「畑を相続したが農作業をする気がない」「高齢なので農業をやめたい」など、持て余している土地を駐車場にする場合、何か手続きは必要なのでしょうか?
「自分の土地なので何に使おうが自由」「宅地にして家を建てるわけではないので、特に手続きは必要ない」と思うかもしれません。
しかし、畑以外に使う場合には、地目の変更や農地転用など、手続きが必要です。
それでは、その地目の変更についてご紹介しましょう。
「畑」を「駐車場」にするには?「地目」について
まず、最初に「地目(ちもく)」についてご説明しましょう。
地目とは、「土地の種類」のことです。
不動産登記法で定められている地目は、「田」「畑」「宅地」などをはじめとして、20種類ほどあります。
どのようにして地目が決められるのかというと、その土地の現在の状況と、主な目的を考慮して判断されます。
他にも「学校用地」「鉄道用地」「墓地」「公衆用道路」などに分けられていて、そのどれにも当てはまらない土地の種類を「雑種地(ざっしゅち)」と言います。
「駐車場」という地目はないので、「駐車場=雑種地」になります。
したがって、畑を駐車場にするには、地目変更が必要です。
地目を変更をする場合には、土地の現在の状況で判断し、登記をします。
例えば、登記の地目が田で、その土地が売られ、現在家が建っていれば、地目を宅地に変更し、登記しなければなりません。
地目を決めることを「地目認定」と言いますが、地目認定をする際は、土地全体を見て判断します。
ひとつの土地がいくつかの種類に分かれている場合は、土地の種類ごとに分筆登記を行い、その後、地目を変更します。
また、一部地目変更・分筆登記という方法をとれば、一度に分筆登記と地目変更登記が行えます。
「畑」の地目変更!その前に農地転用手続きが必要
前述したように、畑を駐車場にするには、地目変更が必要です。
そして、地目変更をするには、「その土地の現在の状況と主な目的で判断する」とお話ししました。
しかし、農地である畑を更地にして、現在の状況が駐車場だからと言って、すぐに雑種地に地目変更することはできません。
農地である畑は、地目変更登記申請をする前に農地転用の手続きが必要なのです。
農地転用後、地目が畑の土地を雑種地=駐車場に地目変更することになります。
このように、農地の地目変更は、他の土地と比べて少し面倒ですが、それは農地法という法律があるからです。
基本的に田や畑などの農地は、農地以外に使うことはできません。
もし、農地以外に使いたい場合は、農地転用の申請をして、農地転用を許可してもらう必要があります。
また、市街化区域の農地転用は比較的簡単にできますが、市街化調整区域やそれ以外の区域にある農地は、転用するのに県の許可が必要となり、とても手続きが難しくなります。
しかし、土地の現在の状況が農地として使われなくなってから、数年経っているような場合もあります。
そのような土地に関しては、一定の条件をクリアすれば、農業委員会から非農地証明書を発行してもらい、地目変更することも可能です。
非農地と証明されれば、手続きはとても簡単になります。
その土地の地目はなに?「現況地目」とは?
畑などの農地を駐車場にするために地目変更するには、まず農地法の手続きをし、「非農地証明」や「農地転用」の許可を受け、地目変更登記申請を行うことになります。
また、登記の地目が田や畑になっている場合だけでなく、現在の状況が農地と認定されている時には注意が必要です。
それは、登記上の「登記地目」と、現在の状況である「現況地目」は必ずしも同じとは限らないからです。
【登記地目】
法務局に登記されている地目のことで、登記事項証明書に記載されている土地の種類のことです。
公簿地目(こうぼちもく)と呼ばれることもあります。
【現況地目】
その土地の現在の状況のことで、固定資産税や相続税は、現況地目に基づいて計算されます。
課税地目(かぜいちもく)と呼ばれることもあります。
もし「現況地目」が農地と判断されていれば、登記の地目が他の地目になっていても、農地法が関わってきます。
固定資産税納税通知書などで、その土地の「登記地目」と「現況地目」を確認しておきましょう。
「畑」から農地転用で「駐車場」にするときの注意点
畑などの農地から駐車場へ農地転用するときの注意点を挙げてみましょう。
駐車場として利用する場合には、家族用の駐車場、近隣の人に向けた貸し駐車場、会社などの従業員用駐車場、などにするのが一般的でしょう。
家族用の駐車場として利用する場合には、駐車台数が限られ、一般的に3~5台くらいになります。
あまり広い土地を家族用として申請しても、「こんなに広い駐車場は必要ないでしょう」と言われてしまう可能性があります。
また、駐車場にする土地の周りに住宅地が広がっている地域は、近隣の人に向けた貸し駐車場という場合もあります。
この場合、近隣の人たちの「駐車場設置要望書」が必要な市町村が多いようです。
しかし、要望書と言っても、それほど難しいものではなく、「駐車場設置を希望する」という文面に、もし駐車場ができたら利用したいという人の署名を集めるだけです。
転用面積の7~8割くらいを使用するだけの台数を集め、あとは新規の人のためとしておけば良いでしょう。
駐車場の添付書類に配置図が必要ですが、公図を拡大コピーし、駐車場枠を書き込む程度の図面で大丈夫です。
転用許可が取れたら、法務局で雑種地に地目変更登記をして、自分で駐車場経営をしても良いですし、不動産業者へ貸し出しても良いでしょう。
「畑」から「駐車場」へ!地目変更登記手続きのための必要書類①
では、農地転用を完了したとして、畑を駐車場にするために地目変更登記の手続きをしていきましょう。
地目変更の登記申請は、その土地のある法務局で行います。
申請手続き先の法務局に対して、地目変更の申請書類を提出するのです。
もし、自分で行うのが難しければ、土地家屋調査士などに依頼すると良いでしょう。
そのときに必要な書類は、基本的には次のふたつです。
・地目変更の登記申請書(法務局で入手)
・土地の案内図(住宅地図のコピーなど)
まずは法務局に出向き、「登記事項証明書」あるいは「登記事項要約書」を手に入れ、「登記地目」と「現況地目」が一致しているかどうか確認します。
違っている場合には、一致させる手続きをしてください。
このとき、地積測量図(土地の測量結果を明らかにする法的な図面)があれば、入手しておくと良いでしょう。
「畑」から「駐車場」へ!地目変更登記手続きのための必要書類②
地目変更登記の手続きには状況によって、前項でご紹介したふたつ以外にも必要な書類がでてきます。
次のようなケースの場合には、それに応じた書類を用意しましょう。
1.土地の所有者が亡くなっている
・土地所有者が亡くなっていることがわかる戸籍謄本、または除籍謄本
・その土地を相続する人の戸籍謄本と住民票
2.土地所有者の登記住所と現在の住所が異なる
・土地所有者の住民票、または戸籍の附票
3.農地を農地以外の地目に変更
・非農地証明、または農地転用書類
4.土地家屋調査士などが代理人として申請
・土地所有者から代理人への委任状
以上のうち、状況が重なる場合には、その状況に応じた書類が必要となります。
例えば、今回のように畑を駐車場に変更し、申請を土地家屋調査士に依頼した場合は、3の「非農地証明、または農地転用書類」と、4の「土地所有者から代理人への委任状」がプラスされます。
必要書類が揃ったら法務局へ申請します。
書類に不備や間違いなどがなければ、法務局に申請書類を提出してから、10日前後で登記が完了となります。
登記完了になれば、申請した本人が登記完了書を法務局の窓口に取りに行って、地目変更の手続きは終了です。
「畑」を「駐車場」にする場合には農地転用が必要
畑は農地なので、駐車場にして利用する場合には、まず、農地転用をする必要があります。
農地は農地法に基づいているので、通常の土地よりも手間がかかります。
しかし、きちんとした手続きを行うことで、安心して駐車場として利用できます。
手間を惜しんであとで面倒なことにならないよう、注意してください。