新聞やニュースなどでGDPという言葉を目にされたことはないでしょうか。
これは、「Gross Domestic Product」の略で、日本語では国内総生産と訳されています。
実はGDPは、中学校の社会の時間に、国の経済力を計る指標として学んでいる事柄です。
今回は、このGDPや、GDP成長率の求め方について復習していきましょう。
GDP(国内総生産)とは国内で生み出された付加価値総額
GDP成長率の求め方の前に、まずはGDPそのものについて少し復習しましょう。
GDP(国内総生産)とは、一定期間に国内で生み出された付加価値の総額のことです。
また、よく似た言葉でGNP(gross national product)というものもあり、これを日本語に訳すと「国民総生産」となります。
GDPは国内の付加価値総額ですが、GNPは一定期間に国民によって生み出された付加価値総額を指し、国内に限らず海外支店等の所得も含んでいることが違うポイントです。
そして以前は、景気を計る指標として、このGNPが用いられていました。
しかし企業のグローバル化が進んだ現在では、より国内の景気を反映するGDPが重視されるようになりました。
ちなみに日本のGDPは、内閣府により四半期ごとに公表されています。
2018年1-3月期の統計によると、日本の実質GDPは533.9兆円となっています。
また、併せてGDP成長率も公開されており、こちらは実質-0.2%でした。
ところで、「実質GDP」と述べましたが、GDPには名目と実質の2種類があります。
名目GDPとは、統計で出た数字をそのまま集計したものを指し、つまりその時の市場価格で付加価値総額を評価したものです。
一方実質GDPは、名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものです。
経済成長率を見たいときは、物価の変動を差し引いた実質GDPで見るのが一般的です。
GDP(国内総生産)でいう付加価値とはなんのこと?
ところで、GDPの求め方はというと、各産業の付加価値を合計することで求められます。
また、GDP成長率はその前期対比を出すことで求められます。
では、国内で生み出された付加価値とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
簡単に言えば、企業が生産販売活動によって新たに生み出した価値で、売上金額から製品の材料費や人件費などの経費を差し引いた利益のことです。
例えば、500円のケーキを販売して、その材料費が100円、人件費が100円、制作販売にかかる店舗の土地代や電気代などの費用が100円だったとします。
すると、500円の売上を上げるために合計300円の費用が掛かっているため、利益は500円-300円=200円ということになりますね。
この200円が付加価値ということです。
ちなみに、ケーキ屋さんに小麦粉を卸す会社もありますよね。
小麦粉の売上金額500円を得るために、300円の仕入れ代金と100円の人件費、その他の販売経費50円がかかっていたとします。
すると、卸会社の付加価値は500円-450円=50円ということになります。
また小麦粉の製造メーカーは、生産者から小麦を仕入れ、工場で小麦粉を作っています。
500円の売上を上げるために、材料費100円、人件費100円、製造経費100円、輸送経費50円とすると、その付加価値は500円-350円=150円になります。
GDPの求め方は付加価値の総合計、ではGDP成長率は?
製造販売だけでなく、もちろん小麦粉の原料となる小麦の生産者も付加価値を生み出しています。
小麦の売上500円を得るためには、小麦の種を仕入れ、育てなければなりません。
その経費を400円とすると、生産者の付加価値は500円-400円=100円になります。
このように、商品が消費されるまでには、第1次産業から第3次産業まで、商品に関わった企業それぞれが段階を経て付加価値を生んでいるのです。
ところで、GDPの求め方は、付加価値の総合計でしたね。
先ほど挙げた例の場合では、ケーキ屋さんの付加価値200円、卸会社の付加価値50円、製造メーカーの付加価値150円、生産者の付加価値100円を合計した値である500円がGDPとして計上されます。
実際にはGDPは「国内」総生産ですから、国内のあらゆる企業が生み出した付加価値を合計したものです。
そうして合計した場合、日本であれば500兆円を超える金額になってくるというわけです。
つまり、生産から製造、販売を行う日本の企業の活動によって生み出された付加価値、言い換えれば利益の総計がGDPと言えるでしょう。
以上が、GDPのあらましです。
おそらく、中学生には難しくても、社会人の皆さんなら理解していただけたでしょう。
では次に、本題となるGDP成長率とその求め方について見ていきましょう。
GDP成長率の求め方!GDPの前期対比を用いて計算する
国の経済規模の増大を数値化したものを経済成長率と言い、実質GDPを用いて、その前期対比で表されるのが一般的です。
成長率がプラスならば、景気が好転している、マイナスならば景気が後退していると言うことができます。
ちなみに、2018年1-3月期の日本のGDP成長率は、実質-0.2%であったと前述しました。
つまり日本の景気はやや後退傾向にあるということになります。
ただし、GDPやGDP成長率の公表は四半期ごとで、2017年度の実質GDP成長率は4期すべてがプラス成長でした。
2018年に入って初めて若干のマイナス成長になりましたが、私見では、問題となるのは次の公表データであると思います。
つまり、次期のGDP成長率次第で、経済成長率が一時的に落ち込んだだけなのか、それとも今後も続く景気後退傾向となるのか分岐するのではないかと考えています。
ところで、実質GDP成長率の求め方ですが、公式で示すと以下のようになります。
実質GDP成長率=(当期実質GDP-前期実質GDP)÷前期実質GDP
例えば、前期実質GDPが500兆円で、当期実質GDPが550兆円の場合、(550兆円-500兆円)÷500兆円=0.1となり、10%のプラス成長であるということです。
逆に、当期実質GDPが500兆円で、前期実質GDPが550兆円の場合は、(500兆円-550兆円)÷550兆円=-0.09で、9%のマイナス成長となる訳です。
GDP成長率は経済状況と密接に関係している
さて、ここまでGDPとは何か、そしてGDP成長率とその求め方について述べてきました。
経済の話というとなんとなく取っつきにくく感じますが、中身は意外と単純ですよね。
一番ややこしいのはGDPそのものの集計ですが、それは内閣府の仕事です。
私たちは、公表された内容から、簡単に日本の経済状態を知ることができるのです。
例えば、前半はマイナスだったものが後半に盛り返してプラスに転じたのなら、これから期待できるかもしれないなどと予想もできますね。
また過去の例を見ると、2008年のリーマンショックの影響によって2008年10-12月期のGDP成長率は-10.2%まで落ち込み、それからしばらく低迷が続きました。
投資などの経験がある方は、当時の円高や日経平均株価の落ち込みを経験されているかもしれませんね。
その後、第2次安倍内閣が発足し、アベノミクスの効果も徐々に出始めたのか、2013年にようやくリーマンショック以前の水準に戻りました。
そして、四期連続プラス成長の2017年11月には、日経平均株価が1996年6月高値から25年ぶりに2万2,666円を上抜けました。
さらに2018年には、大手企業の夏季賞与が史上最高に達したとの報道もありましたね。
このように、経済成長率は経済状況と密接に関連していて、私たちにとっても意外と身近な情報と言えるのではないでしょうか。
GDP成長率の求め方は世界共通でランキングも
ところで日本だけではなく、世界各国もGDP成長率を公表しています。
ある経済サイトのデータが興味深い内容でしたので、少し紹介してみたいと思います。
ちなみに、GDP成長率の求め方は、前述の公式の通りで各国共通です。
皆さんは、2017年度に世界経済成長率がトップだった国はどこだと思われますか。
中国や、インドなどではなく、実はアフリカのリビアが世界1位の成長率で、なんと70.804%の経済成長を遂げています。
2位は同じエジプト地域のエチオピアで、こちらの成長率は10.861%なので、断トツの数字ですね。
では、なぜリビアが70%を超える経済成長を遂げたのかというと、実は日本では考えられない事情があったのです。
そもそもリビアは、世界第9位の原油埋蔵量(約471億バーレル)である資源大国だったのが、2011年、「アラブの春」の影響で内戦が勃発しました。
それにより、原油の生産がほぼ停止し、その年のGDPも大きく落ち込んだのです。
しかしその後、同年10月にカダフィ政権が崩壊してから徐々に石油生産量が回復し、2017年にようやく内戦前の状況に戻ったという訳です。
つまり、内戦がなければ豊かな国であったリビアのGDPが、一時期3分の1にまで落ち込み、それがV字回復したためこのような結果になったというわけです。
日本はGDP世界第3位の経済大国である
ちなみに、日本の2017年のGDP成長率は、1.713%で世界第150位、アジアでは23位という結果でした。
実はアメリカ、中国という大国に次いで、世界第3位のGDPを誇る日本ですが、発展途上国に比べてその成長率が低いのは仕方のないことです。
それだけすでに経済が発展していて、安定している証拠と言えるでしょう。
ただ、私たち庶民にも経済成長が実感できるように、今後も低いながらも上がり続けていってくれればと願っています。