新築したら、隣のお宅との境界に塀を設置して敷地を明確に分けたいですよね。
できれば視線を遮ることのできる、ある程度高さのある塀が望ましいでしょう。
すでに隣家に塀が設置されていれば問題ありませんが、ない場合は新たに作らなければなりません。
その場合の費用や、塀の設置する位置はどのようにして決めたら良いのでしょうか。
以下でくわしくお話ししていきましょう。
土地と土地を分ける「境界」とは?
自身の土地と隣の土地を分けるのに重要なのが「境界」です。
そもそも、境界とはどのようにして決まるのでしょうか。
重要なのは「境界点」になります。
新築した土地の1番隅で、矢印や十字のついた杭、または金属板を見かけたことはありませんか。
その印を「境界標」と呼び、「境界点」を表すために埋められたものになります。
境界標は複数埋設されており、これが示す境界点と境界点とを結んでいくと、その土地の境界を作りだすことができます。
土地1区画のことを「一筆(ひとふで)」という風に書くことにより、境界点のことを「筆界点」と呼ぶことも多くあります。
また、境界線は種類があります。
それには、自身の土地と隣の土地を分ける「隣地境界線」、自分の土地と公道を分ける「道路境界線」などがあります。
新築すると、高さのある塀を作りたいと考えますが、基本的に境界線に沿った形で「自分の土地側」に作るのが一般的です。
境界に高さにのある塀を設置する①「隣地境界線上に設置」
ここからは、境界に塀を設置するためのポイントをご紹介していきましょう。
まずは、自分の土地と隣の土地を分ける「隣地境界線」の上に塀を設置する場合です。
この場合、境界線の中央に塀を作る形となるため、どちらか一方の独断で作ることはできません。
隣家と話し合い、お互いの好みに合った塀を設置することとなるでしょう。
しかし、話がまとまらず、塀の種類も決まらないような場合も考えられます。
そのような場合は、民法により「板塀・竹垣などの材料」で「高さ2m以内」の塀であれば作ることができるのです。
上記の場合、隣の土地の方がどんなに反対していても、民法上は作ることができてしまいます。
その上、塀にかかる費用は折半となります。
とはいえ、「板塀・竹垣などの材料」の塀は、明治時代によく作られていたもののため、現在はほとんど見かけません。
これに代わるブロックやコンクリートの塀を作っても構いませんが、その際に発生する費用の差額分は、塀を設置した側が支払うことと決まっています。
実際に隣地境界線上に塀を設置した場合、両家の共有の財産という形になります。
境界に高さにのある塀を設置する②「自分の敷地に設置」
続いて、境界線の内側、つまり自分の敷地内に塀を設置する場合で見ていきましょう。
この場合、先ほどご紹介した境界線上よりも内側に設置することとなるため、自身の土地の庭となる部分が狭くなることが懸念されます。
しかし、自分の土地に自分の負担で塀を設置するため、好みの塀を作ることができるでしょう。
高さに関しても、2mという制限はありません。
そのため、外からの視線を遮るために、2階建ての家と同じくらいの高さの塀であっても民法上は問題はないのです。
しかし、この場合は近隣のお宅とのトラブルに繋がることが考えられます。
設置した塀のせいで隣家の日当たりが悪くなったり、高さのある塀が倒れて被害を出してしまうこともないとは言い切れません。
最悪の場合、損害賠償を支払うことになる可能性も考えられます。
そのため、塀の設置をする場合は、まず近所に挨拶に伺いましょう。
事前に一声かけておけば、近所の方の理解も得やすいでしょう。
すでに高さのある塀が境界にある場合は?
新築した際、隣家と自分の家の間に、すでに古い塀が設置してある場合もありますよね。
見栄えの観点からしても、こちらとしては新しく、高さのある塀を作りたいと考えるものです。
そのような場合、どのように対応していけば良いのでしょうか。
①現在の塀を壊して新たな塀を作る
②現在の塀はそのままで自分の土地に新たな塀を作る
上記のうち、どちらかの対応になると考えられます。
①の場合、まずはその塀が境界の上に設置されているのかを確認しなければなりません。
隣の土地に設置されていたら、それは隣家の所有物なので、②の対応になるでしょう。
その場合は、自分の敷地側に、好みの塀を自己負担で設置することとなります。
しかし、もし現在の塀が境界線の上に設置されていたら、それは隣家と自身の共有の財産になっています。
そのため、取り壊す費用も、新たな塀の設置にかかる費用もお互いで折半することが可能です。
ただ、これは隣家が同意した場合のみとなるため、必ずしもその通りにはいかないでしょう。
新たな塀の設置に隣家がどうしても反対する場合は、隣家の費用負担の割合を軽くする対応を取ることもよいです。
長くその土地に住むことになりますから、近所への印象を良くするためにも、強引に事を進めていかないようにしましょう。
境界が原因で隣家とトラブルに?
ここでは、境界でよく起こりがちなトラブルの一例についてお話ししていきます。
●土地の一部が隣家のもの
自身の土地を売ろうとしたら、土地の隅の1部が隣家所有の部分であることが分かったのです。
隣家所有のものは同意なしで販売することができないため、その土地自体の販売ができなくなってしまいました。
●塀がうちの土地にはみ出ていた
隣家が自己負担で自分の土地内に塀を設置しました。
しかし後日よく確認すると、塀の1部がこちらの土地にはみ出していました。
以上が、境界トラブルの一例になります。
両方に共通しているのは、境界自体があいまいになっていることが原因だと考えられることです。
境界があいまいだと、多くの場合自分にとって都合良く権利を主要してしまうものです。
そのため、境界線を普段から明確にしておくことが重要なのです。
境界線を明確にするには、境界杭が折れてないか、土に埋もれていないかなどを定期的に確認することが大事です。
また先述した通り、高さのある塀を勝手に設置すると、自身の土地であっても隣人トラブルに発展する可能性があるため、注意が必要です。
境界トラブルの解決方法
「隣家の高さのある塀のせいで家が日陰になってしまう」、「隣家が塀の費用を負担してくれない」など、境界に関わるトラブルはよく発生します。
このようなトラブルの際は、どのように対応したら良いのでしょうか。
以下で解決方法をご紹介していきましょう。
●境界問題解決センター
境界問題解決センターは、土地家屋調査士会によって運営されている相談所になります。
全国各地に配置されており、ここであれば境界にまつわるあらゆるトラブルを、弁護士と土地家屋調査士に相談することが可能です。
それぞれの専門的な視点から、アドバイスを受けることができるでしょう。
●専門家へ相談
上記の土地家屋調査士会が近場にない場合は、弁護士や土地家屋調査士に直接依頼することも可能です。
境界トラブルに精通した専門家を探して、相手との交渉を進めてもらうと良いでしょう。
●法務局・役所で相談
なるべく費用をかけずにトラブルを解決したいという方におすすめになります。
法務局や役所では、土地関係の無料相談窓口を設けている場合が多いのです。
境界トラブルが起こった時、まずはこの窓口で相談してみましょう。
それでも解決できない時は、弁護士や土地家屋調査士などに依頼するのも良いでしょう。
境界に塀を作る時は慎重に進めよう
新築したら境界に塀を作り、周りの土地と自分の土地を明確に分けたいですよね。
自分の敷地内に塀を作る場合は、民法上はどんな塀であっても構いません。
しかし、長くその土地に住むわけですから、近所への印象を良くするためにも、塀を作る前に一言声を掛けるのを忘れないようにしてください。
また、境界トラブルを避けるためにも、自分の土地と周りの土地を分けることができる、境界杭の点検を定期的に行いましょう。