アパートの契約書を入居予定者に郵送して、「届いていない」「個人情報の取扱いが不適切だ」と言われてしまったらどうしますか?
アパート経営に限らず、情報管理に不信感を持たれると事業の運営は難しくなります。
個人情報の観点からアパートの契約書の取扱いについて解説します。
副業のアパート経営で気をつけることは
アパート経営がサラリーマンの副業として注目されています。
今の時代、「会社はいつまでも安泰」という保証はどこにもありません。
収入がいつ途絶えるかわからない不安を抱え、将来の年金も十分な額が期待できない中、副業で将来に備えようとすることは、サラリーマンからすれば、自衛の手段として当然の選択かもしれません。
アパート経営に特別な資格は必要ありませんから、管理を専門会社に委託すれば、サラリーマンでも副業は十分に可能です。
アパート経営で成功するポイントは物件選びとよく言われますが、契約書などの情報管理が適切にできる管理専門会社を選ぶことも重要なポイントです。
個人情報保護法ができてから、自分の個人情報の取扱いに慎重な入居者が増えています。
契約書の郵送の仕方がトラブルになる例も実際に起きているのです。
アパートの管理を委託する専門会社を選ぶときは、実際に会社を訪問して、情報管理を適切に行える会社かどうか、しっかりと見極めるべきでしょう。
契約書で気をつけたい収入印紙とは
アパートを所有するときに必要になる書類には、次のようなものがあります。
・不動産売買契約書
アパートを購入するときに、不動産会社と取り交わす書類です。
・金銭消費貸借契約書
銀行から融資を受ける際、銀行と取り交わす書類になります。
・工事請負契約書
アパートを建てるときやリフォームの際に、工事業者と取り交わす書類です。
これらは印紙税法上の課税文書にあたるため、記載された契約金額に応じた額の収入印紙が必要です。
収入印紙は、文書に貼って消印をすることで印紙税を納めたことになる証票のことです。
収入印紙を貼らないと、本来納める額の3倍の過怠税という税金が必要になります。
消印をしていないときは、収入印紙と同額の過怠税が必要です。
印紙税は、契約当事者それぞれが納税することになっています。
契約書を二通作成したら、一通の契約書に収入印紙を貼って消印をし、二通の契約書を相手側に郵送します。
受け取った側は、一通の契約書に収入印紙を貼ってから、二通とも消印をします。
双方の消印がある契約書をこちらの保管用とし、別の契約書は郵送で相手方に返送しましょう。
相手方が契約書を受け取って消印をすれば、双方が納税済の契約書を保管できます。
契約書の郵送で気をつけたいこと
まず一般的な郵送のマナーについておさらいしてみましょう。
・相手に何の書類が届いたかがわかるように、郵送物には送付状を添付する
・書類が雨や雪で濡れないように、クリアファイルに入れてから封筒に入れる
・返送してもらう書類があるときは、切手を貼付した返送用封筒を同封する
ビジネスマナーは会社の評価に関わってくるものです。
小さな心配りが大事になってきます。
アパートの入居者に賃貸借契約書などの重要書類を渡すときは、事務所に来所してもらうか、こちらから持参して直接本人に手渡しをするのが確実です。
入居者が遠方にいるなど、どうしても手渡しできない場合は、安全な方法で郵送する必要があります。
万が一、盗難などで相手に届かなかったとしたら大きなトラブルになってしまいます。
契約書は重要な書類ですから、一般的なビジネス文書の郵送マナーに加えて、安全な取り扱いが必要です。
アパートの契約書を安全に郵送する方法
契約書を郵送するときは、オプションをつけることをおすすめします。
オプションの違いについてまとめましたので、見てみましょう。
・一般書留と簡易書留の違い
一般書留も簡易書留も、郵便物を届け先に直接手渡しして、受領印かサインをもらいます。
そして、一般書留は配達途中の状況も記録されます。
郵送物に事故があった場合に、補償される金額に違いがあります。
・書留と特定記録郵便の違い
特定記録郵便は書留と同様に届け先に手渡ししてもらえますが、書留と違って受領印やサインはもらいません。
・配達記録と配達証明の違い
配達記録は簡易書留から金銭補償のサービスを省いたものです。
そして、配達証明は一般書留に配達したことを証明するハガキを届けるサービスを加えたものです。
・レターパックと郵便の違い
レターパックは厚紙の専用封筒に書類を入れるので文書を保護することができますが、書留と違って補償がありません。
また、レターパックはレターパックプラスにすると配達記録がつきます。
アパートのような集合住宅に契約書などの重要書類を郵送するときは盗難が心配ですから、レターパックプラスで送りましょう。
内容証明で郵送する効果と費用
内容証明で書類を郵送すると、受け取った相手にプレッシャーを与えられます。
例えば、
・アパートのゴミの出し方が悪い
・周りの迷惑となる騒音を出している
・契約書などの書類を返送しない
・家賃の支払いが滞りがちになっている
電話で注意しても改まらないときは、書面を内容証明で郵送するだけで問題が解決することがあります。
入居者に対して、「次は強い対応をするつもりである」と思わせる効果があるのです。
内容証明郵便は、文字数と行数が決められています。
【縦書き】
一行あたりの文字数は20字以内、一枚あたりの行数は26行以内です。
【横書き】
一行あたりの文字数は13字以内、一枚あたりの行数は40行以内。
または、一行あたりの文字数は26字以内、一枚あたりの行数は20行以内です。
句読点やカッコも文字数としてカウントします。
内容証明郵便は、配達したことを証明する配達証明郵便とセットにするのが一般的です。
一枚の書面を配達証明をつけて内容証明郵便で送るときの郵送料金は、基本郵便料金82円+内容証明料430円+配達証明料310円+書留料430円で、合計1252円です。
アパート経営と個人情報の保護
個人情報保護法では、個人情報の利用にあたっては、あらかじめ個人情報の利用目的を示し、利用目的の達成に必要な範囲で個人情報を取得することとされています。
アパートの賃貸借契約の際、契約書のほかに賃貸借と関係のない個人情報の記入を入居者に求めることはできません。
個人情報は適切に管理することが求められています。
管理業務を専門会社に委託するときは入居者の同意を得ずに、入居者の個人情報を提供することはできないのです。
業務を委託した後も、委託先が個人情報を適切に管理しているかを監督することが必要です。
「契約書を安全に郵送する方法」で取り上げたように、個人情報の適切な取扱いは、アパート経営をする上で一番気を使わなければいけないことです。
個人情報の取扱いが粗末だと、トラブルにならなくても、入居者の不満が退去につながる恐れがあります。
アパート経営を安定して続けることができなくなってしまうので、個人情報の取扱いには十分注意しましょう。
アパート経営は丸投げではうまくいかない
アパートやマンションの集合住宅では、入居者のクレームやトラブルはつきものです。
入居者とのトラブルは、退去時の原状回復、家賃の滞納、入居中の修繕の三つで過半数を占めるといわれています。
トラブルの早期解決は、経験豊富な管理専門業者に任せるのが一番です。
ただし、管理専門業者が適切な入居者対応を行っているかどうか管理することは必要なので、管理の丸投げは絶対にダメです。
定期的に現地を訪問して、確認しましょう。