二世帯住宅の完全分離型であっても後悔しないためには?

二世帯住宅を建てるなら、親世帯と子世帯の住まいが100%別々の完全分離型がいいと考えているかたもいるのではないでしょうか。

しかし、完全分離型にしたにもかかわらず後悔しているかたがいるのです。

なぜ、どういった点で後悔しているのでしょうか。

その失敗のおおもとを探り、対策をご紹介してまいります。

今後の計画のご参考になれば幸いです。

完全分離型二世帯住宅でも後悔する5つのパターンとは?

二世帯住宅は同居と違い、親世帯と子世帯それぞれの住空間は基本的に別々です。

しかし、それでもひとつ屋根の下で暮らすことには変わりありません。

そのため「一緒に住まなきゃよかった…」と後悔するかたがいます。

特に、それまでは子世帯のみで暮らしてきたかたが、古くなった実家の建て替えを機に二世帯住宅として親世帯と一緒に暮らし始めると、後悔することが多いようです。

互いに、それまでは気づかなかった点に気づいてしまうからなのでしょう。

それは、二世帯の住まいを全く別にする完全分離型であっても起こり、後悔するのはだいたい次のようなことです。

①共用の場所がある

②間取り

③広さ

④費用

⑤生活の違いで

では、どのような点で不満が生まれるのか、次項より順次具体的にご紹介してまいりましょう。

完全分離型二世帯住宅でも共用スペースで起こる後悔とは?

二世帯住宅で親世帯と子世帯の住空間を100%別にする完全分離型にすると、1軒の家の中に2軒の家が入っているようなものなので、その分コストがかかります。

費用を少しでも抑えるため、もしくは既にある実家の敷地面積の関係上、親世帯と子世帯が共用で使うスペースを作らざるを得ない場合があります。

どこを共用とするかで、さまざまな問題が生まれてしまうようです。

①玄関が共用

・夜遅くの帰宅や外出に気を遣う

・下駄箱を親世帯か子世帯のどちらかが占拠、もしくは占拠しているのではないかと気を遣う

・友達を呼びにくい

②リビングが共用

・友達を呼べない

・心の底からくつろげない

・見たいテレビが見られない

③キッチンが共有

・冷蔵庫が共有だと買ってきたものが入らないことがある

・どちらかの世帯にサイズを合わせると、もう片方の世帯には合わない

・一人で使う時には広すぎて、かえって使いづらい

④お風呂が共有

・夜遅くの入浴がしづらい

・義父母の後に入りたくない

・間違えて義父母が入ってきた

このような問題が生じるため、後悔しないためにも玄関・リビング・キッチン・お風呂場、そしてトイレは全部別々のほうが良いといえます。

親世帯・子世帯で、微妙にスタイルが異なるからです。

日々の生活の中で培われていくこうした微細な「我が家のルール」のようなものは、変えようとしてもなかなか変えられず、相手に無理に合わせようとするとかえってストレスになります。

敷地面積の関係上、避けられない場合もありますが、費用の問題であるなら、たとえお金がかかってでも別々のほうがいいでしょう。

完全分離型二世帯住宅は間取りに気を付けないと後悔する!

共有スペースのない完全分離型の二世帯住宅であっても、間取りに注意しないと下記のような問題が生じ、後悔するようです。

・2階の子世帯の配水管が1階の親世帯の寝室付近にあるため、水を流す音がうるさいといわれる。

・子世帯の寝室の真下が親世帯の寝室なので、いろいろと「音」に気遣いしてしまう。

・階段を下りる音がうるさい。

・2階の子世帯の床を歩く音がドタドタしてうるさい。

間取りに関しては特に、2階の子世帯の「音」が、1階の親世帯にうるさく感じられてしまう点に気を付けないといけません。

それを防ぐには床にALCコンクリートを使うと、ある程度の防音効果が期待できます。

または1階=親世帯、2階=子世帯と分けるのではなく、縦に割った二世帯住宅にする方法もあります。

ただし、建築のコストは当然ながら上がります。

しかも親世帯が老齢となり、足腰が弱ってくると問題です。

階段の上り下りができなくなるからです。

二世帯住宅における親世帯の後悔の多くは、バリアフリーにしておかなかった点ですから、階段は慎重に考えないといけません。

家を建てた当初は良くても、徐々に老います。

介護の問題も生じるかもしれません。

その時になって後悔しないためにも、親世帯に不必要な段差はないか、風呂場に手すりはあるかなど、設計段階から考えておいたほうがいいでしょう。

住んで初めてわかる完全分離型二世帯住宅の後悔は狭さ!

完全分離型の二世帯住宅に住んでみて初めてわかることのひとつに、家の狭さがあります。

計画段階では気づかないのですが、もともと1軒の家を2つに分けているのですから、狭く感じられて当然なのです。

しかも親世帯は2人なのに対し、子世帯は孫がいることがほとんどのため、人数は多くなります。

それなのに同じ広さだと、後悔どころかちょっと腹が立ってしまいますよね。

限られたスペースを有効に使うためにも、収納は多くとっておいたほうがいいでしょう。

ウォークインクローゼットや棚など、設計段階からよく考え、多めにとるようにしてください。

また駐車場についても設計段階から検討が必要です。

特に親世帯・子世帯別々に車を所有している場合、どのような駐車形態にするか考えましょう。

前の車を出さないともう一方の車が出ない形にすると、出かけるときも帰ってきた時も大変です。

スペースの問題があるため難しいかもしれませんが、前後には置かないほうがいいでしょう。

後悔しないためにも完全分離型二世帯住宅の費用は子世帯負担がおすすめ!

二世帯住宅は、通常の住宅の約1.6倍も費用が高いといいます。

1軒の家の中に2軒分の家がある完全分離型ではなおさらです。

しかし相続の際の評価額が80%減免されるうえ固定資産税も抑えられるため、親世帯の家の建て替えと子世帯の家を新築するよりはと、二世帯住宅を選ぶかたが増えています。

その際、親世帯と費用を折半したり、頭金や外構代などを払ってもらうなど、親世帯からの経済的な援助を当てにして作ると、結果的に後悔するようです。

なぜならもともとが実家であるうえに、費用も親世帯が支払ったとなると、親はますます「この家は自分のもの」という意識が強くなるからです。

子世帯の暮らしぶりに口を差しはさむ余地が生まれてきます。

それを煩わしく思うのなら、お金がかかっても初めから費用は全額子世帯が受け持つことをおすすめします。

ローンが大変になりますが、人生に一度きりのことです。

後々「これは必要な投資だった」と思えるようになるかもしれません。

最近増えているのが、せっかく二世帯住宅を建てたのに、親世帯との折り合いが悪くなって結局子世帯が出ていってしまうことだそうです。

そうなればローンは残り、新居の費用も掛かるなど大変ですよね。

子世帯がすべての費用を担えば、親世帯との折り合いが悪くなったとしても簡単には出ていけません。

また、「全額支払ったのだから自分の家」という意識が生まれるため、親世帯との関係性も変わります。

完全分離型二世帯住宅成功の秘訣は、互いに干渉せず依存せず

完全分離型の二世帯住宅であっても、たとえば以下のような事柄がたびたび起きると、一緒に暮らしだしたことを後悔しがちです。

・親世帯が子世帯の生活に口を差しはさむ

・生活時間帯が親世帯と子世帯で大きく異なるため気を遣ってしまう

・親世帯が孫におやつを勝手に与えたり、しつけに関与する

・義母が子世帯の洗濯物を勝手に取り込んだり、部屋を掃除したりする

・子世帯は気軽に友達を家に呼べない

・光熱費を親世帯が支払う

決して悪気があってやっていることではないとわかっていても、子世帯からすると親世帯が自分たちの生活領域に入り込んできていると感じてしまい、うんざりするようです。

それが頻繁にあるとやがてトラブルへとつながるため、住み始めたことを後悔するのです。

では、どうすればこうした事態を防げるのでしょうか。

①子世帯が費用を全額支払う

上述したように子世帯が全額費用負担すると気分的にも優位に立て、親世帯に対する気兼ねがなくなります。

してもらいたくないことがったら、きちんと伝えて問題ないでしょう。

②設計段階から親世帯・子世帯別々に業者と打ち合わせる機会を作る

特に親世帯に、自分たちの生活領域について明確にわかってもらうためにも必要です。

③子世帯と親世帯との間に鍵付きの内扉を付ける

扉1枚で別の世帯の家であることをしっかり認識するために必要です。

現在、二世帯住宅で後悔されているかたの多くが、この扉を付けなかったことを失敗だったと言っています。

「親世帯は子世帯に干渉しない、子世帯は親世帯に依存しない」を肝に銘じ、適度な距離間を保ちつつ、心地よい生活を送りたいですね。

二世帯住宅で後悔しないためには別の世帯であることを肝に命じよう

完全分離型二世帯住宅でも共用の場所、間取り、広さ、費用、生活の違いなどで後悔することが多いようです。

後で後悔しないためには、設計段階で必要なものとそうでないものを考えることも大切です。

また、お互い心地よく過ごすためにも別の世帯であることを肝に命じましょう。