集合生活であるアパートやマンションに住んでいると、多かれ少なかれ、お隣さん同士のトラブルはつきものです。
騒音やマナーやルールなど、借主からの苦情は、どのように対応していけば良いのでしょうか。
掲示板での掲示、手紙で促す方法など、対処法をお話します。
隣人の騒音苦情は貸主がしっかりと対応
ご近所トラブルで多いのが、お隣がうるさいなどの騒音ではないでしょうか。
日常の生活音は「お互い様」といったことで問題にならなかったとしても、真夜中に掃除機をかけたり、明らかに常識を外れているような音は、騒音になってしまいます。
こうしたトラブルは、住人に対して注意しなければいけない責任が貸主にはあり、「当人同士で解決してください」と貸主が住人にいうのは、あまりにもリスクがあります。
なぜなら、うるさいと感じる範囲は、人によって様々です。
お互い無音で生活することは難しいため、大抵の場合、売り言葉に買い言葉になり、隣人関係が悪くなってしまいます。
隣人関係が悪くなってしまうと、住み心地が良くないですから、借主の退去も考えられ、空き家になってしまい収入減につながってしまいますよね。
また、仮に苦情を言った側が退去したとしても、騒音の原因が解決しないまま放っておけば、新たな入居者とのトラブルになりかねません。
苦情の相談が来た時点で、しっかりと対処するべきです。
対処法としては、掲示板に掲示する方法と、手紙を使った対応がありますので、ご紹介していきます。
苦情になるほどの隣人の騒音とは?
人の生活音を完全に遮断することは、集合住宅では現実的に不可能です。
しかし、騒音トラブルは発生する確率が高く、貸主の頭を悩ませる問題でもあります。
通常、騒音とは、どの程度のことをいうのでしょうか。
都道府県や市が定めた近隣騒音に関する環境基準があり、40~60デシベルがひとつの基準です。
この基準を超える場合、「居住に適していない状態」=「騒音」となるのです。
だだし、時間帯や内容、頻度や環境によって、一概にも「〇〇デシベル以上だから騒音」と言えない場合もあります。
借主からの苦情の相談をされたら、確かな情報と、きちんとした調査が必要です。
騒音の実態が明確になったら、大家・不動産管理会社が、迷惑行為をやめさせる義務が生じます。
ただ、相談を受けてすぐに直接交渉は、相手を逆なでしてしまうかもしれません。
まず、入居者全員宛てに手紙を書いたり、掲示板などに掲示してみましょう。
苦情がきたら手紙の前に掲示板を活用
住人から騒音などの苦情の相談をされたら、まずはアパートやマンションにある掲示板を活用しましょう。
掲示板がなければ、入居者の目の付きやすいポスト付近に掲示してみてはいかがでしょうか。
書き方ですが、このときに注意することは、号室は特定しないで促すということです。
特定しないことで、騒音の元となる借主の配慮もできますし、入居者全員が気にかけてくれるメリットもあります。
「入居者各位」宛てにしましょう。
近隣・周囲住民の方へのご配慮のお願いとして、書きはじめます。
良好な環境に、ご協力していただいていることに感謝し、騒音の相談があった旨を伝えます。
集合住宅では、マナーの協力が不可欠であることと同時に、配慮していただくようにお願いをします。
どのようなことが騒音になるのか、具体的に例をいくつか書いておくと、入居者も理解しやすいです。
また、騒音とみなされていたことに、気が付いてくれます。
(例)
・早朝や深夜での騒音
・テレビ・オーディオなどの音量
・話し声や笑い声の音量
・扉の開閉
・足音
・渡り廊下・階段などの歩行音
最後には、住みよい環境のために、ご協力いただけるようにお願いをしましょう。
この時点で、解決すれば良いですが、そうもいかない場合もあります。
数日経過して改善しない場合は、手紙を書きましょう。
隣人から苦情がきていることを手紙を書いて投函する
掲示板で掲示したとしても、隣人の騒音が続いていて、環境が変わらないままでは、解決したとは言えません。
数日経過しても改善しない場合は、騒音元の入居者宛てに手紙を書き、ポストへ投函してみましょう。
しかし、ただ「騒音があるので気を付けてください」だけでは、「文句を言われただけ」と感じてしまう場合もあります。
そのため、苦情を手紙で書くときは、相手を配慮することも大切です。
それでは、苦情の手紙を書くときのポイントを見てみましょう。
【手紙を受け取る人への配慮】
手紙の書きはじめは、相手の配慮から書きます。
(例)
・突然のお手紙、誠に申しわけございません
・お忙しいところ、お恐れ入ります
【苦情内容と経緯】
どのような音なのか、何時頃の話なのか、現在の状況を伝えます。
また、周囲の意見も調査したうえで、周りも困っているようなら書きましょう。
(例)
・周りの方もお困りのようでしたので
・ご近所の方の意見も伺ってみたところ
苦情の手紙を出すときは相手への配慮が大切
苦情の手紙を書くときのポイントの続きです。
【相手方の気持ちに寄りそう】
まだ小さい子供のいる家庭や、深夜まで仕事をしている方もいて、家庭環境は様々です。
相手の環境に寄り添ってお願いをしてみると、「改善しよう」といった気持ちを促せますよ。
(例)
・お子さんの成長過程で、当然のことと理解しておりますが
【解決方法の提案】
騒音を出さないようにお願いするだけでは、なかなか解決できません。
もし、言える範囲内で解決方法があれば、提案もいいかもしれません。
大切なことは、こちらの言い分だけを主張しないことです。
解決方法を提案するときは、あくまでも、相手を思いやった提案をしましょう。
手紙といえども、言葉ひとつで読み手の印象が変わります。
相手方の気分を害しては、隣人トラブルは悪化してしまいます。
きちんと状況を伝えながら、相手のことを配慮しながら、うまく伝えましょう。
苦情がきていても改善しない場合
掲示板でも手紙を書いて注意してもなお、隣人の騒音が改善しない場合も、中には出てきます。
このまま放置してしまうと、入居者がどんどん減ってしまう可能性があります。
直接話し合い、理解し納得してくれれば、まだ良いですが、話し合いにもならないケースも稀に起こります。
正直、迷惑行為を全く改善しようとしない入居者に対しては、退去してもらいたいのが本音だと思います。
こうした騒音を出し続ける住人が入居しているケースでは、賃貸借契約の解除を求めることはできるのでしょうか。
賃貸借契約書を交わすときに、「賃借人は騒音などにより近隣へ迷惑をかけないように使用する」などの禁止事項を書いて契約していますよね。
また、契約条項がない場合も、近隣への迷惑行為をしないという義務も「用法遵守義務」に含まれます。
そのため、用法遵守義務を違反したとして、問題となっている住人に、賃貸借契約を解除することは可能であると考えられます。
ただ、賃貸借契約の難しいところで、契約違反があっても「信頼関係を破壊したと認めるに足りない特段の事情」の場合は、賃貸借契約の解除は難しいです。
したがって、貸主と借主の信頼関係が破壊されたかどうかが、鍵となります。
騒音の程度や、事前に苦情の注意があったにも関わらず、全く聞き入れなかったということを「信頼関係が破壊された」と判決されれば、賃貸借契約を解除することができるでしょう。
また、騒音が発生したら警察に「騒音被害に遭っている」という旨を入居者が話して、警察の介入をしてもらうのも、賃貸借契約を解除するには有効です。
不動産会社、そして警察から何度も注意されているのにもかかわらず、入居態度を改めない行為は「信頼関係が破壊された」とみなされて、契約解除の請求をすることもできる可能性があります。
しかし、むやみに警察に介入してもらうのは、対象の住人を刺激しやすく、信頼関係の破壊と判断されるのは、色々な要素が絡み合っているので、慎重に進めましょう。
円満に解決
住居を貸す立場も入居者も、騒音に限らずトラブルは避けたいものです。
しかし、世の中には色々な人がいて、考え方も様々です。
起こってしまったトラブルは放置せず、お互いしこりが残らないように、円満に解決できる方法をとりましょう。
そうはいっても、円満に解決できないケースもあります。
その際は、慎重に進めましょう。