所得税を支払う個人事業主は減価償却が強制!なぜ法人と違う

確定申告と言えば、事業をする上で最も大切なことの一つですね。

確定申告は個人の事業主と、法人では内容が異なることも多くあります。

今回は個人事業主に課せられる所得税の、特に減価償却についてフォーカスしていきます。

所得税の減価償却は、なぜ強制なのでしょうか?

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減価償却とは?所得税法・法人税法に減価償却の計算の規定がある

税務において、減価償却は大切な項目の一つです。

そもそも減価償却とはどのようなものなのでしょうか。

減価償却(減価償却費)とは、建物・車両・機械・設備などの高額なものを購入した際、その購入金額を一括で経費に計上するのではなく、分割して計上することを指します。

購入金額が高額であり、長期に渡って使用するものが対象となります。

建物や機械などは、長期に渡って使用することを前提として購入しているものであり、購入金額が高額になります。

その購入代金を一括で経費に計上してしまうと、その年の費用だけが大きくなってしまい、正しい業績を把握することが出来ません。

そこで、長期に渡って使用するものは、その費用も使用年数で分割して計上するというのが減価償却の考え方です。

減価償却する資産のことを「減価償却資産」と言います。

また、高額であっても減価償却の対象とはならないものがあります。

それが、土地・借地権・有価証券・骨董品などの価値が下がらないものです。

これらは年数の経過によって価値が下がらないため、減価償却の対象にはならず、売却や破棄されるまでその個人や会社の資産となります。

これを「非減価償却資産」と言います。

減価償却の計算方法は、事業形態によって異なります。

個人事業主の減価償却の計算については所得税法に規定があり、法人の減価償却の計算については、法人税法に規定があります。

減価償却のポイント①「金額」

非減価償却資産以外で高額であれば、全てのものが減価償却になるかというと、そうではありません。

減価償却の対象となる物は、その金額や耐用年数が細かく設定されています。

所得税を納める個人事業主の場合は、減価償却が強制ですのでしっかり覚えておきましょう。

まずは金額ですが、計上の区切りとなるのが「10万円」「20万円」「30万円」です。

①10万円未満

購入金額が10万円未満の物については減価償却しません。

通常、パソコンは4年で減価償却しますが、10万円未満のパソコンであれば「消耗品」などとして計上出来ます。

②10万円以上20万円未満

購入金額が10万円以上20万円未満の物については、減価償却は以下の3つの選択肢があります。

1.通常の減価償却
2.一括償却
3.少額減価償却資産の特例を適用

この3つの選択肢のうち、どれを当てはめて計上するかは事業主が決めることが出来ます。

③30万円未満は「少額減価償却資産」の特例を適用出来る

条件がいくつかありますが、購入金額が30万円未満の物については一括で計上することも出来ます。

以上の3つが、減価償却における金額のポイントです。

減価償却のポイント②「年数」

減価償却を適用するには、その物の耐用年数を知らなければなりません。

耐用年数とは、減価償却の対象となる資産が利用に耐えられる年数のことです。

この年数は実際の利用年数とは関係なく、その物ごとに国があらかじめ年数を定めています。

これを「法定耐用年数」と言います。

例えば、パソコンの耐用年数は4年と決まっています。

パソコンに通常の減価償却を適用する場合、毎日激しく使って3年で寿命がきてしまっても、たまにしか使わず5年使えたとしても、一旦全額を資産に計上し、4年に分割して費用に振り替えます。

主な資産の耐用年数は以下の通りです。

【耐用年数3年】

カーテン・簡易的なパーテーション

【耐用年数4年】

パソコン・自動車

【耐用年数5年】

コピー機・テレビ・応接セット・撮影機器・ソフトウェア

【耐用年数6年】

エアコン・冷蔵庫・洗濯機

【耐用年数10~15年】

簡易的でないパーテーション・内装工事・冷暖房設備

以上のようなものが耐用年数の主な項目です。

この他の物も細かく年数が定められていて、年数の設定が変更されることもありますので、国税庁のホームページをチェックしましょう。

ここまで、減価償却についてみてきましたが、所得税を納める個人事業主では減価償却は強制、法人税を納める法人では減価償却は任意となっています。

事業形態によって減価償却の扱いが変わるのはなぜなのかみていきましょう。

所得税を納める個人事業主は減価償却が強制!

個人事業主が減価償却資産を購入した場合、減価償却費を必ず経費に計上しなければなりません。

個人事業主の場合、法人税ではなく所得税を納めます。

所得の算出方法は大まかには、収入から経費と控除を引いたものとなります。

この所得に応じて所得税が決まるわけですから、所得を少なく申告出来た方が所得税を抑えることが出来ますね。

法人の場合には税金のことを考えたとき、減価償却費をある程度自由に設定することが出来ます。

しかし、個人事業主の場合には、減価償却の計算方法に定められた金額で必ず償却しなければなりません。

定められた金額で必ず償却しなければならないので、これは「強制償却」と呼ばれています。

個人事業主の場合には、減価償却費が定められていますので、その年の所得税を抑えようとしても減価償却で調節することは出来ないのです。

また、個人事業主の場合、減価償却資産の耐用年数を誤って計上してしまった場合、償却費を「更正の請求」で必ず訂正しなければなりません。

法人の場合は、この訂正も強制ではありませんが、個人事業主は必ず行わなければなりません。

減価償却に加えて、耐用年数の修正も個人事業主では強制となっているところが法人との違いです。

法人税を納める法人では減価償却が強制ではない!

個人事業主の場合、減価償却費の計算によって出された金額の償却は強制です。

そのため、所得税を減価償却費で調整するということは出来ません。

一方、法人の場合はその限りではありません。

法人の場合には、減価償却が任意となっていて、ある程度自由に減価償却費を計上することが出来ます。

法人の場合、減価償却費の計算によって出された金額を「償却限度額」とします。

この金額の範囲内であれば、減価償却費を自由に決めることが出来るのです。

例えば減価償却費を計上しないということも出来ますし、償却限度額が4万円であれば2万円だけ償却するということも出来ます。

このように、法人の場合減価償却費を任意で決めることが出来るので「任意償却」と呼ばれています。

なぜ所得税を納める個人事業主は減価償却が強制なのか?

個人事業主と法人では、減価償却の扱いに違いがあります。

では、なぜ法人では任意償却が認められていて、個人では強制償却となっているのでしょうか。

減価償却とは、年数や年度にまたがって経費を計上していく仕組みとなっています。

その計算をしていくためには、フローとストックが数年を通して矛盾のない計算体系になっているなど、秩序のある経理が必要となってきます。

法人の場合では、年度ごとに決算書が作成され、株主や課税庁に報告しているため、経理体制が確立されていると言えます。

一方、個人事業の場合では、計算書や税務申告書の作成・提出が義務でない場合もあります。

また、株主も存在しません。

そのため、個人事業の場合、法人のような経理体制が確立されているとは言えないのです。

経理体制がしっかりしてないなか、「任意償却」という形で減価償却の選択肢を増やしてしまうと、経理面での負担が大きくなったり、混乱が生じる可能性があります。

経理が混乱していれば、建物の売却時の所得税が計算出来ないという事態にもなりかねません。

個人事業主自身も、税金を管理する側にとっても、強制償却は負担と混乱を減らすための措置なのです。

減価償却は個人と法人で扱いが違う

減価償却は、事業をするにあたり頭に入れておかなければならないシステムです。

経理のあり方の前提から、個人と法人では減価償却の扱いが変わってきます。

個人事業主の場合には、必ず計算通りに減価償却しなければならないので注意が必要です。

また、減価償却を間違えた場合にも、個人事業の場合には訂正する手間がかかってしまいますので、日ごろから正確な経理を継続していきましょう。