知れば深まる!GDPの計算式とは?用語の覚え方のコツとは?

国民総生産のことを「GDP」と言いますが、きちんと説明出来ますか?

「よく耳にするけれど、詳しいことは分からない」という方も多いと思います。

「GDP」がどのような計算式ではじき出されるのか、また経済用語の覚え方など、学生時代に勉強したはずなのに忘れてしまっている方のために、今さら聞けないGDPについてご紹介していきましょう。

「GDP=国内総生産」の覚え方と意味について

それでは、早速、「GDP」についてお話していきましょう。

前述したように「GDP=Gross Domestic Product」は、国民総生産のことを言います。

このように、経済用語などでは、本来の意味から頭文字だけを取って略す言い方をする場合が多くあります。

同じようなアルファベット3文字だと混同してしまって、よく分からなくなってしまうこともしばしばありますよね。

こうした略語の覚え方としては、英語の意味を覚えてしまうのが一番分かりやすいと思います。

・Gross(グロス)=総額

・Domestic(ドメスティック)=国内

・Product(プロダクト)=生産

このように、英語の意味を覚えることで、他の略語と混同しなくなりますし、日本語の意味も理解しやすくなります。

したがって、「GDP」は「一定期間内に国内で生産された、すべての付加価値(物やサービスなど)を金額にして表したもの」ということになります。

くだけた言い方をするなら、「国内で生産されたものの儲けの合計」と言ったところでしょうか。

そのため、経済指標の中でGDPは、最も重要な数値なのです。

また、「GDP」には「実質GDP」と「名目GDP」のふたつがあります。

ニュースなどでよく耳にする「GDP」は、このうちの「実質GDP」のことです。

「実質GDP」と「名目GDP」については、「GDP」の計算式とともにのちほどご紹介していきます。

他にも、「GDP」に似た経済用語があるので、まずはそちらを見ていきましょう。

「GDP」と混同しやすい「GNP」の覚え方と意味について

先程ご紹介した「GDP=国内総生産」と似た経済用語に「GNP=国民総生産」があります。

「GDP」をより理解するためにも、「GNP」も押さえておきましょう。

「GNP」は、「Gross National Product」の略で、覚え方としては「GDP」と同じように英語の意味を見るのが早いと思います。

・Gross(グロス)=総額

・National(ナショナル)=国民

・Product(プロダクト)=生産

「D」と「N」は、「国内=Domestic」と、「国民=National」の違いで、「GNP=国民総生産」とは、「その国の国民の所得の総額」のことです。

つまり、前項と同じように言うと「一定期間内に国民が生産した、すべての付加価値(物やサービスなど)を金額にして表したもの」で、「国民が生産したものの儲けの合計」です。

したがって、日本人として考えると、海外の日本企業で稼いだ日本人の所得も「GNP」として加算されます。

しかし、「GNP」は「1年以上日本で住んでいる国民」を対象にしているので、海外で長く住んでいる日本人はこれに当てはまりません。

また、「GNP」の計算式は以下の通りです。

【GNPの計算式】

GDP+海外からの所得=GNP

この場合の「海外からの所得」とは、日本人の海外からの所得から、日本人の海外への所得支払いを引いた、純所得になります。

少しややこしいかもしれませんが、「GDP」と「GNP」の覚え方としては、「GDP=場所」「GNP=国籍」と考えると分かりやすいでしょう。

例えば、スポーツなどの日本人プレイヤーが海外で活躍して得た所得は、日本の「GDP」には含まれず、「GNP」に含まれます。

そして、「GDP」は場所ですから、日本人プレイヤーが得た所得でも、活躍した国の「GDP」に含まれる、ということです。

「GDP」の計算式を分かりやすく見てみよう

「GDP」と「GNP」の違いや覚え方はお分かりいただけましたか?

次は「GDP」の考え方について詳しく見ていきましょう。

例えば、ある農家がトマトを栽培して、ひとつ100円で喫茶店に売ったとします。

このひとつ100円でトマトを売った途端に、100円「GDP」にプラスされます。

買った喫茶店は、トマトを絞って300円のジュースとして販売しました。

この場合、喫茶店はトマトを100円で買って、300円で売ったので、儲けは200円になります。

《トマトジュースの計算式》

300円(売値)-100円(仕入れ値)=200円(儲け)

そして、トマトジュースを販売した途端に儲けの200円が、「GDP」にプラスされます。

したがって、農家はトマトを栽培することで「100円の付加価値」を生み出し、喫茶店はトマトをジュースにすることで「200円の付加価値」を生み出したことになるのです。

つまり、付加価値とは「国内の誰かが稼いだもの」ということになります。

《この場合の「GDP」の計算式》

100円(農家の付加価値)+200円(喫茶店の付加価値)=300円(GDP)

このことから、「GDP」を見れば、その国の一定期間の収入がいくらなのか分かりますし、数値の増減でその国の経済状態が分かる、ということになります。

「実質GDP」と「名目GDP」の覚え方

先程の農家と喫茶店のお話しの続きを見ていきましょう。

翌年、農家は同じようにトマトを栽培しましたが、値段を100円から200円に値上げしました。

去年の倍の値段です。

喫茶店は、同じようにトマトを買いましたが、トマトが値上がりしているので、ジュースの値段を去年の倍の600円にして販売しました。

《値上げしたトマトのジュースの計算式》

600円(売値)-200円(仕入れ値)=400円(儲け)

《「GDP」の計算式》

200円(農家の付加価値)+400円(喫茶店の付加価値)=600円(GDP)

このように、当然、儲けも倍の400円になるので、「GDP」も倍の600円になり、「国全体の経済成長率は2倍」ということになります。

しかし、去年と同じトマトを同じ方法でジュースにしたのに、トマトが値上がりしただけで経済が成長したと考えるのには疑問は残ります。

また、去年の2倍の量のトマトを栽培し、2倍の量のジュースを売って得た儲けは場合は次のようになります。

《栽培量を増やしたトマトのジュースの計算式》

(300円(売値)×2倍)-(100円(仕入れ値)×2倍)=400円(2倍の儲け)

《「GDP」の計算式》

100円×2倍(農家の付加価値)+400円(喫茶店の付加価値)=600円(GDP)

同じ金額ですが、内容は大きく異なります。

このように、値上げによる見かけだけの経済成長を含んだ「GDP」が「名目GDP」です。

そして、作った物の量が増えたことによる「GDP」を「実質GDP」と言い、区別しています。

覚え方としては、「名目GDP」の中に「実質GDP」が含まれていると考えると良いでしょう。

物価変動が分かる「GDPデフレーター」の計算式

前項でご紹介した「名目GDP」ですが、値上がりした分を調整すれば「実質GDP」にすることが出来ます。

【名目GDPから実質GDPを調整する計算式】

400円(値上げしたトマトジュースの値段)÷2倍(値上がり率)=200円(実質GDP)

ここで重要なのは、前年と比べて「実質GDP」がどれだけ増減したかで、本当の経済成長が計れるということです。

この「名目GDP」と「実質GDP」の差を「GDPデフレーター」と呼びます。

この「GDPデフレーター」は物価変動を見る上でとても重要なもので、経済的なニュースでは「GDP」と一緒に報道されることが多いので、押さえておきたい用語です。

その覚え方は次の通りです。

【GDPデフレーターの計算式】

名目GDP÷実質GDP=GDPデフレーター

先程の例で言うと、2倍なので「GDPデフレーター」は「2」です。

この「GDPデフレーター」が、「1」を下回ると物価が下がっていることになります。

実はもっと細かい「GDPの計算式」

これまで、とても単純化した「GDPの計算式」をご紹介してきましたが、実際にはもっと細かいものです。

「GDP」は、「国内で生産されたものの儲けの合計」であると同時に、「国内で支出されたものの合計」でもあります。

経済活動を見ると、国内では大きく分けて「人」と「企業」と「政府」が支出し、他に外国との輸出入も関係してきます。

そうしてみると、計算式は次のようになります。

【支出の観点から見たGDPの計算式】

個人消費+民間投資+政府支出+純輸出=GDP

この場合の純輸出は、輸出から輸入を引いた金額になります。

純輸出金額の覚え方は、輸入金額より輸出金額が多ければ、純輸出額はプラスになりますし、その逆ですと純輸出金額はマイナスになります。

実際、「GDP」を自分で計算をすることはないと思いますが、世界経済の動向を知る上で、どのように算出されているかを知ることはとても重要だと言えるでしょう。

「GDP」を知るには計算式を知っていると分かりやすい!

世界経済の動向を知るには、「GDP」を理解しておくことが大切です。

また、その計算式が分かっていれば、より理解も深まります。

「GDP」や「GNP」について、きちんと理解した上で経済の情報にも目を向けてみましょう。

そうしてみると、世界が少し違って見えるかもしれませんよ。