新しい土地を所有する場合、所有者が利用できる土地の範囲を明確にしておく必要があります。
と言うのも、登記簿上は境界が確定されていても、境界杭などの標がなければ、隣地の所有者と境界を巡る厄介なトラブルになるケースがあるからです。
この記事では、所有する土地の境界杭について、その重要性と費用などを詳しくご説明していきます。
境界杭の設置にはどのような意味がある?その重要性とは
新しい土地を購入したとき、その土地を守るために重要な境界を担うのが「筆界」です。
「筆界」とは、一つの土地(1筆)の範囲を示す境界であり、「公法上の境界」とも呼ばれる法律上の絶対的な境でもあります。
そのため、土地の所有者間や個人の意志で勝手に変えることはできません。
また、この土地の境界は、登記簿上で確定されてはいても、目に見える形で線が引かれているわけではありません。
したがって、現在の一般的な不動産に関しては、土地売却時に境界確定や測量が行われ、その後に境界杭などの標を設置します。
境界杭を設置するメリットは、以下の通り3つにまとめることができます。
①境界紛争の防止
境界杭などの標があることで、隣地との境界があやふやになることを回避し、境界紛争の防止に繋げることができます。
②財産の侵害防止
登記簿上は境界確定がされていても、境界杭がなければ土地が侵害される恐れがあります。
土地の境界を目に見える形で明確にすることで、土地の侵害防止に繋がります。
③土地の売却や相続がスムーズに行える
土地の売却や相続する場合、境界杭がなければ境界復元の作業が必要となり、その分無駄な時間と費用を要することになります。
以上のように、境界を示す境界杭などの設置によって、土地を管理し、守ることができるのです。
しかしながら、境界杭が設置されていない土地は今なお数多く存在し、不明瞭な境界によって隣地との境界紛争が起こるケースが後を絶ちません。
境界杭を設置するには?土地境界確定測量に基づいた設置
前項では、土地の境界を明確にさせるためには、境界杭などの標が重要であることを話ししてきました。
実際、境界杭を設置する際には、「土地境界確定測量」と呼ばれる土地の境界調査・確認・確定が行われます。
では、土地の境界確定における「土地境界確定測量」がどのような流れで行われるのか、以下で見ていきましょう。
①事前調査
法務局や市役所などで資料収集を行い、公図や登記簿、地積測量図、建物図面などの資料から調査が行われます。
この時点で、境界確定における見積もりが出され、全体的な費用目安が分かります。
②測量
既存の境界杭を調査し、復元参照点の測量が行われます。
それらの現況データと既存する資料を照らし合わせ、境界確定の割り出しを行います。
④関係者の現地立ち合い
隣地所有者や官民などの関係者立ち合いのもと、境界確定の確認・承諾が行われます。
⑤境界杭の設置
関係者の承諾を得た上で、境界杭などの標を設置していきます。
⑥図面・申請書類の作成
現況の測量データや資料をもとに、登記申請に必要な図面などの書類が作成されます。
以上の段階を踏みながら、土地の境界確定が行われていきます。
立ち合いなどが円滑に進めば、1~2ヶ月程で完了しますが、長引くと3~4ヶ月の期間を要することもあります。
境界杭の費用は種類で変わる!境界杭の種類は様々
境界杭の設置は、境界確定測量の段階を踏んで行われることが分かりました。
では次に、設置する境界杭の種類についてご紹介していきましょう。
実際に境界杭を設置する場合、標には以下のような様々な種類の杭があるため、現況や用途に合わせて選ぶことが可能です。
・コンクリート杭
耐久性に優れたコンクリートタイプは、境界杭として最もメジャーです。
大きさや長さも様々で、設置する場所によって使い分けることが可能です。
・御影石
花崗岩(かこうがん)と言われる質岩石で、永続性に優れることから墓石などにも使われています。
希少価値のある耐久性に長けた石であるため、加工に手間がかかり、その分費用も高くなります。
・根巻
コンクリート杭を設置する場合、根巻によって根元を堅固に固定することで、杭が抜けるのを防ぎます。
・プラスチック杭
加工が難しくないため、費用も安く、流通性の高いタイプです。
ただし、軽く抜けやすい傾向にあるため、コンクリートを継いで強固にするなど、様々な工夫がされています。
・木杭
耐久性に乏しく腐食しやすいため、仮杭などの暫定的な杭に使われます。
・金属標
ステンレスやアルミ、鋳鉄杭など、様々な種類の金属標があるため、現況に合わせて選ぶことが可能です。
以上のように、境界杭の中にも種類は様々です。
境界杭を選ぶポイントとしては、できるだけ耐久性・永続性に優れたタイプをおすすめします。
と言うのも、貧弱な境界杭を選んでしまうと、いつの間にか抜けてなくなっていたり、腐食してしまう場合があり、境界復元に余計な費用が生じる可能性があります。
初期費用はかかっても、永続的に使うことができれば、管理費用を抑えることができます。
境界杭を設置したい!その費用負担は?
では、境界杭を設置するにあたり、それにかかる費用は誰が負担するのでしょうか。
まず、前述でも見てきたように、境界杭の設置には立ち合いによる境界確定のもとで行われます。
その場合、境界杭の費用は基本的に隣地所有者との折半になることがほとんどです。
しかしながら、だからと言って個人の一存によって勝手に設置することは避けた方が良いと言えます。
その理由としては、民法では以下のような規定がされているからです。
①境界標は隣地所有者と共同の費用で設置する
②境界標の設置・管理費用は、相隣者との折半で負担する
③境界線上の境界標、囲、塀などは、相隣者の共有に属する
以上のことから、境界杭が必要な場合、境界杭の設置数や場所、素材に関しては隣地所有者とよく相談することが大前提になります。
境界トラブルを避けるための境界杭が、勝手な設置によってトラブルの火種になっては本末転倒です。
境界杭の設置を検討している場合、必ず隣地所有者にコンタクトをとるようにしてください。
境界トラブルが起こったらどうする?
境界杭の設置については、あらかじめ隣地所有者の合意のもとで行うことが前提として、それにかかる費用は折半になることが分かりました。
しかしながら、現在でも境界杭の設置を巡るトラブルが多く、例えば隣地所有者の合意なしに設置してしまうケースも少なくありません。
では、もしそのようなトラブルに巻き込まれた場合、どのような機関に相談すれば良いのでしょうか。
境界杭設置のトラブルについては、境界問題に詳しい土地家屋調査士や測量士、司法書士、そして不動産会社の取引主任に当たってみるのが良いでしょう。
また、境界杭以前に、土地の境界確定を巡って隣地所有者とトラブルになっているようであれば、境界確定訴訟による裁判に頼る方法があります。
さらに、「境界問題相談センター」という専門機関で調停を行うこともできるので、裁判以外でトラブル解決を望む場合は、こちらをおすすめします。
塀やフェンスの設置費用について
では最後に、境界線上に塀やフェンスを設置する場合の、その設置費用についても見ていきましょう。
前述したように、民法では「囲や塀なども相隣者の共有に属する」とあり、費用の負担も折半することになっています。
しかし、これについては、例えば隣地所有者との間で別の合意さえあれば、費用の負担は必ずしも折半でなくても問題はありません。
つまり、当人同士の合意内容に基づいた費用負担にできるということです。
これは、塀やフェンスなどの修繕費用についても同じことが言えます。
いずれにしても、境界線上に塀やフェンスを設置する場合は、境界杭の設置と同様に、当然隣地所有者の合意が前提となるので、必ず隣地所有者と相談するようにしましょう。
境界確定測量に基づいた境界杭の設置を!隣地の合意も必須
自分の所有する土地を守るためには、境界確定測量に基づいて境界杭などの標を設置することが大切です。
また、境界杭を設置するにあたっては、境界確定測量のもと、必ず隣地所有者の合意の上で行ってください。
隣地所有者とよく話し合うことで、境界トラブルを回避することに繋がります。