私たちが普段使っている住所には二通りあることをご存知でしょうか。
一つは地番に基づくもの、もう一つは建物の位置を示す住居表示となっているものです。
どちらか一方が正式な住所として住民票に記載されています。
では、地番とはいったい何でしょう。
そして住居表示とはどう違うのでしょうか。
今回は住所について、地番と住居表示の違いを中心に解説してまいります。
住民票の住所は地番か住居表示のどちらか一方
その人が今現在どこに住んでいるのか、どの場所から移り住んだのか、といった「住んでいる/いた場所」についての情報が知りたいとき、必要になるのが住民票です。
引っ越しの時は必ず届を出しますよね。
この住民票に記載されているのが、正式な住所です。
普段は「○○町3-2-1」とか「○○町3の2の1」といったように「-」や「の」でつないで書いても問題ありませんが、正式な住所は「○○町3丁目2番地1」、「○○町3丁目2番1号」というように表記します。
前者の「○○町3丁目2番地1」を正しくは地番といい、後者の「○○町3丁目2番1号」を住居表示と呼びます。
住所には地番、住居表示の2種類が存在し、住民票には正式な住所としてそのどちらかが記載されているのです。
なぜ、住所には地番と住居表示の2種類が存在するのかをご説明する前に、まずは地番と住居表示の違いについてご説明いたしましょう。
住民票の住所が地番の場合
住民票の住所欄に「○○町3丁目2番地」や「○○町3丁目2番地1」「○○町3丁目2番地の1」というように、丁目の後が「○番地」もしくは「○番地○」「○番地の○」という表記になっていたら、それは住居表示ではなく地番を表しています。
地番とは簡単に言うと、土地につけられた番号のことです。
民有地のすべてに番号が割り振られており、その土地が誰の持ち物であるのかを明らかにするためです。
不動産登記で用いられることが多く、管轄するのは自治体ではなく法務局となっています。
「○番地」が地番であり、「○番地○」「○番地の○」の番地の後の数字は枝番と呼ばれ、○番地の土地が分かれたことを意味します。
たとえば「2番地1」「2番地の1」の「1」が枝番で、「の」を入れるか入れないかはその土地の風習により異なります。
住民票の住所欄に「○○町3丁目2番地」と記載されていたら、「○○町3丁目2番地」という土地の上に1軒の家が建っており、それがそのままその家の住所となっていることを意味します。
とても分かりやすくてシンプルですよね。
しかし、すべての建物がこのように地番で表された土地の上に建っているわけではありません。
たとえば同じ地番の土地の上に複数の家が建っていたり、複数の地番の土地をまたぐように大きなビルが建っていることもあるのです。
地番から住居表示が誕生した理由
たとえば「○○町3丁目2番地」という地番の土地がとても広く、この土地にAとBとCの3軒の家が建っていたらどうでしょう。
しかも、この土地の持ち主がAでもBでもCでもない別の人である場合少し複雑ですよね。
地番はもともと明治時代より住所として使われていました。
しかし、主に市街地での開発や区画整理が進むにつれ、分筆(土地を分けること)や合筆(土地を合わせること)が繰り返されて土地の地形が入り組んだり、境界が曖昧になるなどわかりづらいものとなってきました。
その結果、家を訪問したり郵便物を届けたりすることに支障をきたし、市民生活が混乱に陥るようになったのです。
そのため1962年、それまでの土地を基準にした地番から、新しく住居表示法が制定され、建物の所在を表す住所へと切り替わったのです。
現在、住民票に記載されている主に都市部での住所は、この住居表示で表されています。
「○○町3丁目2番地」の土地にAとBとCの3軒の家が建っていても、混乱なく目的の家を訪ねたり郵便物を届けたりできるのです。
住民票の住所が住居表示の場合
住所が住居表示であれば、同じ地番の土地の上に複数の家が建っていたとしても問題ありません。
土地に関係なく、建物ごとの位置が示されるからです。
たとえば住民票の住所欄に「○○町3丁目2番1号」といったように、丁目の後、「○番○号」と続けば住居表示を表しています。
「○○町3丁目」が町名で、「2番」が街区符号、「1号」が住居番号です。
「○○町3丁目」という町の中に「1番」、「2番」、「3番」…と街区があり、「2番街区」の中にある複数の建物のうちの「1号」の建物であることを示しています。
建物自体に数字が割り振られているため、郵便物もスムーズに届くのです。
また、地番が法務局の管轄であるのに比べ、住居表示は市区町村が担っています。
そのため地番は全国規模で実施されていますが、住居表示は実施されているところとされていないところがあります。
実施されていないところでは住所と地番が一致しています。
つまり、住所=地番であるところです。
住居表示が実施されているところは住所=住居表示となっており、比較的都市部に多いようです。
住所=住居表示の場合は住民票を見ても地番はわからない
住居表示が実施されていないところでは、住所で地番がわかります。
「○番地」とあったら地番ですので、住民票をとって正式な住所を調べる段階でおのずと地番もわかります。
しかし住居表示が実施されているところでは住所が地番と一致していないことが多く、地番を知りたいとき、住民票を取得しても意味がありません。
では地番を知りたいときはどうするかというと、その地方を管轄する法務局に問い合わせるのが近道です。
住所がわかるのですから、その住所から地番を調べてほしいことを伝えれば電話でも対応してくれます。
また近年はネットで地番を検索できるサービスを提供しているサイトもあります。
住所(住居表示)と地番の両方が載った、ブルーマップと呼ばれる地図をもとに作成されています。
このブルーマップは法務局にもあり、無料で閲覧できるようになっています。
しかし法務局は通常平日の17時までしかやっていませんから、いつでも自由に閲覧できるわけではないことに注意しましょう。
地番は不動産に関することで必要とされる
住民票に記載されている住所が住居表示である場合、地番はわからないことが多いです。
住所が地番と一致している場合であっても、それが地番だと意識して生活している人はほとんどいません。
そもそも普段の生活で住所は必要となっても、地番が必要になることなど滅多にありません。
あるとしたらそれは、不動産に関する事柄においてです。
土地の売買や遺産相続など土地の評価が必要な時、どこからどこまでがその人の土地なのかがわからないと困りますよね。
そこで土地を特定するために地番を知る必要が出てくるのです。
しかし正確には地番を知るだけでは不十分です。
法務局で公図と呼ばれる地番が記された土地の区割り表を取得し、前述したブルーマップと照らし合わせて土地を特定しなければなりません。
土地によってはかなり古い公図の場合があり、現在とのズレが生じている可能性があるため、注意深く照らし合わせる必要があります。
さらにその土地の所有者を調べるために、法務局で登記簿を取得します。
こうして、誰の土地か、どこからどこまでがその人の土地なのかを明らかにするのです。
法務局には測量図など他にも登記された民有地に関する情報が記された書類がありますので、必要に応じて取得します。
このように地番、および土地に関する事柄を知りたいときは、普段ほとんどかかわりあうことがないため大変面倒に感じるものです。
万が一不明点などがあれば、法務局の職員もしくは不動産業者に訊ねてみるといいでしょう。
住所が地番と一致しているか、住居表示となっているか
住所には二通りあり、地番と一致するタイプか、住居表示タイプか、そのどちらかが正式な住所となっており、住民票に記載されています。
住居表示が住所となっている場合は地番と一致していないことが多く、地番を知りたければ住民票を取り寄せるのではなく、法務局に問い合わせる必要があります。
馴染みがない分面倒に感じられるので、専門家である法務局や不動産業者に訊ねてみるといいでしょう。