新規の取引先と取引を開始するようなとき、その会社の信用調査などをするかと思います。
その際、経営成績はもちろんですが、主要取引先やメインバンク、大口の株主なども分かれば、より確かな判断ができますね。
このような場合、会社の株主を調べるには、どのような方法があるのでしょうか。
また、どのような調べ方をすればよいのでしょうか。
株主とは株式会社の出資者であり議決権を持つ存在である
株主とは、端的にいえば株式会社の出資者のことです。
株主が株式をお金を出して買い、会社はそれを資本に企業活動を行っているのです。
この株主の集まりが株主総会であり、株主総会はその会社の経営を代表取締役社長などに委託しているわけです。
そして、企業活動によって出た利益の一部は、株主に配当として還元されます。
これが基本的な株式会社のシステムです。
また、この株式会社の経営方針は、毎年1回の株主総会によって決められます。
株式の所持数はこの株主総会における議決権の数であり、大株主はその会社に対して大きな発言権があるといってもよいでしょう。
つまり、株主構成を知ることは、その会社が誰の意向を反映していて、事実上どのような会社かを知るために、大切な要素なのです。
では、ある会社の株主は誰で、どの程度の株を所持しているのかという情報は、どのようにして知ることができるのでしょうか。
その調べ方は、実は株式を証券取引所に上場しているかどうかで、少し変わってきます。
株式を上場している会社の株主の調べ方
証券取引所に株式を上場している、いわゆる上場企業の場合、株主の名前を公表しています。
決算のときに、決算書類の1つとして有価証券報告書というものを作成しますが、そこに株主名や所持している株式の数なども書かれているのです。
これは、上場企業が外部に開示するために作成する書類のため、誰でも財務局や証券取引所で閲覧することができます。
また、もっと簡単な調べ方は、「会社四季報」という季刊誌から必要な情報を得る方法です。
これは、国内の上場企業を網羅し、企業の業績予想や所在地、財務情報、株主などの情報をまとめてあるものです。
株式投資家の間ではよく知られている情報誌であり、投資の情報収集にも利用されています。
いわゆる上場企業データのハンドブックといえるもので、誰でも書店で購入することができますよ。
発行は3月、6月、9月、12月の年4回です。
そして、有料ですがこちらの電子版もあり、インターネットで検索することで、さまざまな会社の最新の情報を得ることもできます。
このように、上場企業に関しては、株主の調べ方は幾通りかあります。
では、上場企業ではない、非上場の中小企業などの株主名や所持数はどは、どのようにして調べればよいのでしょうか。
非上場の会社の株主の調べ方
上場企業は、株式市場で株を多くの人に買ってもらわなければならないため、会社の情報を開示する必要があり、また義務付けられてもいます。
そのため、株主に関する情報も一般に公開されていて、どこに行けばよいか、何を見ればよいかを知っていさえすれば情報を入手できます。
しかし、非上場の中小企業などの場合、そのような義務はなく、逆に社内の情報は社外秘となっているのが普通です。
株主情報も、そのような情報の1つといえるでしょう。
ただし、会社法では、株式会社は設立時に株主名簿を作成しなければならず、内容に変更があった場合は、適宜更新しなければなりません。
これに違反すると、100万円以下の過料が課される場合もあります。
また、この名簿は基本的に企業の本店などに保管しなければなりません。
そして、株主または債権者から、正当な理由に基づく名簿の閲覧やコピーの請求があった場合、対応する義務があるのです。
つまり、株主や債権者であれば、株主情報を入手することが可能です。
しかし、そうでない場合は、どうしたらよいのでしょう。
何かほかに調べ方はあるのでしょうか。
株主以外の人が株主情報を入手することは困難である
実は非上場の会社の場合、株主情報の調べ方としては、会社に直接問い合わせるしかありません。
ただし、法律では開示義務はないので、応じてくれるかどうかは相手次第です。
場合によっては、開示を拒否されることもあるでしょう。
結論からいうと、上場企業でない場合、株主の名前や所持数について正確な情報を入手するのは困難である場合が多いということです。
ちなみに、株主に頼んで情報を閲覧してもらうことも簡単とはいえません。
なぜなら、その会社の株主や債権者は、基本的にその会社の側の人間だからです。
株主は、会社の経営が良好でなければ配当を受け取ることができませんし、株価が上がらなければ利益を得ることができません。
そのため、株を所持している会社の情報を売るようなことは、普通はしません。
例えば、ライバル関係にある競合の企業などが株主情報を入手したいといっても、協力することは考えにくいでしょう。
どうしても株主情報が知りたいのであれば、株式を購入するなどして株主となり、情報開示請求をするしか方法はありません。
ただし、証券取引所に上場していれば誰でも株式を購入することができますが、非上場の会社の場合は購入ルートがないため、これも難しいといえるでしょう。
調査機関を利用した株主情報の調べ方もある
このように、非上場の会社では、正攻法で株主情報を知ることは難しいといえます。
ただし、方法がないわけではありません。
方法としては、企業調査を得意とする興信所や探偵事務所の利用です。
このような調査機関は色々な情報網を持ち、情報の調べ方を知っています。
非上場企業の株主情報は限られた範囲とはいえ、経営陣以外にも漏れ出ている可能性はあります。
例えば、顧問税理士や経理総務担当者、その会社に貸し付けを行っている金融機関などは、株主情報を含む多くの情報を持っています。
また、社員持ち株制を導入している会社ならば、多くの社員がその気になれば情報を入手することができるでしょう。
このような方法で、株主情報を収集するのが調査機関の手法といえます。
ただし、このような調査機関に頼むと相応の費用がかかり、ただの新規取引時の調査に利用するには大掛かりかもしれませんね。
非上場企業の株主情報を正確に把握することは、かなり困難です。
しかし、1つだけ傾向としていえることは、世襲制の中小企業などでは一般的に社長や親族が過半数の株式を保有していることが多いでしょう。
なぜなら、代々社長の意向が反映されるからこそ、世襲制が維持されていると考えられるからです。
投資銘柄を決めるときは株主情報もある程度参考に
個人投資家の皆さんは、いろいろな企業情報を収集したうえで株式に投資されているかと思います。
先に述べた企業データを網羅したサイトなどもご覧になっているはずですし、独自の会社情報の調べ方をお持ちの方もいるでしょう。
その際、主に株価のデータや経営成績などを参考に購入銘柄を決めているかもしれませんが、株主名も1つの参考にはなります。
例えば、投資のプロである大手都市銀行などがかなりの割合で投資している企業であれば、ある程度安心して投資することができますね。
ただし、大株主に都市銀行や生保会社の名が連なっていても、今のご時世では絶対安心とはいえません。
例えば、赤字経営で台湾企業に事実上買収された大手家電メーカーが良い例でしょう。
粉飾決算などの場合はどうしようもないですが、企業の経営成績をデータから読み解き、将来性を見極める手腕が投資家には求められるのです。
投資の世界には「絶対はない」ということを忘れず、多方面から企業情報にアプローチすることが必要ではないでしょうか。
会社の株式上場は危険と責任を伴うものでもある
今回は、会社の株主の調べ方などについて述べてきました。
昨今、多くの企業が株式上場を目指していますが、上場するということは自社の情報を公開することです。
そして、情報の開示は非上場のこれまでと違い、ある程度の危険を伴うものであり、株主に対する責任も発生します。
企業側は、適正な情報開示と情報管理を心がけなければなりません。
そして、情報を受け取る側も、その情報の妥当性を見極める目が必要といえるでしょう。