会社は、多くの取引先や社員の連絡先を保有しています。
社員の自宅住所や電話番号、緊急連絡先に加え、取引先の方のメールアドレスなどを聞くことも多いですよね。
これらの情報は「個人情報」といわれ、厳格に管理すべき情報です。
しかし、応募時に提出した書類に記載されている情報はどう管理されているのでしょうか?
今回は、個人情報を提出したり管理する際の注意点を見ていきます。
就活で受ける会社に連絡先として情報を提出しても大丈夫?
多くの会社は、取引先や社員から一定の目的のため、アドレス帳などの一覧をデータベース化して管理しています。
また、社員を雇用する時にも、口頭で聞くことはしないと思いますが、履歴書やエントリーシートに住所、氏名、連絡先、学歴などを記載したものを取得しています。
採用する立場にしてみれば、採用の採否を連絡するために必要な情報ですが、エントリーした全ての人のデータを毎年積み重ねていると、相当な数になるでしょう。
2003年に「個人情報保護法」が成立し、厚労省が「雇用管理に関する個人情報確保のための指針」を出しました。
この指針によると、会社は、個人の情報を安全に管理するための責任者を選任し、社員が第三者に個人情報を漏洩することがないようにすることや、不正利用しないことを努力義務として定めています。
そのため、会社が聞く連絡先は、通常、社内の人事部署以外に広がることはありません。
もし他の部署まで広まっていたとしても、業務上必要と考え、適切に管理されていると考えて良いでしょう。
しかし、業務上必要でないのに、それらの情報を誰でも知ることができる場合は問題です。
人事情報の管理が甘いと感じた場合には、厳格な管理を申し出ることをおすすめします。
会社が聞く応募者の連絡先、その情報はどうなる?
会社の採用試験では、氏名、生年月日、連絡先、学歴や家族関係など、たくさんの個人情報を書いた書類を提出します。
しかし、結果が不採用だったとしたら、個人情報が知られているのでとても心配になりますね。
会社が採用試験の際に聞く個人情報は、あらかじめ「返却しない」と応募者に伝えられることもあります。
また、返却を申し出たとしても、断る会社もあります。
おそらく、その理由としては、
①法的に返却義務がない
②返却に手間がかかる
③郵便費用を節約したい
といったことが考えられます。
受けた会社が書類を返却しない会社だった場合は、「書類は、責任を持って廃棄してくれているはず」と信じるしかありません。
一方、不採用の場合、その通知と共に履歴書などを返送する会社もあります。
そのような対応ができる会社は、個人情報保護の意識が高く、良い会社と言えるのではないでしょうか。
残念ながら不採用になってしまったとしても、管理不要な個人情報をいつまでも持つ会社でなかったことは、安心ですね。
会社で顧客や社員に聞く連絡先は全て「個人情報」に該当する?
そもそも、「個人情報」とは何の情報なのでしょう。
会社で業務上の必要性から、顧客や社員に聞く連絡先などは、「個人情報」と言われています。
「個人情報」は、「生存する個人に関する情報」で、氏名と紐づけた個人の情報です。
例えば、「田中」という名字だけでは個人が特定できないので個人情報ではありません。
しかし、下の名前、年齢、住所などの連絡先が紐付くと、個人が特定できる情報となり、「個人情報」に該当します。
また、氏名と紐付ける情報には、単に連絡先だけでなく、顔写真やメールアドレス等、たくさんあるので気をつけてください。
以前は、過去6ヶ月において取り扱う個人情報が5000件を超えなければ、その会社は「個人情報取扱事業者」ではありませんでしたが、2017年5月30日から全面施行された内容では、その要件が撤廃されました。
ただし、次に掲げる者は除かれます。
・国の機関
・地方公共団体
・独立行政法人等
・その取り扱う個人情報の量及び利用方法からみて、個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定める者
そして、個人情報を保有する事業者には、次のような義務が課せられています。
・利用目的をできる限り特定し、目的の範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。
・利用目的を通知・公表する。
・本人から直接書面で個人情報を取得する場合は、事前に本人に利用目的を明示する。
・個人情報を安全に管理し、従業員や委託先も監督する。
・本人の同意を得ずに第三者に個人データを提供してはならない。
・事業者が保有する個人情報に関し、本人からの求めがあった場合は、開示を行う。
・事業者が保有する個人情報の内容が誤りであるため、本人から訂正や削除等を求められた場合は応じなければならない。
・個人情報の取扱いに関する苦情を、適切かつ迅速に処理しなければならない。
マンションの管理組合が住民に聞く連絡先も「個人情報」
会社の事業のために、顧客や取引先から連絡先を聞くのは当たり前です。
そして、その情報は、パソコンなどでデータベース化し、効率よく事務を取り運ぶために、社員で共有する時代です。
ここで、会社組織でなくとも「個人情報取扱事業者」になるという事例をご紹介します。
それは、「マンション管理組合」です。
2017年5月30日に改正個人情報保護法が全面施行され、マンション管理組合も「個人情報取扱事業者」に当たるとなりました。
マンションの管理組合には、所有者・入居者のさまざまな個人情報が集まります。
管理組合によって多少の違いはあるかもしれませんが、緊急時の連絡先を記載した組合員名簿や子供会などの名簿、駐車場の利用者名簿等があれば、これらは個人情報に該当する内容となっているはずです。
日本マンション管理士会連合会(日管連)の資料によると、マンションの管理組合が個人情報を集めたり、保管したりするときの基本ルールを4つ紹介しています。
その内容が以下になります。
1.取得・利用のルール
2.保管のルール
3.第三者への提供
4.個人情報の開示や訂正
これらは、「個人情報取扱事業者」へ課せられている義務と変わりません。
こうして、多くの個人情報が守られているのですね。
個人情報が流出したら、会社は倒産!命の危機も!
他人の氏名や住所を聞くことは、個人情報の流出リスクを同時に背負っていると言っても過言ではありません。
最近も、日本年金機構が委託した会社が、多くの個人情報データを中国の業者に流出させる事件がありました。
このような国民の生活が脅かされる事態に発展すれば、倒産の危機になる可能性もあります。
また、ストーカー被害に遭った女性が被害届を出したあと、自宅の場所を加害者に知られ、亡くなった事件がありました。
このような事態は、本人だけでなく、周囲にも計り知れない深い傷を与えます。
他にも、インターネットに接続しているパソコンがウィルスに感染して、顧客の氏名、連絡先などの情報が流出した例があります。
これらの世間を騒がせた事件は、自分がどんなに意識して管理を徹底しても、それらの情報を扱う全ての人が意識していなければ意味がないことを浮き彫りにしたものです。
たとえ悪気はなくても、その情報を入手した人が、自分の知らないところでどのような扱い方をするのかまではわかりません。
仕事とはいえ、簡単に相手の連絡先を聞くことはこれらのリスクを伴います。
一方、プライベートで他人の連絡先を聞く場合にも、流出させたら悪用されることを意識して、しっかり管理することが必要です。
「個人情報」を守るには、SNSで連絡先や会社名は名乗らない
少し前までなら、「個人情報」という言葉はあまり身近ではなく、本人に直接聞くことができない連絡先でも、友達に聞くと教えてもらえるという時代でした。
もちろんその頃から快く思わないケースもありましたが、法律がないから「違法だ!!」と騒ぐこともできませんでした。
今の時代は、「個人情報」への理解が進み、社会経験の浅い人でも他人の連絡先を本人の同意なく聞くことは良くないとわかりつつあります。
しかし、いくら法律を整備しても、悪用したり、認識できない人がいることも事実で、トラブルもあとを絶ちません。
個人の情報は、大切な財産でもありますから、情報を扱う側だけが意識するものではありません。
うっかり自分の情報を流出させないように、自分自身で工夫をしなくてはならないのです。
例えば、SNSを利用して、自分のフルネーム、写真を載せていることもあるでしょう。
SNSは便利ですが、利用方法を間違えると自分の名前、連絡先、住所を世の中に名乗っているのと同じです。
自分の職場で写真を撮ったり、仕事の内容を書いてしまうと、会社が特定され、守秘義務違反になる可能性があるだけでなく、会社の存続が問われることにも繋がるので注意が必要です。
自分の情報を守ることが、情報管理の最優先
人間関係をスムースにするために、名前、学校名、会社名や連絡先を聞くことはとても必要なことです。
しかし、これらの「個人情報」は、すぐに悪用され、犯罪に発展することもあります。
一旦、漏えいした「個人情報」は簡単に消せないので、他人や法の力を頼るのでなく、自らが意識して守らなくてはならない時代と言えるでしょう。
「個人情報」の保護は、まず、自分の情報を守ることから始めましょう。