家賃収入や賃貸収入があるかたの勘定科目にスポットを当ててお話します。
個人で経営をしているのか、法人で経営しているのかでも、仕分け方法が異なります。
また、法人の場合は、家賃の収入や事業性でも違いが見られるのです。
法人よりも簡単?!個人事業主の特徴
賃貸経営を行い家賃収入を得る場合、まず個人事業主で行うのか、それとも法人にて設立するかで2つの形態で迷うところです。
概要でもお話したとおり、どちらにするかで勘定科目が異なります。
まず、個人事業主の特徴を見てみましょう。
多くのかたがメリットと考えるのは、手続きが簡単であることです。
個人事業主の開業届を提出するだけで良いのです。
厳密には、開業届を提出していなかったとしても、事業所得があれば確定申告を行わなくてはならないため、必然的に個人事業主となるのです。
確定申告では、青色申告と白色申告があり、青色申告は控除の金額が大きいため節税できる特徴がありますが、複式簿記という記帳が必要になります。
青色申告で申告したい場合は、開業届と共に青色申告承認申請書を提出しましょう。
白色申告は、控除額がありません。
しかし、簡単な単式簿記という形式での記帳なので、青色申告のように複雑ではありません。
また、個人事業主は赤字の繰越が3年までしかできません。
多額の家賃収入が見込める場合は法人?
法人の場合は、税金面でのメリットがあります。
所得税と法人税を比べるとお分かりいただけますが、法人税は累進性が低いという特徴があります。
個人事業主の場合、収入から経費を差し引いた所得すべてに所得税がかかってきますが、法人の場合は異なるのです。
一部を経営者の報酬とするため、この部分に所得税がかかり、残りに法人税が課税されます。
そして、信用の面においても個人事業主と比べると信用の度合いが高く、法人でなければ取引を行わないといった企業もあるほどです。
また、従業員を採用するときも法人のほうが良い印象があります。
赤字の繰り越し期間が長い面や、保険を経費に使用できたり、株式発行の資金調達ができたりと、メリットがたくさんあります。
ただ、赤字であっても税金が必ずかかったり、定款作成など少々面倒なことは否めません。
真剣に経営を行い、家賃収入で多額の売り上げが見込めるのであれば、法人で行うメリットはたくさんあるのです。
では、個人と法人で家賃収入の仕分けをするときや、勘定科目はどのように変わるのでしょうか。
勘定科目とは?家賃収入の仕分け方
個人で賃貸経営を行っている方と、法人で家賃経営している方とでは、勘定科目が異なります。
勘定科目とは、取引の内容につけられた名前です。
確定申告や会計ソフトを使うときにも必要になります。
個人で家賃収入は副業をしている場合ですと、原則「不動産所得」になります。
「雑収入」として一時的に仕分けをして、「事業所得」にすることもできます。
ただ、どちらにもいえることですが、会社員の給与のほかに収入が20万円を超えると、確定申告を行う義務があるのを、忘れないでくださいね。
個人事業主として不動産の経営をしている場合は、本業で家賃収入を得ていることになるため、売上となります。
法人の場合でも、本業が不動産業ならば家賃収入は売上として、本業が不動産業ではなく、ほかで収入を得ている場合は、受取家賃となります。
また、営利とは関係がない福利厚生を目的としたものは、営業外収益として雑収入になります。
このように家賃収入1つ見ても、違いがあるのです。
個人・法人に共通する勘定科目の分類
まず、勘定科目について、おおまかにお話します。
勘定科目はたくさんあるため、複雑に感じますが、大きく分類すると、次のように分けられます。
●資産
持っている以下の財産のことです。
①現金でなくても、同一の性質がある郵便為替証書や小切手なども資産になります。
②売掛金
未収入金のことを売掛金と呼びます。
また、受取手形(売り上げに基づいた手形債券)も資産となります。
③物的資産
家賃収入を得るための建物や土地、設備なども資産になります。
●負債
①借入金
銀行などから借り入れしている借金は、借入金となります。
②買掛金
物品の購入や仕入れに対して発生している未払い金も負債になります。
●純資産
資産から負債を引いたものです。
●収益
家賃収入などの売上収入です。
●費用
収益を得るためにかかった費用のことです。
資産・負債・純資産を合わせて、貸借対照表といいます。
貸借対照表は会社の財務状態がわかるのです。
これに対して収益と費用を合わせて損益計算書といって、事業年度単位の利益が分かります。
会社の一定期間の流れが把握できるのです。
個人や法人を問わず、このように分類されます。
家賃収入がある方の主な勘定科目
個人であれ法人であれ、家賃収入がある場合は勘定科目にて計上しなくてはなりません。
賃貸経営において主な科目を見てみましょう。
●水道光熱費
物件の共用部分である老化の電気代や水道代などの光熱費は、貸主が負担しなければなりません。
しかしおそらく、入居者から共益費として、家賃とは別で徴収しているでしょう。
徴収している共益費が経費共益費よりも多ければ利益になりますし、少なければ家賃から不足分を補填することになります。
個人事業者であれば、収入の金額から必要経費を引いた金額が所得になり、この所得が正しく申告できていれば良いため、難しく考える必要はありません。
●管理費
マンションなどでは、管理組合があるケースがほとんどです。
毎月の管理費を経費計上しましょう。
修繕積立金は修繕費として処理します。
積立金でもありますが、場合によっては修繕費として経費計上します。
●修繕費
入居者が退去後、部屋の傷んだ所を修繕したり、リフォームを行う場合は、修繕費になります。
あらかじめ敷金として預かっている場合は、現状回復として敷金から差し引きます。
接待交際費は個人と法人で上限額が異なる
家賃収入がある方の主な勘定科目の続きです。
●広告宣伝費
空室がある場合や退去が決まっている部屋がある場合は、次の入居者募集のためにチラシやインターネットをつかって広告を出します。
広告費用として、この科目になります。
●支払い手数料
仲介してくれた不動産会社に仲介手数料を支払った手数料の科目です。
ただし、不動産を購入した場合は、仕分け科目は異なります。
●接待交際費
経営をしていると、得意先や仕入れ先との接待も求められます。
また、贈答なども交際費として欠かせない支出になります。
法人の場合は交際費に上限が設けられていますが、個人事業主は限度額がなく、全て経費計上することができます。
しかし、何でも認められるわけではありません。
認められるのは得意先との飲食代や、そのときに利用したときのタクシー代などです。
契約を得るため、事業の関する接待は利益貢献とみなされて、交際費と認められます。
飲食代として交際費を使うときに気を付けていただきたいのは、「誰と行ったのか」です。
どこの会社の誰と行ったのかを、明確にしておく必要があります。
忘れないためにも、領収書の裏やノートなどに記載しておきましょう。
明確に説明できるものは、交際費として計上することができます。
明確にしておくことが大切
たくさんの勘定科目がありますが、大切なことは、何のために、どのようなことに使ったのかを把握しておくことです。
なかなか全てを覚えておくことは難しいですから、ノートに書いておいたり、日頃から分類する癖をつけておくことをおすすめします。