アパートを建てるときに気にしてほしい値段とそのリスク

アパート経営は、安定した収入が得られるとして人気が高まっています。

そのためにはアパートの本体建物を建てるか購入するかが必要になりますが、気になるのは値段です。

土地の有無などによっても値段は変わりますので、今回は建物だけのおおよその値段をご紹介します。

そして、いちばん気にしてほしいのは値段だけでなくそのリスクです。

リスクについても把握しておきましょう。

どんなアパートを建てる?構造によって値段は変わる

アパート経営をするためには、アパート本体の建物が必要です。

手に入れる方法はいくつかありますが、所有もしくは購入した土地に建てるか、新築・中古物件を買うかが主な選択肢になります。

土地から買うのか、新築か中古かによってその値段は大きく変わります。

また、建築するのでもその構造によって値段にかなりの差が出ます。

ここではわかりやすくアパートの建物の値段だけをご紹介してみます。

【木造アパート】

最も坪単価が安いため、木造で建てる選択をする人が多いです。

階数は2~3階が多く、高層住宅にはあまり使われません。

坪単価は40~60万円です。

【軽量鉄骨アパート】

「s造」とも表記されます。

4階程度までのアパートに対応しています。

坪単価は木造より高く、50~80万円程度です。

【鉄筋コンクリートアパート】

鉄筋コンクリート造になると、アパートではなくマンションと呼ばれることが多いです。

アパートとマンションの違いははっきりしていませんが、鉄筋コンクリート造りで3階以上の建物がマンションと呼ばれるようです。

坪単価は高く、70万円~110万円です。

初期費用はかかりますが、建物は頑丈で耐久性が高く、修繕費用があまりかからないことが利点です。

アパートを建てるのに必要な値段

前項ではそれぞれの坪単価をご紹介しましたが、それでは具体的にアパート一棟を建てるとどのくらいの値段になるのかを考えてみます。

【木造アパート】

・50坪
(2階建て)3,000~4,000万円
(3階建て)4,000~6,000万円

・80坪
(2階建て)4,500~6,500万円
(3階建て)6,500~8,500万円

木造アパートは最も安い坪単価ですが、それでも6,000万円程度が目安になります。

これにプラスして、土地代が別にかかる場合は別に土地代が必要になります。

【軽量鉄骨アパート】

・50坪
(2階建て)3,500~5,000万円
(3階建て)4,500~7,500万円

・80坪
(2階建て)5,500~7,500万円
(3階建て)7,500~1億2,500万円

軽量鉄骨で建てるのであれば、3階~4階まで建てられます。

諸経費も含めて1億円程度は見ておきましょう。

【鉄筋コンクリートアパート】

・50坪
(2階建て)4,500~6,000万円
(3階建て)6,500~9,500万円
(5階建て)2億2,000~3億1,500万円

・80坪
(2階建て)7,500~9,500万円
(3階建て)1億500~1億4,500万円
(5階建て)3億5,000~4億9,500万円

鉄筋コンクリート造であればマンションとなりますので、5階建ての値段も目安として記載しました。

建築額の目安は2億~3億円程度です。

投資額は高額になりますが、アパートをすでに数件持ち、アパート経営を成功させている方でしたらそれを担保に建設することは可能です。

諸費用が意外な値段になることもある

アパートには、建物以外にも意外とお金がかかります。

例えば、地方自治体で定められているアパート建築に関する負担金があります。

水道負担金・下水道負担金・教育負担金などです。

これらは各自治体によって値段が変わるため、確認しておくと良いです。

また、アパートは本体を建てて完成というわけにはいきません。

土地改良工事や外構工事、駐車場敷地の整備費用などもかかります。

特に、土地改良工事は大きな値段になることが多いです。

また、既存の建物がある場合、解体するのにも解体工事費がかかります。

これも高額になることが予想されます。

さらに、登記に関する諸費用と火災保険の費用があります。

建物を建てるだけの値段に気をとられていると、意外な出費に驚くかもしれません。

アパートを建てる値段を抑えるために必須の相見積もり

これまでお伝えしてきたように、アパートを建てるためには大きな額の出費が必要であることはもちろんご承知かと思います。

少しでもその値段を抑えられたら、投資としても有利ですよね。

アパートの建築費用を抑えるために、1社の業者だけに見積もりを依頼するのではなく、複数の業者に見積もりを依頼し、比較しましょう。

いちばん安い業者を選択すれば、費用を抑えることができます。

複数の業者に見積もりを依頼することで、その値段が高いのか安いのか、妥当なのかどうかもわかります。

値段だけで決めるのもあまりよくありませんが、たくさんの情報があった方が検討する幅が広がります。

もし、複数の見積もりを出すのであれば、すべての業者に同じ条件で見積もりを依頼しましょう。

それぞれの業者に違う条件を出してしまうと、単純に見積もりの比較ができなくなってしまいます。

面倒かもしれませんが、場合によっては1,000万円単位で見積もりが変わります。

ぜひ、相見積もりは行っておきましょう。

アパート経営がはらむリスク

アパート経営は、アパートを建てれば家賃収入が入り左うちわで暮らせる、と思われるかもしれません。

しかし、空き家や家賃滞納などのリスクもはらんでおり、絶対安泰とはいえない投資です。

決して安くない値段をかけて建てるのですから、出来るだけリスクは把握しておきましょう。

良い業者であれば、リスクの話もきちんとしてくれます。

家賃収入・相続税対策・家賃保証などのメリットだけしか伝えない業者もいますが、本当に大切な部分はリスクの部分です。

メリットだけしか目に入らず、アパートを建てた後にリスクに気づいても遅いのです。

アパート経営は簡単ではありません。

特に地方はこれから人口が減少していく傾向にあります。

そうなると、アパートの入居者数も減っていきます。

その時にどのような経営戦略を立てるのか、お考えですか。

そして、建物は必ず老朽化します。

老朽化すると入居率は下がります。

その際には家賃を値下げするしかないでしょう。

アパートを建てる際に、多額のローンを組むと思いますがその金利が上昇することも考えられます。

返済額がアップする可能性も考慮しなければいけません。

アパートの資産価値も、ずっと維持できるとは限りません。

資産価値の低下が起こり、売却価格が下落するかもしれません。

リスクを回避するためには、建築エリアの選定やマーケット分析が必要なのです。

すぐに売却しようとしても売却しにくいというリスクもあります。

このようなリスクを承知で、リスクヘッジを頭に置きながらアパート経営は行わなければいけません。

家賃保証はオーナーにとっての夢のシステムではない

近年、賃貸アパートのサブリースが問題になっています。

サブリースとは、一括借り上げシステムのことです。

アパートを建てると、今度は入居者を探さなければなりません。

サブリースはその手間を管理会社が担ってくれます。

管理会社がアパート全戸を借り上げて管理し、オーナーに毎月一定額の家賃を保証するシステムです。

空き家があっても家賃が支払われるため、オーナーにとってはうれしいシステムに見えるかもしれません。

しかしこの家賃保証がクセものなのです。

サブリースの家賃保証を巡り、全国でたくさんの裁判が発生しています。

すでに社会問題化していますが、家賃保証は家賃額を保証してくれるものではありません。

つまり、家賃の金額がずっと下がらないということはないのです。

「30年保証」などと謳っている広告を目にすることもありますが、契約書には「10年を経過したら保証金額を2年ごとに改定する」と書かれていることがあります。

家賃が下げられてしまうと、家賃収入がローンの支払額を下回ってしまうこともあるのです。

契約時の説明と違う、と思われるオーナーもいるかもしれませんが、これは実際にはオーナー側が不利です。

借地借家法では、借主を保護するために「家賃の増減額請求権」という権利があります。

これによって、借主(この場合はサブリースしている管理会社)は妥当と思われる金額に減額請求訴訟が起こせます。

新築アパートの家賃と築10年アパートの家賃は同じではありませんよね。

簡単に説明すると、土地や建物の値段が上昇もしくは低下して近隣の家賃に対して不相当となった場合は、契約の条件に関わらず家賃の増減を請求することができる、と借地借家法に定められているのです。

つまり、年数が経てば家賃が下がるので、家賃保証の値段も下がるということになります。

多くの減額請求訴訟でオーナー側が負けていることを考えると、家賃保証はリスク大といわざるを得ません。

アパート経営は投資のひとつ

例えば1億円を株に投資するとしたら、とても慎重になりますよね。

アパート経営も投資のひとつなのですから、慎重に進めなければならないのは同じことです。

それはアパートを建てるところから始まっています。

慎重なおかつ大胆な姿勢が、投資では求められるのです。