私たちが目にする多くの土地には、それぞれに地目があります。
中でも原野は、その位置づけを詳しく知らない方も多く、あまり馴染みがない土地とも言えるでしょう。
もし、新築などの建築のために選んだ土地の地目が原野の場合、どのようなポイントに注意して建築計画を進めていったらよいのでしょうか。
今回は、考え方次第では有用ともなる原野について見ていきます。
地目選びは新築の建築にも重要
新築などを建築する際には、様々な種類の土地の中から選ぶ必要があります。
土地の種類のことを地目と呼びますが、ここではその中でも一般的と言われる地目についてご説明していきましょう。
まず、新築などの建物を建てる際に一番に思い浮かべる地目と言えば、宅地ではないでしょうか。
宅地は、他の地目と比べると形状などに目立った個性があることも少なく、建物を建築する際にも適しています。
その活用性の高さから、土地売買の際などにも値が付きやすいという特徴もありますよね。
また、特に地方などでよく見かける地目と言えば、田や畑などの農地です。
これらの農地は食糧生産にかかわっており、その存在は私たち人間にとっても重要なものと言えます。
農地は一般的に平野部に位置することが多いものですが、それよりもさらに山奥にある地目としては山林が挙げられます。
山林は、他の地目に比べ土砂災害などの被害を受ける可能性が高く、それゆえそこに建築する際には様々な規制に注意する必要があります。
山林の場所によっては、建物の建築自体が認められないこともあるため注意してください。
ここまでご説明したものは、見た目の印象と地目名が一致することがほとんどではないでしょうか。
しかし、地目の中には雑種地という地目のものもあります。
雑種地と聞いても、どのような地目であるか想像するのは難しいでしょう。
雑種地は、分かりやすく言うと他の地目の特徴を有していない地目です。
よく聞く話として、地目が原野だと思っていたものが、実は雑種地であったということもあります。
ちなみに、原野も地目の中の一つですが、ご説明したいくつかのものに比べるとあまり一般的な地目ではありません。
建築費用を抑える効果があるものも?原野などの主要ではない地目
次に、地目の中でもあまり一般的ではないものについて、いくつかご説明していきます。
まずは前項でも触れた原野ですが、見た目としては雑草やかん木などが生い茂っているのが特徴です。
どのような地目であっても、そこに人の手が何らかの形で加わっていれば、このような見た目にはなりません。
つまり、原野は人の手により雑草やかん木などの除去をされることなく、野放しにされている土地ということです。
また、新築などで土地を探している際には、墓地などが周辺にあるかどうかなども気になるものです。
墓地も地目の中の一つで、墓地が周辺にある土地の場合、比較的価格が安い傾向にあります。
墓地が周辺にあるからといって、何か問題があるわけではないと言えますが、イメージや精神面からみても避ける方が多いのもその理由の一つです。
しかし、特に墓地が周辺にあっても気にならないという方であれば、建築に関わる費用を抑えるためにもこのような土地は有用と言えます。
宅地として売られている土地の中には、農地などはもちろん、元の地目が池沼であったというものもあります。
池沼は水の貯蔵地の一つですが、その中でもかんがい目的以外のものを指します。
建築のために選んだ宅地の元の地目が池沼の場合、地盤の柔らかさなどに注意が必要です。
宅地に地目変更がされているものの多くは地盤改良が済んでいますが、それでも元が池沼であった土地は水分を多く含んでいる可能性があります。
場合によっては不同沈下などが起こることも考えられるため、購入する際にはその点も理解しておくことが大切です。
地目が農地でも原野として扱うことはできるのか
前項でもご説明した原野ですが、その特徴として雑草やかん木が生い茂っていると述べました。
しかし、地目が畑や田などの農地であっても、このような原野に近い状態のものも時折見かけます。
登記簿などで地目の確認などをしないと、一見地目が農地なのか原野なのか分からないものもあるほどです。
それには、農地所有者の高齢化など、致し方ない事情でそのような状態になっている農地もあることでしょう。
その場合、農地を原野として取り扱うことができるのでしょうか。
答えとしては、原野に近い状態の農地であっても、地目は原野ではなくあくまでも農地のままであり、原野として取り扱うことはできません。
原野の特徴の一つとして、畑や田などの農地のように作物の成長には適さないというものもあります。
つまり、見た目は同じような農地と原野であっても、その位置づけは全く違ったものということが言えます。
次項では、地目が原野の土地に建築する際に重要となる都市計画区域についてご説明します。
原野の都市計画区域は?建物の種類に限らず建築不可の場合も
建築などのために選んだ土地の地目が原野の場合、そこに建物を建築できるのかどうかが気になりますよね。
地目が原野の場合、建物を建築することはできますが、その土地がどのような都市計画区域に属しているかを確認することが大切です。
確認方法としては、その土地の管轄である市町村の都市計画課に直接確認するのがおすすめです。
電話で連絡するか、直接都市計画課に出向いて詳しく教えてもらうのも良いでしょう。
それ以外にも、ブルーマップを使って確認するのも便利です。
これらの方法で確認できる都市計画区域には、市街化区域と市街化調整区域があります。
市街化区域内にその土地が属している場合はとくに問題なないでしょう。
しかし、一方の市街化区域外に土地が属している場合にはさらに注意が必要です。
場所によっては、住宅や店舗など、建物の種類に限らず全ての建築許可が下りない場合があります。
原野から宅地への地目変更を怠るとどうなる?
原野と宅地という2つの地目を、価値の点で比べてみると宅地のほうが高いと言えます。
そのため、建築などのために選んだ土地の地目が原野の場合、宅地に地目変更せずに原野のままのほうが固定資産税が安く済むのではと思う方もいるでしょう。
しかし、地目には登記地目と課税地目があり、固定資産税の課税に関わるのはこの内の課税地目となります。
課税地目は現況で判断されるため、登記地目が原野のままであってもその土地の利用が宅地であれば、原野として課税はされないということになります。
またそのような場合、宅地ではなく宅地並みとして課税されることになるため注意が必要です。
この宅地と宅地並みは、名前は類似しているように思いますが、課税における決まりなどには大きな違いがあります。
場合によっては、宅地よりも宅地並みの方が固定資産税が高くなるケースもあるため、原野を宅地として利用する際には地目変更も行うことが必須となるでしょう。
原野から宅地へ地目変したら!地目変更登記の手続きも忘れずに
前項で述べた通り、地目が原野の土地に建築する場合、宅地へと地目変更をすることが求められます。
原野から宅地への地目変更のタイミングは、建物の建築が終わった後に行うため、忘れないようにしてください。
また不動産登記法によると、地目変更を行った際にはその日から数えて1ヵ月以内に、地目変更登記の手続きを行う必要があるとあります。
注意点として、その期間内での地目変更登記の手続きを怠った場合、過料が科せられることもあるためそれを念頭に置いておくと良いでしょう。
地目変更登記の手続きを行う対象者は、表題部所有者または所有権の登記名義人となります。
地目変更登記の手続きをもし司法書士に依頼する場合、一般的な相場として50000円ほど費用がかると言われています。
費用を抑えるために、自分で地目変更登記の手続きを行う方は、地目変更登記申請書や登記事項証明書など土地に関する資料を準備しておいてください。
地目変更登記申請書の記入欄は、法務局が提示している見本などを参考にすると良いでしょう。
一人で手続きを行うのが不安な方は、直接法務局に出向き、法務局員に確認しながら記入するのも確実性がありおすすめです。
原野は土地の購入費用に加え整備費用も念頭に
地目が原野である土地であっても立地などの条件が良い場合もあるため、新築のために土地をお探しの方は選択肢の一つとして考えるのも良いですね。
また、原野は比較的地目の中では価格が安い傾向がありますが、注意点として宅地として利用するまでに費用がかかる場合があります。
雑草やかん木の除去などを素人が行うことは難しく、それを業者に依頼するとなるとそれ相応の費用がかかるでしょう。
土地の広さなどによってもかかる費用に違いがあるため、原野の土地の購入を迷っている方は、依頼した建築業者にその点も確認することをおすすめします。