社員として働いている会社で、「役員にならないか?」と声を掛けられたら、誰でも戸惑いますよね。
その背景には、「役員がどんなものか分からない」ことがあるのではないでしょうか。
今回は、会社の役員として働くメリット・デメリットをご紹介していきます。
また、使用人兼務役員制度についてもご紹介しているので、参考にしてみてください。
会社役員とは
はじめに、「会社役員」とは、何を指すのかご紹介しましょう。
日本には、「会社法」という法律があり、そこで「役員」の定義が書かれています。
そこでは、「取締役」「会計参与」「監査役」が役員とされています。
会社法の施行規則を見てみると、上記に加えて「執行役」「理事」「監事」なども役員として含める場合があるようですが、これらは、会社法では役員ではありません。
また、「会長」「副会長」「専務」「常務」などの役職名が与えられていると、何となく役員のような印象を受けます。
しかし、これらは単なる呼称であり、役員ではない(=従業員)ので注意が必要です。
役員かそうでないかは、「取締役会に参加可能で、議決権を持っているか」という点で見分けます。
そして、役員というのは会社の経営者なので、それまでの従業員の働き方とは異なります。
ですから、従業員が役員(会社の経営者)になるには、一度退職する必要があります。
つまり、従業員ではなくなるので、従業員時代の身分などは、全て失うということです。
退職金制度のある会社ならば、退職金をもらって一度退職し、改めて役員として会社に迎えられることになりますので、この点をよく理解しておきましょう。
次項は、会社役員になるメリットをご紹介します。
会社役員になるメリットとは
では、「取締役」「会計参与」「監査役」などの会社役員になった場合、どんなメリットがあるのか見ていきましょう。
メリットとして、まず挙げられるのが、「定年がない」ということです。
従業員には、定年があるので、一定の年齢までしか働けません。
ですが、定年のない役員になれば、健康で会社に必要とされている限り、働くことができます。
また、会社という組織の中で、大きな権限が与えられる立場が役員です。
これは、会社の中で最高のポジションに就けるということなので、会社に尽くしてきた方にとっては、ひとつのステータスです。
そして、「役員報酬がある」ことも、大きなメリットですね。
先ほどもお伝えしたように、会社役員は会社の経営者なので、その手腕によっては、さらに大きな報酬を得ることも可能です。
売上を伸ばして業績を上げ、会社を大きくさせることができれば、優秀な経営者として、従業員やその業界、世間から評価されることもあるでしょう。
会社役員になるとどんな権限が与えられる?
先ほどご紹介したように、会社役員になると様々なメリットがあります。
メリットの1つに「権限が付与される」ことがありますが、実際に役員になると、以下の権限が与えられます。
<代表取締役>
・その会社の代表として発言できる
・契約書にサインするなど、他の会社との交渉ができる
<会計参与>
・計算書類を他の役員と作成する際、会計帳簿をいつでも閲覧できる
(会計がきちんと行われているかをチェックするため)
<監査役>
・取締役から、どのような事業状況か報告を受けたり、独自に調査することができる
・取締役の不正を裁判所に訴えることもできる
また、監査役は、役員がきちんと仕事をしているかを監督する立場なので、取締役会や株主総会で監査結果を報告します。
そして、日本では、長年会社に尽くした従業員の中から役員を選ぶのが一般的です。
会社役員になることにはデメリットもある
先ほど、会社役員になるメリットをご紹介しましたが、どんなことにもデメリットはあります。
ここでは、会社役員のデメリットを見ていきましょう。
はじめに、「会社役員は、従業員ではない」とお伝えしましたね。
役員は、従業員に指示を出して仕事をさせることはあっても、誰かから指示されることはありません。
そのため、役員になると、従業員時代に入れていた「労災保険」や「雇用保険」には入ることができなくなります。
なぜかというと、役員は労働基準法に定める労働者にも該当しないので、労働者に与えられているものには加入できないからです。
また、従業員ではないので、会社で何か不祥事があった場合、責任を取るという形で解任されるリスクがあります。
自分の責任ではなくても、役員としての連帯責任があるからです。
様々な権限や地位、大きな報酬を得ることが望める反面、責任の大きさや解任のリスクもあるのが、会社役員なのです。
会社役員と従業員のメリットを合わせた働き方がある
ここまで、会社役員とはどんなものか、会社役員のメリット・デメリットをお伝えしてきました。
役員は、上司の指示で働くことはないため、労災保険や雇用保険には加入できません。
従業員は、上司の指示で働く代わりに、労災保険や雇用保険に加入できます。
ですが、役員になっても、従業員時代のメリットを維持する方法があります。
それが、「使用人兼務役員制度」を使った働き方です。
この「使用人兼務役員制度」を使うことで、役員になる方の雇用保険を担保し、そのモチベーションを上げることができます。
そのため、役員になる方と会社、双方にメリットがあります。
ただし、すでに持っている肩書によっては、この制度が使えません。
「代表取締役」はもちろん、「取締役」「会計参与」「監査役」は「兼務役員」にはなれません。
ですが、「委員会を設置していない会社の取締役」であれば、指示を受けないという役員のメリットと、雇用保険に入れるという従業員のメリットを得ることができます。
経営者としての権限はありつつ、従業員の制度も利用できるのは、嬉しいですよね。
しかし、この制度が使える役員かどうかの判断は難しいので、この制度を利用したい場合には、事前に会社の顧問税理士などに確認することが必要です。
使用人兼務役員制度のメリットは他にもある!
「使用人兼務役員制度」を使うと、役員であっても雇用保険に入れるのは、先ほどお伝えした通りです。
多岐に渡る書類をハローワークに提出しなければならないので、簡単ではありませんが、それでも大きなメリットです。
では、他には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
会社には、税制上でのメリットがあります。
なぜなら、この制度を使うことで節税になるからです。
原則として、役員への報酬や賞与は、税金を計算する上で経費にはなりません。
しかし、兼務役員であれば、支給する給与の額を変更することができ、賞与についても経費にすることができるのです。
もちろん、それをするには、
・役員分の給与と使用人分の給与を区別し、税務調査で説明できるようにしておく
・賞与は、他の従業員と同じ時期に支給する
などの注意点があります。
委員会を設置していない会社の取締役の場合、従業員の業務を兼務することも多々あるので、この制度の利用を検討してみると良いでしょう。
役員になったら、会社への更なる貢献が求められる!
今回は、会社の役員になった場合のメリットやデメリットについてご紹介しました。
どんなことにも、メリット・デメリットはありますが、会社役員は誰でもなれるわけではありません。
会社を経営していくのは責任やリスクもありますが、様々な権限を与えられて、会社の方針などを決めていけるのは、大きな魅力ではないでしょうか。
また、使用人兼務役員制度は節税にも繋がるので、できるなら活用してみると良いですね。