2020年の東京オリンピックに向けて、特に目玉の建物として、メイン会場でもある新国立競技場があります。
建築士の変更などで話題になりましたが、このような大規模な建築物には必ず建築士が関わっています。
憧れの職業である建築士になるためには、どのような過程を踏めば良いのでしょうか。
建築士の受験資格についてお話しします。
また、建築学科を持つ名門大学、中でも国公立大学をご紹介します。
建築士には3種類ある
憧れの職業である建築士には、いくつか種類があります。
最も上位の国家資格である「一級建築士」になると、あらゆる建築物の設計や建設に関わることができます。
そのため、建築士を目指す人は最終的に一級建築士を目指すことになります。
一級建築士の仕事は、建築物の設計だけでなく工事の監理も含まれます。
一般住宅をはじめ、ビルやさまざまな建築物の設計図を描き、設計図をもとに現場で指揮や監督をします。
一級建築士というと個人で建築事務所を持っている、建築事務所に属している、と思われるかもしれませんが、それ以外にも就職口はあります。
例えば、建設会社、ハウスメーカー、不動産事務所などです。
建築士にはいくつか種類があるとお話ししました。
「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の3種類です。
それぞれの違いについてご説明します。
「一級建築士」
すべての建築物を設計することができます。
一般住宅のような小規模な建築物から、商業施設、ビル、大規模建築物などの設計を行うこともできます。
「二級建築士」
延べ面積が30㎡から300㎡以下の鉄筋コンクリート造、鉄骨造と、延べ面積が500㎡以下の木造の建築物と工事監理を行うことができます。
「木造建築士」
1階もしくは2階で、延べ面積が300㎡以下の建築物の設計と工事監理を行うことができます。
建築士を目指すためには、大学や短大などの建築学科を卒業する必要があります。
それは国公立・私立を問いませんが、それ以外にも必要な受験資格があります。
次項でご説明します。
国公立or私立大学の建築学科を卒業するのが近道
一級建築士になるためには、2つのパターンが考えられます。
ひとつめは、いきなり一級建築士を目指すパターンです。
大学卒業後に、二級建築士を経ずに一級建築士を目指すのであれば、必要な受験資格は2つあります。
大学・短大・高専(どれも国公立・私立を問わない)の建築学科を卒業していることと、数年の実務経験を積むことです。
実務経験年数は、大学卒であれば2年、短大卒であれば3~4年、高専卒であれば4年が必要です。
この受験資格を満たしていれば、一級建築士の受験資格が得られます。
もうひとつは、「二級建築士」「木造建築士」の資格を取得してから一級建築士を目指すパターンです。
大学・短大・高専で建築学科を卒業していない人はこちらのパターンになります。
二級建築士は、建築に関する学歴がなくても実務があれば受験することができます。
二級建築士の受験資格は大きく4つに分けられます。
●大学・短大・高専で指定科目を修めて卒業した者:実務0年でOK
●高校・中学で指定科目を修めて卒業した者:卒業後3年以上の実務経験
●その他都道府県知事が特に認める者:所定の年数以上
(建築設備士であれば実務経験0年でOK)
●建築に関する学歴なし:実務経験7年以上
二級建築士でさえ建築に関する学歴がない場合、実務経験を7年も積まないと受験資格さえ得ることができません。
さらに二級建築士の資格を取得したあと、4年の実務経験を積まなければ一級建築士を受験することができません。
そのため、大学の建築学科を卒業した人よりも資格の取得に時間がかかってしまうことを覚えておきましょう。
国公立大学よりも私立大学が強い?一級建築士の合格率
一級建築士の試験は、難関といわれています。
建築・不動産系の資格としては最も高い難易度の試験です。
試験は一次試験(学科試験)と二次試験(設計製図試験)に分かれています。
一次試験の合格率は19%程度、二次試験は学科合格者のうちの40%程度が平均値ですので、総合で7~8%の合格率ということになります。
ちなみに、平成29年の一次試験合格率は18.4%、二次試験の合格率は37.7%でしたので、総合合格率は10.8%でした。
ここで、多くの一級建築士を輩出している大学名上位何校かご紹介します。
・日本大学
・東京理科大学
・芝浦工業大学
・早稲田大学
・明治大学
・工学院大学
・千葉大学
・近畿大学
・法政大学
・京都大学
日本トップの国公立大学である東京大学が入っていないのが驚きですね。
私立大学が多いのが印象的です。
大学によっては、一級建築士の資格取得に力を入れているところもあります。
その成果が出ているのかもしれません。
しかし、東京大学も多くの一級建築士を輩出していることに変わりはありません。
一級建築士の分野①
一級建築士になるためには、大学の建築学科を卒業することが最も早い道であることがわかりました。
しかし、ここで立ち止まって考えてほしいのは、どのような建築家になりたいのかという点です。
大学を選ぶポイントとして、国公立であるか、私立であるかや、偏差値、大学の所在地なども重要ですが、ほかにも重要なことがあります。
建築について、どのような分野で活躍したいのかという点です。
建築といっても、実はその中でもいくつかの分野に分かれています。
その中でも5つの分野をご紹介します。
●意匠設計(いしょうせっけい)
建築設計、構造物や製品の設計において、全体のデザインを決める分野です。
建築学科の学生に人気のある職種ですが、デザインのセンスや空間認識能力の高さなどが必要になるため、一級建築士の中でも意匠設計士は稀な存在です。
●構造設計
建築物の構造に関わる設計をする仕事です。
建築物に働くと考えられる力(地震や台風・荷重など)に対して、構造的に安全かつ経済的な合理性を考慮して設計を行います。
一級建築士の分野②
続いて、残り3つの分野をご紹介します。
●設備環境設計
建築物は、内部で人が快適に過ごせることも重要な要素です。
風や日光、気候や風土などを考慮しそれを活かしながら、空調・衛生・照明などを設計します。
専門性の高い高度な知識が必要で、ビルなどの大きな建築物には必要な仕事です。
●材料
建築材料を研究する分野です。
構造部材から外壁、内装に至るまで建築物にはさまざまな材料が使われています。
外観を美しく見せるものから構造を強くするものまで、さまざまな建築材料の研究があります。
●建築史
建築の歴史を研究する分野です。
建築史の研究をすることで、過去の知識を現代の建築に反映させることができます。
現代の建築に反映するという点で、実際に建築士として設計をしている建築史家も多いです。
どの分野を専門としたいのか、それによって選ぶ大学も変わってきます。
大学の建築学科といってもすべて同じというわけでなく、その分野に特化した大学がありますので、国公立・私立両方の建築学科について調べてみましょう。
建築学科がある国公立大学
建築学科がある大学は、国公立にも私立にも名門と呼ばれる大学があります。
私立にも素晴らしい大学がありますが、今回は国公立大学にスポットを当ててご紹介します。
●東京大学 工学部 建築学科
東大の建築学科はとても有名です。
何人もの著名な建築家を輩出しています。
就職をする際も手堅いのですが、研究にも特化しているのでそちらに力を入れたいのであればおすすめです。
建築学科を目指すのであれば理科一類を目指しましょう。
●東京工業大学 環境・社会理工学院建築学系
東京工業大学は、建築学科というものはありません。
学生は「学類」を選択することになりますが、建築学科に該当するのは「第6類」です。
●千葉大学 工学部 建築学科
一級建築士の合格者を毎年多く出しています。
資格試験に強い大学といえます。
●京都工芸繊維大学 工芸科学部 デザイン科学域 デザイン・建築学課程
京都府にある大学で、名門の建築学科です。
工学技術を基礎とし、設計を主体としたカリキュラムを行っています。
一級建築士の合格者も毎年多く出しています。
関西圏の国公立大学を目指すのであればおすすめです。
社会人からでも建築士を目指せる
建築士の資格を持っていると、建築関係や不動産関係の仕事には有利です。
しかし、一級建築士の試験は難易度が高いため、誰でも挑戦できるというわけではありません。
それでも、もしすでに社会人であったとしても、建築士への道が閉ざされたわけではありません。
経験を積めば一級建築士の資格を取得することは夢ではありません。
少し時間がかかるかもしれませんが、社会人からでも挑戦できる、という門戸が開かれているだけ希望があります。