市計画で定められた容積率が必ず適用されるわけではありません。
容積率には敷地が接する道路や前面道路が関係する場合があるため、注意が必要となるのです。
また、建ぺい率の角地緩和のような措置があるかどうかも、容積率を求める時には必要となります。
容積率の求め方について説明していきますので、参考にしてください。
容積率は都市計画で定められている!
容積率とは敷地面積に対する建築物の容積の割合を指すもので、建ぺい率と同様に建築物を建築する際には非常に重要となる数値です。
自己所有の土地であっても、建築物を自由に建築することはできません。
誰もが好き勝手に建築してしまうと、無秩序で整然としない街が出来てしまうからです。
そうならないために都市計画区域を定め、計画的な街づくりが行われています。
容積率を決定することで、密集化を制限する役割があります。
このような役割のある容積率は、都市計画で限度が定められています。
用途地域によって定められる容積率が建築基準法で50~1300%に定められていますが、低層住居専用地域ほど小さく、中高層住居地域や商業地域などでは大きく指定されているのが一般的です。
中には特例容積率適用地区という制度があり、より高い容積率が適用されることもあるので確認してみましょう。
都市計画図については多くの自治体がインターネット上で公開しています。
しかし、容積率は都市計画で定められた数値だけでなく、前面道路の幅員が大きく関係するので注意が必要です。
また、角地や両面道路に接する敷地の場合には、計算の際に注意しましょう。
前面道路の幅員によって容積率が制限を受ける!?
都市計画で定められた容積率を「指定容積率」と呼びます。
この指定容積率がそのまま適用されるのは、前面道路が12m以上の場合のみとなります。
前面道路が12m未満の場合は、前面道路から求めた容積率「基準容積率」と「指定容積率」とを比較し、いずれか小さい方を適用することになっています。
このように前面道路の幅員によって容積率が制限を受けるのは、防火面などを考慮するためです。
基準容積率は前面道路の幅員に係数を乗じて計算します。
係数は原則的に住居系の用途地域で0.4、その他の地域(商業地域や工業地域など)では0.6と決められています。
例えば敷地の前面道路が6mの住居系の用途地域で指定容積率が300%の場合、
6(m)×0.4×100=240%
となり基準容積率が指定容積率より小さくなるため、240%が容積率の限度となります。
角地の場合でも同じように計算していきます。
容積率には角地緩和はない!
敷地が角地に存在する場合、容積率の緩和措置が受けられると勘違いしていらっしゃる方が多いのですが、残念ながら容積率に角地緩和の措置はありません。
角地である敷地で緩和されるのは容積率ではなく建ぺい率です。
しかし、容積率に緩和措置がないかというとそういうわけでもありません。
条件を満たせば容積率に算入しなくていい部分があります。
例えば地階部分や自動車車庫、小屋裏、天井裏などです。
地階であれば住宅の用途に供する部分については床面積の3分の1を限度に、自動車車庫は床面積の5分の1を限度に容積率に算入する必要はありません。
小屋裏や天井裏に関しても条件を満たせば不算入とできるので、ロフトなども容積率に含める必要がなくなり、その分広く建築することが可能となります。
また、角地のように前面道路が多数ある場合には、前面道路の幅員を調べてみる必要があります。
市が管轄している道路は市の道路課、県が管轄する道路は土木事務所や土木課で調べることができます。
角地の場合の容積率の求め方は?
容積率の角地緩和はないのですが、では角地の場合の容積率は何に気をつけなければならないのでしょうか?
角地の場合、前面道路が最低で2つ以上存在します。
その場合、前面道路の幅員から求められる容積率は敷地全体が接する道路のうちもっとも広い道路の幅員を使って計算することができます。
例えば、4m道路と8m道路に接する角地で住居系の用途地域、指定容積率が300%の場合、4mではなく8mをもとに計算するので
8(m)×0.4×100=320%
となり、指定容積率の方が小さいので、容積率の限度は300%となります。
さらに角地だけでなく、敷地が2以上の地域にまたがることにより指定容積率が異なる場合は注意が必要です。
この場合敷地面積を按分して適用する加重平均となります。
そのため計算がさらに複雑になるので、気をつけてください。
2以上の地域にまたがる角地の場合でも、敷地全体が接する道路のうちもっとも広い道路の幅員を用いることに変わりはありません。
前面道路の幅員や他の条件を満たせば容積率が緩和される場合がある!?
建ぺい率でいう角地緩和のようなものではありませんが、容積率が緩和される土地があります。
基本的に容積率は指定容積率と基準容積率のうち、どちらか小さいほうを適用するのが一般的です。
前面道路の幅員が狭ければ、そのぶん制限されて容積率が小さくなる仕組みです。
また、ある条件を満たせば、容積率が緩和されることがあります。
これは敷地の前面道路が6~12m未満で、かつ敷地の位置から70m以内に幅員15m以上の特定道路と接している場合です。
具体的な計算式は
前面道路の幅員(m)+前面道路の幅員に加える数値(m)×係数×100
となり、係数は住居系なら0.4、それ以外は0.6です。
前面道路の幅員に加える数値は状況によって加減します。
計算方法は少々複雑となりますが、前面道路が上述の条件を満たし、すぐ近くに大きい道路があれば容積率が緩和されるかもしれないと覚えておくといいでしょう。
前面道路や角地以外にも容積率が制限される場合とは?
容積率は都市計画によって定められた上限だけではなく、前面道路の幅員によって制限される場合があります。
さらに建ぺい率の角地緩和のように数値が加算される措置はありません。
床面積に算入しない部分が存在するのみです。
唯一、特定道路に接する場合であれば容積率が緩和されることがありますが、その場合にも前面道路が6m未満の場合には適用されません。
そして前面道路の幅員によって容積率が制限される他に、容積率が制限されてしまう場合があります。
それは前面道路の幅員が4m未満の場合です。
現在の建築基準法では幅員が4m以上の道路に接していなければ、建築物を建築することができません。
しかし、現在の建築基準法が施行される前から存在する4m未満の道路は2項道路と呼ばれ、再建築する際には道路の中心線から2m後退する必要があります。
これを「セットバック」と呼びます。
セットバック部分に関しては敷地面積から除外しなければならないため、その分敷地面積が狭くなり、結果的に容積率が小さくなることがあるので注意しましょう。
セットバック部分を敷地面積に含めない代わりに、前面道路の幅員を用いた容積率を求める場合4mの道路とみなして計算することができます。
容積率は前面道路の幅員が重要!
容積率には建ぺい率のような角地緩和の措置はありませんが、不算入部分があります。
また、制限を受けることのない建ぺい率とは違い、前面道路の幅員による制限を受けることがあります。
容積率を計算する際に前面道路の幅員が重要となってきますので、一度幅員を調べておくことをおすすめします。
前面道路が狭くても特定道路と接している場合には緩和されることもありますので、建築指導課などで相談してみるとよいでしょう。