賃貸経営で様々なトラブルに対処していくためには、法律の知識は必要です。
少額訴訟などで弁護士に依頼する場合はしっかりと計算しないと、費用分を支払って手元に残ったのはわずかなお金…ということにもなりかねません。
勝訴した場合には、かかった費用を相手負担にすることはできないのでしょうか。
この記事を読んでいただければ、少額訴訟での手続きや弁護士依頼についてイメージがわくと思います。
賃貸経営で法的トラブル!少額訴訟の費用が気になる
考えたくはありませんが、賃貸経営をしていると、法的なトラブルに悩むこともあると思います。
家賃を払ってくれなかったり、問題行動を繰り返す入居者に泣き寝入りするわけにはいきません。
また、その逆も考えられます。
誠意を持って経営していても、言いがかりをつけられて訴訟を起こされたりすることも無いとは言い切れません。
さらに、入居者同士でトラブルになり、法的な手段に出る人もいるかもしれません。
個人ではなく法人に貸している場合でも、様々なリスクはあります。
ここでは、経営者として知っておくべき法律知識をご説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
今回、論点としたいのは、少額訴訟の場合の費用を相手負担にできるかについてです。
こちらは悪くなくて勝訴した場合でも、弁護士に依頼する費用を支払わなければいけないのでしょうか。
次項から解説します。
少額訴訟って?手数料の費用は相手負担にできるの?
「少額訴訟」というのがどの程度の金額のことなのかということですが、60万円以下が一般的です。
60万円を下回れば、簡易的で早く判決がおりることも多く、一日でカタがつくこともあります。
しかし、金額が少ないからといって手続きにかかる費用を免除されるわけではなく、弁護士に依頼すれば、その分のお金も支払わなければいけません。
まず、収入印紙代として、請求する金額に応じて手数料がかかります。
50万円~60万円なら、手数料は6,000円で、金額が低くなるにつれて手数料も少なくなっていきます。
そして、予納郵送代(切手代)がかかります。
裁判所にはじめに切手を納めて、余った部分は後に返却されます。
ちなみに、東京裁判所なら、原告と被告がどちらも1人の場合は、3,900円程度の切手を用意することになります。
さらに、交通費も費用としてかかってきます。
先に挙げた印紙代や切手代は相手負担にもなりますが、この交通費については自己負担ですので注意しましょう。
少額訴訟で弁護士依頼すると費用がかかる!メリットは?
少額訴訟で勝つ見込みがあり、法律知識も豊富なら、弁護士に依頼しない方がメリットはあります。
手続きも難しくないので、弁護士費用を浮かせるために、依頼しない場合のほうが多いようです。
一方で、少額訴訟でも弁護士に依頼するメリットもあります。
●手続きや話し合いにかかる時間を取れない場合
仕事で忙しく、時間が惜しい場合、信用できる弁護士に全てまかせた方がいいでしょう。
裁判所が呼び出す期日は、こちらの都合を最優先してくれるわけではありません。
また、判決が出ても、向こうが異議を申し立てれば、なかなかカタがつかないことになります。
●相手となるべく顔を合わせたくない場合
手続きから話し合いまで弁護士に委託することができますので、相手と向き合うのが嫌な場合には、メリットはさらに大きくなります。
●勝訴する確率が高くなる
素人の場合、方法を少しでも間違えると、勝訴の見込みがあるような場合でも形勢が逆転することがあります。
証拠を客観的に判断でき、かつ的確に行動できるプロに頼むことによって、やはり安心感が違います。
では、弁護士に依頼すると、どのようにお金を支払うことになるのでしょうか。
また、その分を相手負担にできるのでしょうか。
相手負担にはできない!?少額訴訟での弁護士依頼費用
少額訴訟でも弁護士に依頼する場合、費用として、相談料と着手金、報酬金がそれぞれ発生します。
〇相談料
弁護士に相談するだけでもお金がかかってきます。
だいたい1時間以内なら5,000円程度が相場です。
無料相談を行っている事務所もあります。
〇着手金
正式に依頼し、弁護士が仕事に着手金した段階で、支払うことになります。
結果には関係の無いお金で、負けても返金されることはありません。
相場としては、だいたい訴額の5%~10%になります。
〇報酬金
少額訴訟に買って回収できた場合に、弁護士に支払う報酬です。
金額の10%~20%が相場になります。
〇事前調査料など
訴訟の前に調査などを依頼する場合は、それにかかるお金も支払うことになります。
このような費用については、実のところ、勝訴でも相手負担にはできません。
しかし、例外もあります。
弁護士依頼費用を相手負担にできない理由・負担してもらえるケース
少額訴訟の弁護士依頼の分の費用を相手負担にできないのは、日本ではドイツやフランスと違い、「敗訴者負担制度」が採用されていないからです。
ですから、現段階(2018年)では、裁判を起こして100万円回収したとしても、着手金と報酬金で数十万円は支払わなくてはなりません。
少額訴訟なら、もっと少ない金額しか回収できないわけですから、手元に残るのはわずかな金額、ということにならないように注意が必要です。
ですが、場合によっては、弁護士費用を相手負担にできる部分があります。
☆不法行為による損害賠償請求
相手が違法行為をして、こちらが損害を被った場合には、相手に賠償請求ができます。
犯罪の被害者だったり、不倫されたりして慰謝料の請求をする場合などでは、弁護士費用を一部、払わなくてもいいことがあるのです。
だいたいの相場としては、賠償金額のおよそ10%くらいになるでしょう。
(和解や敗訴では請求できません)
ちなみに債務を支払わなかったなどの場合は不法行為とは言えず、弁護士費用は自己負担になります。
なるべく費用を抑えたいならどうすべき?
少額訴訟だけではありませんが、訴訟によって弁護士の費用を相手負担にできるのはめずらしいケースで、しかも相手負担分は少ないということが、ご理解いただけたでしょうか。
これは司法書士に依頼した場合も同様で、回収金額から諸費用を支払っていくことになります。
では、できるだけ少額訴訟にかかる費用を安くするにはどうすればいいのでしょうか。
まず、先述したように相談を無料で受け付けている事務所もありますので、それを利用すること。
そして、弁護士に頼りきりにならず、できることは自分でやるようにすることです。
値段を比較して、安い弁護士事務所を選ぶことなどが挙げられます。
訴状については、インターネットでひな形を見ることができますので、それを参考にしながら書けます。
着手金ゼロ、初期費用ゼロの事務所もあるようですね。
また、不動産経営をされている場合に顧問弁護士と契約を結んでいる方もいます。
月々、契約料が発生してしまいますし、法的トラブルはそう頻繁に起こるものではありません。
ですから、法的なトラブルが起こる可能性の大きい事業でない限りは、必要ないかもしれません。
ただ、不動産経営に特化した弁護士に日頃から相談できて、どの事務所が信頼できるのか探す手間も省け、安心感がある、という点はメリットと言えるでしょう。
経営者として基本的な法律の知識を学ぼう
少額訴訟の場合、弁護士に依頼するとどのくらいかかるのか、その分を相手負担にはできないのか、ということをご説明しました。
結論は「基本的にできない」ということになるのですが、一部だけ負担させることができる場合もあるようです。
少額訴訟は、正確な法律の知識と対応力があれば、弁護士に頼らずとも、手続きから話し合いまですることができます。
不安点があれば、訴訟の全工程の中で聞きたい要点だけを絞ってまとめ、無料法律相談窓口をたずねてみるといいでしょう。
相談の時間は限られていますので、なるべく多くのことを聞けるようにイメージしていくといいですね。