傾斜のある土地を平らにして家を建てる場合、「盛土(もりど)」と「切土(きりど)」のどちらが良いのでしょうか?
今回は、盛土と切土の違いや、その特長、注意すべき点などについて詳しく説明していきます。
また、土地の状況によってどちらがより適しているのか、見分けるコツなどもお伝えします。
それでは、早速、盛土と切土について見ていきましょう。
「盛土」と「切土」の違いとは?
傾斜のある土地を平らにする、盛土と切土ですが、大きな違いは「盛る」のか「削る」のか、ということです。
盛土は、「盛り土(もりつち)」とも呼ばれ、その名の通り、土地に「土を盛る」ことを言います。
土を盛ることで、次のようなことができます。
・傾斜のある土地を平らにする
・平らな土地に勾配をつける
・沈下する地盤を整地する
・有害物質を封じ込める
一方、切土はその土地を平らにするために「土地を削る」ことを言います。
丘陵地のように傾斜がある土地では、傾斜の上の部分を切土し、傾斜の下の部分に盛土をすることで、土地を平らにし、ひな段状にして宅地にします。
山の斜面に建っている家は、このように盛土や切土で整地をして建てられているのです。
そして、切土や盛土をし、山や丘など傾斜のある土地を宅地に変えることを「宅地造成(たくちぞうせい)」と言い、宅地造成で造られた宅地は「造成地(ぞうせいち)」と言います。
宅地造成工事規制区域内で、盛土や切土を行うときには、宅地造成等規制法に基づき、都道府県知事の許可を取らなくてはなりません。
盛土と切土の違い!「盛土」はリスクが高い!?
土を盛って整地する盛土は、切土に比べリスクが高いと言われています。
それは、地盤を削るだけの切土と違い、もとの土地の上に新しく土を盛り足すために、もともとある地盤と盛土の部分がふたつに分かれてしまい、その境がすべりやすくなるからです。
盛土部分の新しい土には、どうしても細かいすきまができてしまいます。
もちろん、「締固め(しめかため)」と言って、盛土に圧力をかけ固めますが、長い間の雨水によって少しずつ土緩まり、空洞が生じやすくなり、家を支える力が弱くなってしまう場合があるのです。
また、締固めがしっかりできていないと、盛土部分が不均質になってしまい、盛土や家の重みで「不同沈下(ふどうちんか)」と言って、程度が一定でない沈下が起きてしまいます。
さらに地震が起こると、盛土部分が滑ってしまい、建物が損壊してしまう可能性もあります。
では、なぜ、リスクの高い盛土の造成地が造られたのでしょうか。
その理由は、日本の国土は平地が全体の約3割しかなく、大半が山地というところにあります。
都市部での人口増加で、宅地として利用できる土地が不足したので、郊外の丘陵地などを宅地造成することになったのです。
「切土」は「盛土」と違い安心?
盛土と違い、切土は比較的地盤が安定していると言われています。
それは、切土は元の土地を削るだけなので、地盤そのものに影響を与えることがないからです。
例えば、丘陵地などに鉄道や道路を造るときには、切土が用いられています。
このことからも、切土のリスクが低いことがわかるでしょう。
線路や道路を通すときには、その部分だけを切土し、深く掘り下げていきます。
この連続した切土を「掘割(ほりわり)」と言います。
掘割にすることで、線路や道路は土地の勾配に影響されることなく造ることができ、また、高速道路や高架鉄道のように日陰問題や騒音問題も起きにくくなります。
ではこの切土の特長を活かした掘割式道路が、高速道路を中心に多く建設され、日照権、騒音、排気ガスの問題の解決に一役買っています。
造成地で注意したい「盛土」と「切土」
盛土と切土の違いについて見てきましたが、ここで問題になるのが、先程お話ししたような「造成地」です。
造成地の場合は、盛土と切土から成っている場合が多いので、土地を選ぶときには注意しましょう。
比較的緩やかな傾斜で、切土がほとんどの場合には、さほど問題はありません。
しかし、盛土の割合が多い場合には要注意です。
盛土をした地盤が落ち着くまでには、数年から数十年かかると言われています。
造成地の場合、盛土をして落ち着くまで、そのままにしておくことは考えられません。
盛土の割合を測る目安は、擁壁などの土留の高さでわかります。
例えば、造成地の土留が2メートル以上あれば、土留の底盤基礎の長さも2メートルほどであると考えて良いでしょう。
それは、敷地境界線から2メートル以上掘っているということなので、その部分は盛土の可能性が高くなります。
また、擁壁などの土留から1メートル以内の部分は、締固め不足になりがちなので、地盤の強度が部分的に不足することがあります。
そのような場合、豪雨や地震などが起こったときに陥没してしまったり、上の家の盛土部分が崩れてしまう可能性があるので、土地を選ぶときにはしっかり確認しましょう。
特に造成してから、あまり日数が経っていない宅地は十分に注意してください。
造成地に家を建てるときの注意点
盛土と切土が、見た目ですぐに違いがわかる場合は良いですが、盛土部分と切土部分の差がわからないこともあります。
そのような場合には、その土地の「造成計画書」を見て確認しましょう。
盛土や切土を行う際には、宅地造成等規制法に基づいて、都道府県知事の許可を取らなくてはならないとお話ししました。
そのため、どのように造成したのかは各自治体で管理しているので、心配な方は問い合わせることをおすすめします。
もし、盛土と切土のある土地に家を建てる場合には、住宅メーカーなどに相談し、その土地に合ったプランニングを提案してしてもらいましょう。
基本的には、盛土部分は沈下してしまう可能性もあるので、家を建てるのは避けて庭や駐車場などにし、切土部分に家を建てるようにしてください。
そして、地盤事故が起こりやすいのは、盛土と切土の境界付近なので、境界をまたいで家を建てることもおすすめできません。
また、盛土の下にしっかりとした地盤がある場合には、そこに杭を打つことで安定した基礎を造り、家を建てることができます。
しかし、それには地盤調査が必要になり、調査や基礎造りにはかなりコストがかかることになります。
盛土は造成地だけじゃない!埋め立て地も要注意!
これまでご紹介してきたように、切土の場合は地盤にほとんど問題はありません。
しかし、切土と違い、盛土には気を付けなければならないケースがたくさんあります。
最後に傾斜していない土地でも注意すべきことがあるのでご紹介しましょう。
「丘陵地ではないので安心」というわけではありません。
盛土が行われるのは傾斜地だけではなく、水田や湿地などの埋立てや谷埋めにも使われているのです。
特に大規模な谷埋めなどの盛土をした土地は、豪雨や大地震などで、数十戸単位で崩れてしまうことがあるので注意が必要です。
これまでの大地震の被害を見ると、年数を経た盛土でも崩れる可能性はゼロとは言えません。
盛土や切土を行うことによって、地盤に高低差が出ている造成地や、過去に埋め立てが行われた可能性のある土地を購入しようとするときには注意してください。
また、すでに周りに家が建っている場合には、近所の家の基礎部分に髪の毛よりも太いひびが入ってないかチェックしましょう。
斜めに不均等なひびが入っている場合は、地盤が下がってきているかもしれません。
家を建ててからでは、地盤はどうにもできないので、土地を選ぶ際には細心の注意を払いましょう。
家を建てるときには「盛土」と「切土」に注意
今回は、「盛土」と「切土」についてお話してきました。
「盛土」は土地を平らにするときは用いやすい工法ですが、地盤が弱くなるというデメリットがあります。
地盤の強さで言えば土地を削る「切土」が安心ですが、自分の土地が切土であっても、上に建つ家が盛土をしている場合には、災害時に崩れてくる可能性があるので注意が必要です。
家を建てるときには、その土地がどのように整備されたのか、しっかり確認しましょう。