簿記の基本を学ぶ~「現金」と「当座預金」の違いとは~

企業では日々取引が行われています。

今回は、企業会計の基本である簿記の全体像についてご説明します。

そして、簿記の基本である「現金」と「当座預金」。

こちらの理解は会計の基本であり、簿記検定試験3級から問われる内容になります。

また、3級のみならず、学習をする上で今後も関係してくる内容なので、「現金」及び「当座預金」については深く掘り下げていきます。

簿記とは?~現金や当座預金はどのように日々の取引と関係するか~

企業は毎日商品を販売し、利益を上げます。

物を販売するためには当然「仕入れ」をして、販売する資源を確保する必要があります。

そしてその資源の確保の方法にも、様々な方法があります(そこで、簿記の基本である「現金」「当座預金」が関係してきますが、後に詳しく記載します)。

上記の流れを別の側面から見ると、物を「仕入れ」、「売上」を上げるためには人材が必要であり、さらにその人材に給料を支払う必要があります。

また、仕入れた物を売る為には、ネット販売であるなら倉庫が必要ですし、店を構えて販売するのであれば店舗の家賃が必要になることもあります。

他にも、光熱費や、通信費といった費用等、様々なお金の動きがあります。

それらのお金の計算や流れを明確にするのが、簿記の役目であり、そこに「現金」や「当座預金」で行った取引があれば、それらを明確化する必要があります。

簿記のおおまかな流れ~現金と当座預金等、取引を記入する目的~

ここでは、簿記の流れについて学んでいきます。

上記で説明したように、日々取引は発生し、物を売り続けて利益を上げ続けるのが企業の役目です。

では、日々行うべき作業を確認しましょう。

まず、7月1日に物が売れたとします。

その際には「仕訳」を行い、各帳簿に記入します。

ここで「現金」及び「当座預金」という言葉が関係します。

そして仕分けたものを「総勘定元帳」に転記します。

ここまでが毎日行うべき作業となります。

そして、企業には「決算」がありますが、ここでは日々の記録を基に、貸借対照表や損益計算書を作成し、公に1年間のお金の流れを報告します。

貸借対照表は企業の財務状態を表し、決算時点での資産の状況を示します。

損益計算書は企業の項目ごとの収支を表し、経営の成績をまとめたものになります。

簿記の最終的な目標は、ここにあります。

この最終目標にたどり着くために、「現金」や「当座預金」で行った日々の取引を正確に残しておく必要があるのです。

簿記における「仕訳」とは~現金と当座預金取引の区別をする~

先ほど、「企業では日々取引が発生し、そのたびに「仕訳」を行う必要がある」と述べました。

ここでは、簿記における「仕訳」とは何かをご説明します。

「仕訳」とは、用語と金額のみで取引関係を表記したものになり、この際に使用する用語の事を「勘定科目」と言います。

例えば、A商品(単価10円)を100個現金で販売したとします。

その場合、下記の仕訳および勘定科目となります。

【現金 1,000/売上 1,000】

なんとなく、「物が1,000円分売れ、現金が1,000円増えた」ということは理解できると思います。

では、「現金」の定義を確認しましょう。

現金=「紙幣や硬貨等」を表します。

このように、仕訳では勘定科目の定義をしっかりと理解し、区別する必要があります。

他にも下記のようなものがあります。

・商 品=販売目的で所有する物

・貸付金=お金を貸し付け後、返してもらう金銭

・建 物=店舗や倉庫

・土 地=店舗や倉庫の土地および駐車場など

勘定科目はこのように細分化されているので、正確な科目選択を行うことが重要です。

当座預金については、後に詳しく解説を行います。

現金と当座預金の仕訳~左右どちらに記載をしたらよいか~

では、現金と当座預金の仕訳はどのように行うのでしょうか。

基本的に左右、どちらかの欄に記入しますが、左側に書く場合もあれば、右側に書く場合もあります。

つまり、左右どちらに書くかは、勘定科目によって異なるということです。

先ほどの【現金 1,000/売上 1,000】の例で考えてみましょう。

真ん中で区切られているのが分かりますが、簿記には、左右の振り分けのルールが存在します。

左側を「借方」(かりかた)、右側を「貸方」(かしかた)と言います。

上記の例で言うと、物を売ったことで1,000円の現金が手元に増えたと言えます。

つまり、増えた物を左側に記載するというルールが簿記にはあり、これが簿記を学ぶ上で最初は理解しがたい点です。

こちらについては、とにかく仕訳を繰り返し行うことが理解への早道です。

簿記を学ぶ上で仕訳は必ず行いますので、理解が出来るようにしておきましょう。

また、今回は現金取引で例を示しましたが、当座預金の関係する取引であれば、当座預金という勘定科目を使用することになります。

こちらも現金同様、取引内容によって、「借方」、「貸方」どちらにも記載される可能性があります。

簿記における現金とは~当座預金取引との違い~

では、現金取引について、当座預金に先立ちご説明します。

最初に現金の定義を再確認します。

現金=「紙幣や硬貨等」

また、掘り下げると、簿記では金融機関にてすぐに現金化出来る「通貨代用証券」も現金の扱いとなります。

【通貨代用証券の例】

・他人振出の小切手
・送金小切手
・郵便為替証書
・配当金領収証
・期限到来後の公社債(国債や社債等)の利札

つまり、紙幣や硬貨を用いた取引及び、上記で示した通貨代用証券が関係する取引で「現金」が使用されることになります。

以下に例を示します。

例:A会社に商品を100円分売上、代金は現金で受け取った。

この場合の仕訳は【現金 100/売上 100】となります。

そして日々取引を行うと、帳簿と実際の現金在高に差異が生まれてしまうことがあります。

実際の帳簿残高と実際在高に不一致が生じたときは、現金の帳簿残高を実際在高に合わせる作業が簿記では必要となります。

・帳簿残高>実際在高の場合

例:現金の帳簿残高が500円のところ、実際在高は400円であった。

仕訳は、【現金過不足 100/現金 100】となります。

ここでもし、実際の帳簿が100円多いという誤った仕訳を行っていたことが判明した場合には、資産(左側)から、現金を100円分減少させる必要があります。

・帳簿残高<実際在高の場合

例:現金の帳簿残高が500円のところ、実際在高は600円であった。

仕訳は、【現金 100/現金過不足 100】です。

先ほどとは逆で、実際の帳簿が100円少ないという誤った仕訳を行っていた場合には、資産(左側)に現金を100円分を増加させる必要があります。

では、現金過不足の原因が判明した場合の仕訳を行います。

・帳簿残高>実際在高の場合(現金過不足が借方の場合)

例:現金の不足額100円分を現金過不足勘定の借方に記載していたが、この内50円分が電話代の計上漏れであることが判明した。

仕訳は、【通信費 50/現金過不足 50】となります。

借方に計上されている現金過不足を減らし、相手科目として該当する勘定科目で処理します。

・帳簿残高<実際在高の場合(現金過不足が貸方の場合)

例:現金の過剰額100円を現金過不足勘定の貸方に記入していたが、このうち50円は売掛金の回収額であることが判明した。

仕訳は、【現金過不足 50/売掛金 50】です。

※売掛金とは掛け取引を指します。

掛け取引とは、商品の代金を後日支払ったり、受け取ったりすることを約束し、商品の仕入れや販売をすることを言います。

そして、商品の販売額をあとで回収する権利を「売掛金」と言います。

貸方に計上されている現金過不足を減らし、相手科目として該当する勘定科目で処理します。

ここまでが主な現金取引です。

最もポピュラーで、基本中の基本の仕訳とも言えますので、確実に理解するようにしてください。

簿記における当座預金とは~現金取引との違い~

現金の説明については前述の通りですが、簿記の勘定科目で現金に似たものとして当座預金があります。

当座預金とは、預金口座の1つですが、預金を引き出すときに小切手を用いること、また、利息が付かないという点が特徴的な預金となります。

私たちが通常使用する個人用の預金が普通預金であるのに対し、商売用の預金が当座預金と考えると理解しやすいと思います。

商売を行っていると、当然日々多くの取引が発生し、金額も大きくなります。

それらの取引を常に現金で行うのは現実的ではない上、盗難や紛失などのリスクも伴います。

しかし、当座預金口座を使用すれば、小切手を振り出すだけで支払いが出来るので安全です。

補足ですが、当座預金は商売用であることから、預金利息がつきません。

また、残高が0円でも小切手を振り出すことが出来る(契約が必要)という点が特徴です。

では、小切手の流れを下記に説明します。

①A会社がX銀行にお金を預ける

②X銀行がA会社に小切手帳を出す

③A会社から、B会社に小切手を譲渡する

④B会社が受け取った小切手をY銀行に持って行く

⑤Y銀行から小切手に記載の金額を受け取る

以上が流れとなります。

では、仕訳を見ていきます。

例:A会社はX銀行と当座取引契約を結び、当座預金に100円を預け入れた。

仕訳【当座預金 100/現金 100】

当座預金が増えたことから、左側が当座預金という勘定科目になります。

例:小切手を振り出したとき

A会社はB会社に対する買掛金200円を支払うため、小切手を振り出した。

仕訳【買掛金 200/当座預金 200】

基本的な当座預金の仕訳は、以上となります。

社会人としての簿記の理解を!

企業では、必ず日々何らかの取引が発生しています。

簿記は単なる資格試験の為ではなく、日常で役立つ知識にもなるのが利点です。

最初は複雑で、中々理解するのが難しいと感じますが、慣れればすんなりと理解出来るようになってきます。

今回記載した「現金」と「当座預金」は、しっかりと最初に理解する必要のある基本的な内容です。

是非、簿記の勉強にチャレンジし、社会人としての知識を磨かれてはいかがでしょうか。