ニュースや新聞では、「GDP」や「経済成長率」といった言葉が盛んに飛び交い、その国の成長率を知るためには欠かせない情報です。
また、国の経済成長率は、GDPの値から算出するため、その計算方法は非常に重要と言えます。
そこで、この記事では、経済成長率の計算方法を始め、GDPの知識について、詳しくご説明していきます。
経済成長率を計算するために!まずはGDPについておさらい
GDPや経済成長率は、その国の成長を表すもので、私達の国の成長率を知るためには、その計算方法を知っておいて損はありません。
まず、その計算方法を知る前に、GDPについておさらいしておきましょう。
そもそもGDPとは、「Gross Domestic Product」から頭文字を取ったもので、日本では「国内総生産」と言われています。
また、「主に1年を通して生産された付加価値の総額」を指し、その国が持つ経済力の規模や、景気の傾向を総合的に示す指標として用いられます。
例えば、GDPが増えれば成長率はプラスとなり、減ればマイナスとなります。
つまり、GDPの伸び率が「経済成長率」を意味しています。
したがって、国内の経済活動がどれだけ行われたのかを計算することで、経済成長率を知ることができるのです。
GDPに関わる「付加価値」とは?その意味について
前項では、経済成長率の計算に関わる、GDPの意味についてご説明してきました。
GDPは、「一定期間に国内で生み出されている付加価値の総額」と述べましたが、「付加価値」とは何かご存知でしょうか?
結論から言うと、「付加価値」とは、「生産過程において新たに付け加えられた価値」を指します。
また、「商品やサービスなどに独自に生み出された価値」とも捉えることができます。
例えば、スーパーなどで販売されている野菜は、生産者が育てて出荷し、流通経路を経て店頭に並んでいます。
この野菜の価値は、「生産者が生み出した価値」と、「流通業界が生み出した価値」を合わせた価値で、つまりは、この両者はその独自によって生み出された「付加価値」と言えます。
このように、生産過程や流通過程によって生み出された付加価値の総額が、GDPになるというわけです。
経済成長率を計算するには?実質GDPと名目GDPについて
GDPに関わる「付加価値」が分かったところで、引き続きGDPについて見ていきましょう。
ニュースや新聞で経済成長率について見ていると、「実質GDP」や「名目GDP」といった言葉が頻出し、その意味について疑問を持った方もいることでしょう。
GDPには、「実質」と「名目」の2種類があり、本質的な経済成長率を求めるためには、基本的に「実質GDP」が用いられています。
まず、名目GDPとは、一定の期間を通して国内生産された付加価値の合計額の指標を指しますが、それに対し、実質GDPは、その付加価値の総額から「物価変動の影響」を省いて計算されたものになります。
実質GDPの説明を、式に当てはめたものが以下です。
「名目GDP」-「物価変動の影響」=「実質GDP」
例えば、5年間で物価が2倍に上昇(インフレ)した場合、その間に名目GDPが2倍になったとしても、実質GDP・成長率は横ばいのままということになります。
つまり、名目成長率は以下の式で計算できます。
実質成長率+インフレ率=名目成長率
上記が、名目GDPと実質GDPの違いになります。
しかし、これだけでは理解が不十分なので、次項でより詳しくご説明していきます。
実質GDPと名目GDPの違いとは?計算して見ていこう
それでは、名目GDPと実質GDPについて、より分かりやい例を挙げながら計算してみましょう。
例えば、スーパーを起業してりんごを販売したとします。
・1年目の単価は100円:1,000個売れた
100×1,000=100,000円(売り上げ)
・2年目の単価は50円:1,500個売れた
50×1,500=75,000円(売り上げ)
では、名目・実質について、それぞれのGDPを見ていきます。
まず、1年目は、名目・実質共に売り上げは100,000円となります。
その一方で、2年目には物価変動が生じており、りんごの単価は50円値下げしています。
【名目GDP:物価反映あり】
名目GDP=50円(値下げ分)×1,500=75,000円
【実質GDP:物価反映なし】
実質GDP=100円×1,500=150,000円
以上のように、名目GDPは値下げ分を含めて計算し、実質GDPでは値下げ分を含めずに計算されています。
つまり、実質GDPは、名目GDPに対し、基準となる価格を設け、価格変動による影響を取り除くことで、GDPの変化を明確にするものなのです。
このような両者の物価変動の金額差が、経済成長率の計算に大きく関わっています。
それについて、次項で詳しく見ていきましょう。
GDPから成長経済率を算出するには?その計算方法について
経済成長率を改めて説明すると、一定の期間において、国民の経済規模が拡大する「速度」を、GDPから算出したものになります。
そこで算出した経済成長率が、その国の景気や投資判断の材料となり、一つの指標として用いられます。
では、経済成長率の計算方法を見ていきましょう。
(当期GDP-前期GDP)÷前期GDP×100=経済成長率
これを踏まえた上で、前項のりんごの例に沿って計算していきます、
・名目GDP=(75,000円-100,000円)÷100,000円×100=-25%(-0.25)
・実質GDP=(150,000円-100,000円)÷100,000円×100=50%(0.5)
これを前項に沿って、以下にまとめます。
【名目GDP】
・1年目:100円×1,000個=100,000円
・2年目:50円×1,500個=75,000円
・経済成長率:−25%
【実質GDP】
・1年目:100円×1,000個=100,000円
・2年目:100円×1,500個=150,000円
・経済成長率:50%
上記を見てみると、名目GDPでは、販売数は増加していますが、経済成長率はマイナスになっていることが分かります。
その一方で、実質GDPでは、販売数と経済成長率が共にプラスになっていることが分かります。
これはつまり、名目GDPは「金額基準」で、実質GDPは「販売数基準」として、それぞれに異なった方面から捉えられていることを意味しています。
では、このような名目GDPと実質GDPについて、どのような視点で捉えることができるのか、更に詳しく見ていきましょう。
GDP成長率のプラスだけでは景気の良し悪しは決まらない?
前項では、名目GDPと実質GDPから、それぞれに経済成長率を計算し、算出する方法についてご説明してきました。
前述の計算でも分かるように、その国の経済が実際にどのくらい成長しているのかを知る場合は、物価変動に影響される名目GDPでは判断することができないため、実質GDPが用いられます。
しかしながら、実際の私達の生活や景気に合致しているのは、名目GDPであると言えます。
そのため、実質GDPがプラスになったとしても、実際に世の中の景気が良くなっているとは、一概には言えないわけです。
また、名目GDPについても同様で、仮に名目GDPがプラスになっても、必ずしも実質的な所得増加には繋がらず、景気が良くなっているとは限りません。
したがって、名目GDPと実質GDPのいずれにしても、成長率の増減だけで判断するのではなく、実際の所得の増加や、インフレ率を同時に見ていく必要がありますね。
経済成長率を知るには名目GDPと実質GDPを知る必要がある
経済成長率を知るためには、名目GDPと実質GDPの違いを知ることが大切です。
ただ単に、GDPがプラスになったからといって、私達の生活の景気が良くなっているとは限りません。
GDPはあくまでも成長率を知るための材料であるため、実際の物価や所得など、多角的な視点で判断していく必要があります。
そうすることで、おのずと将来的な国の成長を見ることができるのです。