事業者であったり不動産投資を行ったりしている方には、根抵当権を設定している方もいることでしょう。
根抵当権の特徴には極度額が設定されていることが挙げられ、その金額の範囲で借入れが可能となります。
しかし事業や投資が進むなかで、極度額の設定を変更したいと望む方もいるかと思います。
そこでここでは極度額を増額する場合の手順や、費用がどのくらいかかるのかをご説明していきましょう。
根抵当権ってどういう権利?
根抵当権を設定している方のなかには、極度額を増額するか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
しかし、そもそも根抵当権がどのような権利なのか、あまりよく知らないという方もいるかと思います。
そこでまずは、根抵当権についてご説明していきます。
これは抵当権という権利の一種なのですが、抵当権は設定ごとに借入額が確定し、定められた金額をきっちり貸し出される権利です。
主に、住宅ローンなどで抵当権はよく設定されますね。
ところが根抵当権の場合は、借入れできる限度額のみが設定され、決められた限度額の範囲内で貸し出される権利をいいます。
そのため、一般家庭というより、事業者や不動産投資家たちがよく活用するものですね。
ちなみに、設定する際には費用がかかります(後ほどご説明します)。
根抵当権の特徴としては、極度額というものを設定することが挙げられます。
後に増額もしくは減額することも可能なものですが、極度額とは一体どのようなものなのでしょうか。
根抵当権で設定される極度額とは?
根抵当権では極度額が設定されるわけですが、これはどのようなものなのでしょうか。
先ほどもお伝えしましたが、根抵当権で借入れできる限度額のことを極度額というのです。
もし決められた極度額が3000万円であれば、3000万円以内で自由にお金を借りたり返したりすることが可能になります。
そのため、一般家庭ではマイホームを購入するなど以外では、度々高額なお金を借りるなんてことはないでしょうから、あまり設定はされません。
一方、事業者であったり不動産投資家などであれば、毎日の業務や投資活動のなかで、お金が必要になるときは度々起こります。
いつ必要になるかも予測することはできませんから、今は借りる必要がなくても根抵当権を設定しておくことで、必要なときに借りることができるのです。
事業の拡大などによっては、今決められている極度額の金額を変更したいと望むこともあるかと思います。
もちろん極度額を増額もしくは減額することは可能です。
その際に費用もかかるわけですが、どのくらいかかるのでしょうか。
まずは、設定する際の費用についてみていきましょう。
根抵当権を設定!そのときにかかる費用はいくら?
根抵当権は無料で設定できるわけではなく、費用がかかります。
根抵当権の極度額などを設定する場合は、「金融機関の融資手数料」と「根抵当権設定費用」の2つの費用がかかります。
根抵当権設定費用は、以下の3つで構成されています。
・司法書士報酬
・登録免許税
・事前・事後に登記事項証明書を取得する費用
極度額の設定を変更する場合、司法書士に依頼することもあります。
その際は、司法書士に対して報酬を支払わなければなりません。
依頼する司法書士事務所によって、報酬の金額も変わってきますが、3万円程度はかかるでしょう。
高額の事務所ですと、10万円を超えるところもあります。
それでは極度額を増額する場合はどうなのでしょうか。
次項から、変更方法についてご説明していきます。
極度額を増額するにあたって!利害関係人が重要
それではここから、根抵当権の極度額を増額したい場合についてご説明していきましょう。
極度額を変更したい場合には、重要な人物が関わってきます。
その人物は「利害関係人」といい、根抵当権を通じて何らかの利害関係を持っている人のことを指します。
特に増額する場合の利害関係人には、次のような人物が重要な役割をもちます。
・根抵当権と同順位と後順位の担保権者
・根抵当権の後順位の不動産差押債権者
・根抵当権の後順位の不動産仮処分債権者
・根抵当権の後順位の所有権に関する仮登記権利者
極度額を変更したい場合、上記のような利害関係人に承諾を得なくては変更することはできません。
変更の際は、根抵当権者と根抵当権設定者の合意がなくてはできませんし、また変更をすることで影響を受けるであろう後順位の担保者などの承諾を得ることも必要になります。
というのも、万が一破産してしまったときに、担保を金銭に替えることになります。
その金銭は、根抵当権の順位が上位の人から返済されますので、下位にまで返済されないことも十分にあり得るのです。
増額することでこのようなリスクがついてくるので、後順位の担保権者までの合意を得なくてはなりません。
そのため、極度額を変更するにあたっては、利害関係人も重要な役割であることがいえるのです。
次項で、設定の変更と費用についてお話をしていきます。
極度額を増額したい!その費用はどのくらい?
根抵当権の極度額を増額したいときは、民法398条の5に基づき手続きが行われます。
先ほどもお話をしたとおり、利害関係人たちに承諾を頂かないとできませんので注意してください。
手順としては、次のようになります。
①根抵当権者と根抵当権設定者が、極度額を増額する契約を結ぶ
②さらに利害関係人に、極度額の増額変更承諾書に受領してもらう
これだけで変更の手続きは済みます。
当事者間での合意と、利害関係人の承諾を得ることができれば、元々の根抵当権設定登記とは別で「付記登記」を行います。
登記された情報は、上書きされることはありません。
登記の役割は、「どういう経緯で」「何が起きたか」を記録することです。
これを上書きしてしまっては、登記の本来の目的を失ってしまいます。
そのため、付記登記という形で、別の枝番号で保存されるのです。
ちなみに、極度額を増額することでかかる費用としては、登録免許税のみです。
登録免許税は、極度額の増額分の4/1000(0.4%)です。
さらに、司法書士に依頼すれば、その費用もプラスで支払います。
極度額を増額するだけでも、費用はそれなりにかかってしまいますね。
極度額を増額ではなく減額したい!そのときの費用は?
それでは極度額を増額ではなく、減額したい場合はどうなのでしょうか。
手順に関しては、増額と同様の手続き方法と、民法398条の21に基づいて行われる手続き方法があります。
民法398条の21での手続きは、はじめに元本確定をし直します。
極度額を決める際には、「元本確定」をした後に「貸出予定金額および極度額の決定」の手順で決定されます。
元本確定とは、根抵当権を設定する際に担保となる物件の価値を決めることです。
元本確定により算出された担保価値を基に、貸出予定金額などが決められます。
この貸出予定金額とは、事実上借りることのできる金額のことで、極度額とは別で設定されます。
極度額の金額は、貸出予定金額の120%前後で設定されることがほとんどです。
例えば、元本確定時の担保価値が5000万円だとします。
そのとき貸出予定金額も5000万円となり、極度額はその120%の6000万円となります。
6000万円の極度額を減額したいとき、元本確定を改めて行ったら、今の担保価値は3000万円になっていることが判明したとしましょう。
そうなれば、担保価値の120%の3600万円まで減額が認められるようになるのです。
こちらの手続き方法ですと、増額時のように根抵当権者と根抵当権設定者との間で契約書を締結する必要はありません。
根抵当権設定者が根抵当権者に、極度額変更の通知書を送れば、変更されるようになります。
もちろん、登記に至っては増額同様、付記登記されます。
減額変更でも、登録免許税のみ費用がかかります。
しかし、不動産1つにつき1000円ですので、増額よりは安く済むかもしれません。
とはいえ、こちらも司法書士に依頼すれば、報酬だけでも3~10万円ほどかかってしまいます。
極度額の金額の変更を検討している際は、かかる費用も頭に入れておくようにしましょう。
極度額の変更はよく考えてから行おう!
根抵当権の極度額の金額を変更したい場合の、手順や費用についてお話をしてきました。
手続きするだけでも、高額な費用を支払うことになりますし、利害関係人などから承諾をいただなければなりません。
お金も手間もかかりますから、変更する場合はよく考えてから行うようにしましょう。