土砂などの崩れを防ぐ目的で設置される擁壁。
擁壁の施工・補修費用の相場はどれぐらいなのでしょうか。
また、擁壁を造る際は工作物確認申請が必要となりますが、高さが2mを超えない擁壁に関しては申請の必要がありません。
今回は、擁壁施工・補修の費用や、行政機関への申請などについてお話ししていきます。
さらに、擁壁工事会社についても言及していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
擁壁の基本知識
擁壁の施工・補修費用をお話しする前に、擁壁の基本知識についてお話ししておきます。
擁壁は隣地や道路と大きな高低差がある際に、土砂などが崩れるのを防ぐ目的で設置します。
家などの建築物のまわりに建てられている構造物が擁壁です。
擁壁は、主にコンクリートやブロック、石などを積んで造られています。
擁壁をどのような構造にするかは、施工する場所やもろもろの条件などによって異なります。
また、擁壁は擁壁の高さによって構造や傾斜に関することが決められており、2mを超える高さの擁壁を設置するとなると、建築基準法による「工作物確認申請」の手続きが必要となります。
(この件に関しては、別途後述いたします。)
擁壁はずっとそのまま変化がないというわけでもなく、時間とともにクラック(ひび割れ)が入るなどして劣化してきます。
その場合は、補修する必要が出てきます。
それでは、擁壁の施工・補修の費用はどれぐらいなのかみていきましょう。
擁壁の施工費用~高さ2mの場合の例~
擁壁の施工・補修の費用は、その方法や使用する資材でも異なります。
また、補修する際は、どの程度補修するかや補修する内容でも費用は異なります。
あまりに劣化が激しい場合は現在ある擁壁を取り壊し、一から新しく擁壁を造るというケースもあります。
そのため、ここで提示する金額はあくまでも参考としてください。
この項では高さ2m、長さを10mとした場合の擁壁施工費用を記載します。
・L型RC擁壁 約230万円
・石積擁壁 約210万円
L型RC擁壁は鉄筋コンクリート、石積擁壁は石のブロックを積み上げて建てるものです。
単純に金額だけをみると石積擁壁の方が費用を抑えることができます。
しかし、L型RC擁壁はほぼ垂直に施工されるのですが、石積擁壁は斜めに施工されるという違いがあります。
斜めに施工するとなると、その分建物を建てられる土地が少なくなってしまうということなのです。
つまり、その土地の坪単価が高いのならば、斜めに施工して土地が狭くなってしまう石積擁壁よりL型RC擁壁の方が結果的に費用が安くなるということになります。
擁壁工事は費用がかかる!補助金はある?
基礎などがしっかりと造られていないことや老朽化していることが原因で、大きな地震があった際に倒壊してしまう恐れのある擁壁があります。
過去には大地震の影響によりブロック塀が倒壊し、登校中の児童が巻き込まれて亡くなったという痛ましい事故がありました。
この一件だけではなく、擁壁が倒壊してさまざまなな被害を生んでしまったという経緯があります。
今後このようなことがないようにと、事故を未然に防ぐ目的で各自治体が補修費用を負担してくれるという制度があるのです。
擁壁の施工・補修、さらには撤去にしても、費用が大きくかかってしまうことが多いです。
そのため、「危険だと分かってはいても費用がかかるので撤去もできない」というケースを少しでも減らそうという取り組みなのです。
ただし、補助金対象が「擁壁の高さがが2m以上、住宅等の建築物が存在している」などの条件がある場合があります。
どのような擁壁が対象になるかや補助金の金額などは各自治体によって異なりますので、擁壁の工事を検討される際は、事前にご自分のお住まいの自治体の補助金制度について調べておきましょう。
高さ2mを超える擁壁は申請が必要!
先述しましたように、高さが2mを超える擁壁は建築基準法により「工作物確認申請」が必要となります。
工作物確認申請とは、当該擁壁の図面や関係書類などを行政機関に提出することをいいます。
行政機関では、当該擁壁の構造や強度などが決められた値を満たしているかチェックするという流れになります。
擁壁の高さが2mに満たない場合や、2mちょうどの場合は原則として確認申請の必要はないことになっています。
確認申請の必要がないので、費用も安く済むことになります。
しかし、確認申請の必要がないからと言って、どんな構造のものでも造っていいというわけではもちろんありません。
構造計算もせずにいい加減に擁壁を造ってしまうと、大きな地震が起きたときに倒壊して、他人の命を脅かしてしまうことにもなりかねません。
擁壁の高さが2mに満たないとしても、擁壁の構造計算をしっかりしてから建てることが重要なのです。
この高さが2mに満たない擁壁に関してはトラブルが多いとも言われています。
次項でお話ししていきましょう。
2m以下の擁壁は要注意!
前項でご説明しましたように、高さが2mを超えない擁壁は工作物確認申請が必要ありません。
そのため、擁壁を造る業者がそこを都合よく解釈して、構造計算もせずに擁壁を建ててしまうことがあるのです。
現代における「新築の住宅」は、約50年にわたる耐久性があると言われています。
しかし、その住宅の大切な土台となる土地に造られた擁壁が、10年や20年で倒壊してしまったらどうでしょう。
住宅自体は大丈夫なのに、擁壁が崩れることで住宅は影響を大きく受けることになりますよね。
確認申請の必要がないからと構造計算もしていない擁壁は大変危険です。
構造計算をせずに造ることで費用を安く抑えることができるかもしれませんが、人の命を危険にさらしてしまうことにもなりかねないのです。
もしも、これから土地の購入を検討されているような段階であれば、擁壁が2mに満たなそうである場合は十分注意するようにしてくださいね。
「費用が安く済む」が謳い文句!?危険な業者を見極める方法
2m以下の擁壁を造る場合は確認申請の必要がなく、業者によってはその点を逆手にとって不良工事を行う場合があります。
しかし、そもそもどのような工事が「不良工事」になるのかということ自体、私たちには見極めが難しいものですよね。
ですからここで、危険な業者を見極める方法についてお話ししておきます。
まず、擁壁工事の契約を業者と結ぶ前には以下の点について確認してください。
・工事契約書の有無
・擁壁の基礎の大きさや厚み、鉄筋の量が分かる構造図の有無
・擁壁の構造計算書の有無
・工事場所や範囲など工事全体の計画が分かる工事図面の有無
・工事完了後の写真やコンクリート強度の証明が出してもらえるか
・工事完了後の保証について契約書に記載があるか
これらの点について確認していただき、大丈夫ということであれば契約にすすむようにしましょう。
上記の点について確認できない業者の場合、「でも、費用が安く済みますから」などと言ってくることもあるでしょう。
しかし、最初に支払う費用を抑えられたとしても、擁壁をいい加減に造られることで結局のちのちに大きな費用がかかってしまうなんてことにもなりかねません。
擁壁工事を依頼する際にはこれらの点について十分注意するようにしましょう。
住宅の土台となる擁壁工事は重要!
擁壁は土砂崩れなどを防ぐ目的のものですから、その土地にとってとても重要なものです。
確認申請が必要のない2m以下の擁壁でも、構造計算は必須です。
工事業者によっては、費用を抑えるために構造計算せずにいい加減に擁壁を造ってしまう場合があります。
そのようなことがないように、工事契約を結ぶ前は工事契約書があるかなど、事前によく確認してから発注するようにしてくださいね。