法律や不動産に関わる仕事をしている人以外は、動産や不動産といった言葉について、詳しく知らない人がほとんどでしょう。
不動産は、よく見かける言葉ですが、動産という言葉もあることをご存知でしょうか。
今回は、動産と不動産とはいったい何なのか、その違いについてお話します。
不動産とはどういう意味?
資産運用や投資などを行うのであれば、動産と不動産という言葉について、知っておく必要があります。
不動産は、よく耳にしますよね。
町には、必ず不動産屋さんがあり、住宅やアパートの紹介などをしてくれます。
もうひとつ、動産という言葉があることを、知らなかったという人もいると思います。
今回のお話では、動産と不動産の違いについて、みていきましょう。
そもそも不動産とは、どういったものなのか、明確に説明するのは難しいですよね。
たいていの人が思い浮かべるのは、土地と家だと思います。
この不動産という言葉が、どのような定義であるのか、まず知っておきましょう。
不動産は、民法86条において「土地およびその定着物は、不動産とする。」と定義されています。
これがどういう意味なのかと言いますと、不動産とは、動かすことができない財産、ということになります。
そのため、土地や家はもちろん不動産ですし、土地に生えている立ち木も不動産になります。
動産とは?不動産との違い
不動産に対して、動産という言葉があります。
動産とは、つまり、動く財産のことを意味します。
先ほど、民法86条で「土地およびその定着物は、不動産とする。」と出てきましたね。
同じく民法86条で「不動産以外のものは、すべて動産とする。」とあります。
ということは、不動産以外の動かすことのできる財産は、すべて動産ということになります。
例えば、金・宝石・時計・電化製品・家具などは、すべて動産です。
銀行預金や郵便貯金は、動産とは違います。
証書や通帳自体は動産と言えますが、これを払い戻しする権利は、債権になります。
しかし、民法86条に「無記名債権は、動産とみなす。」とあります。
無記名再債権とは、映画のチケットや商品券、乗車券などを指します。
権利者の氏名が証券に書かれておらず、権利の成立・行使・存続が行われるものです。
これらは、ほとんど「もの」と変わりがないため、動産になるのです。
不動産に含まれる意外なもの
不動産と動産の違いは、お分かりいただけたでしょうか。
不動産に含まれているのは、土地や家などの建物だけではありません。
意外なものも、不動産に含まれています。
例えば、船舶です。
船舶は民法上では、土地とその定着物ではないので、動産と言えますよね。
しかし、船舶等については、財産的価値や物件の大きさが、土地や建物などの不動産に匹敵します。
そのため、通常の動産と同じ扱いでは、運用に不具合が生じてしまうことがあります。
こういったことから、20トン以上の船舶は、不動産として扱われているのです。
不動産ですので、土地や建物と同じように、登記しなければなりません。
同じように、航空機も不動産として扱われています。
航空機は、登記という言葉ではなく、登録という言葉が使われます。
これ以外にも、土地があるからこそ成り立っている、鉱業権・漁業権・採掘権・ダム使用権なども、不動産に準じた扱いになります。
そのため、漁業財団や道路交通事業財団、鉄道財団などの財団も、ひとつの不動産とみなされています。
不動産といっても、単純に土地や建物だけではなかったのです。
動産と不動産の法律的な違い
このように、動産と不動産は、その性質に大きな違いがあります。
その大きな違いのひとつが、法律的な取り扱いです。
動産は、基本的に占有によって、所有者となります。
動産の現物を持っている人が所有者、ということです。
しかし、不動産は違います。
不動産は、占有していても、所有することはできません。
登記をしなければ、所有者として認められないのです。
ですから、土地や建物を買ったときは、登記します。
そうしなければ、所有したと言えないからです。
不動産は、ほとんどのものが、簡単に手に入る値段ではありません。
きちんと登記して、所有者を明確にしておかなければ、大きなトラブルを引き起こしてしまいます。
また、不動産に絡む賃貸借に関しても、細かい規定が定められています。
これは、賃貸物件に住む人の数が多いため、契約のトラブルを防ぐ目的があります。
動産と不動産の違いはあいまいな部分もある
動産と不動産について、なんとなくお分かりになりましたでしょうか。
しかし、先ほどから登場している民法86条ですが、この86条では対処できない事例もあります。
動産なのか不動産なのか、あいまいなケースも出てきます。
例を挙げますと、建物は間違いなく不動産になりますが、建設中の建物はどうでしょう。
どの段階から不動産になるのか、判例が複数あります。
また、通常設置してある機械などは動産ですが、基礎工事で土地に固着してある機械が、不動産になるという判例もあります。
一方で、基礎にボルトなどで固定されただけでは不動産にならない、という判例もあるのです。
さらに、土地についても、不動産に入らないものがあります。
土地に定着している木や石垣は、不動産です。
しかし、土地の中にある鉱物は、不動産には入らないのです。
不動産と動産の違いは、細かく突き詰めると、難しい部分もあります。
土地の売却や、購入をお考えであれば、なおさら慎重になりましょう。
売却が成立した後に、庭に植えてあるケヤキの木を、新しい住まいに持っていくことはできません。
ケヤキの木は、土地の一部としてみなされるからです。
このように、自分では動産と思っていても、不動産であることがあります。
不動産とみなされるようなものは、契約書できちんと定義しておくことが大切です。
動産と不動産、どちらでもある自動車
自動車の扱いについては、動産なのか不動産なのか、判断に迷うことがあると思います。
自動車は、民法86条で考えれば、動産になります。
しかし、実際は動産の扱いとは違います。
不動産に準じた扱いとされています。
自動車は、不動産と同じく登録制度があるためです。
通常、動産の権利の譲渡は、動産自体の引渡になります。
しかし、自動車の譲渡は、自動車自体を引き渡しても、権利の譲渡になりません。
登録原簿への登録をして、はじめて譲渡が成立します。
ほかにも、動産では認められていない、抵当権の設定が認められています。
そのため、不動産に準じた扱いということになるのです。
また、住宅であり車両であるトレーラーハウスは、住居として使えるので、不動産になるのではと思うでしょう。
しかし、これはタイヤが付いていれば、不動産にはなりません。
ですから、建築基準法が適用されず、固定資産税や不動産取得税も掛かりません。
トレーラーハウスは、土地に定置するものであり、定着するものではないからです。
いつでも移動できる状態で、設置し続けるものです。
給排水・ガス・電気を引き込むことができますが、取り外しのできる脱着式を採用する必要があります。
このように、動産であっても、不動産扱いされるものもありますし、不動産のように見えて動産であることもあります。
知っておくと役立つ知識
動産は、一般的に使う言葉ではないので、知らなかった人も多いと思います。
不動産に興味があるのであれば、知っておいて損はないと思いますよ。
不動産というと、土地や建物しか思いつきませんよね。
日常生活の中では、その認識で間違ってはいません。
しかし、庭の木なども不動産に含まれるということなどは、知っておくとトラブルを回避できるかもしれません。