頭金なしの住宅ローンは無謀か?購入者のブログを検証する

「頭金なし、家賃程度の住宅ローンの支払いで家が買える」と聞くと、現在賃貸生活をしている人は「自分もマイホームが買えるかも」と思ってしまいますよね。

これは、チラシなどでよく見かけるフレーズです。

そこで、本当にチラシの文句通りになるのかを、頭金なしで住宅ローンを組んだ人のブログから検証してみたいと思います。

諸費用、頭金なしで住宅ローンが組めるのは本当か?

一般的に、月々の支払い額が同じでも、マンションでは賃貸より分譲の方が、設備が充実していたり、部屋数が多かったりします。

家賃8万円の2DKの中古の賃貸と、ローン月額8万円の3LDKの分譲なら、誰だって分譲の方がいいですよね。

しかも分譲は、ローンを払い終わったら、賃貸と違って資産になります。

そこでチラシに踊る例のフレーズを見つけ、「本当かな?」と気になったりするわけです。

ところで、頭金なしの住宅ローンというと、一見手持ちのお金がなくてもマイホームが買えるように思います。

しかしひと昔前は、住宅ローンを組むために、諸費用として現金を準備しなければならず、100万円程度の貯金など、諸費用に消えてなくなっていました。

実際マイホーム購入者のブログなどを見ても、諸費用その他で300万円準備などとよく書かれています。

この諸費用とは、住宅を購入する際に購入代金以外にかかる費用を言います。

例えば、住宅ローン借入時の事務手数料、保証料、団体信用生命保険料、登記時の印紙税や登録免許税、司法書士の報酬などです。

他にも、火災保険料や維持管理費用、引っ越し費用など、合計すると少なく見積もっても100万円~200万円程度の費用がかかっていたのです。

それが昨今は、諸費用がなくなったわけではないのですが、現金で用意する必要がなくなってきています。

頭金なしで諸費用まで全額住宅ローンに含める諸費用込みローン

どういうことかというと、ひと昔前は現金で用意しなければいけなかった諸費用が、今は諸費用込み住宅ローンや、諸費用ローンとして借りられるのです。

これは、大きな違いですね。

貯金がなければ絶対に買えなかったマイホームが、審査さえ通れば、貯金がなくても買えるご時世になったのです。

つまり格段に購入できる対象者の幅が広がったと言えるでしょう。

また、頭金は、以前は物件価格の2割程度用意できなければ審査に通りませんでした。

それが、現在は頭金なしでも当たり前に審査に通るようになっています。

それだけマイホームを持つことが非常に身近になり、その経験談がいろいろなブログで紹介されています。

中には、諸費用をローンで賄うくらいなので、頭金ははなから考えてもいない人もたくさんいます。

ただ、頭金はともかく、諸費用もなしにマイホームを購入することについては、無謀でしかないと否定的な意見も多くあります。

では、諸費用や頭金なしでマイホーム購入に踏み切ったブログ主は、どのような理由でそうするに至ったのでしょうか。

ブログに見る頭金なしの住宅ローンに踏み切った理由

ある頭金なしで住宅ローンを組んだ人のブログでは、賃貸生活にかかる費用を除くと、月々の貯蓄は3万円しかできなかったそうです。

それで諸費用を貯め、ある程度の頭金を貯めようとすると、何年かかるのかと考えたそうです。

一般的に、人間はライフステージが進めば進むほどお金がかかるようになります。

独身だった人が結婚をし、子供を持つなどすると、家族を扶養するお金が必要です。

そして、子供が成長するにつれてかかる金額はかさんでいきます。

それに見合う収入の増加があれば、生活を維持することができますが、今のご時世ではそうとも限りません。

つまり、貯金をしている間に消費していく費用を考えると、諸費用や頭金なしで住宅ローンを組んだ場合と比較して、メリットがあまりないとブログ主は判断したそうです。

確かに、諸費用200万円、頭金300万円として、貯金月3万円では14年近くかかってしまいます。

その間に、賃貸の家賃として捨て金を払っていくのであれば、諸費用込み頭金なしの住宅ローンを組んで、14年間返済する方が、メリットがあると考えたわけです。

では、本当にメリットがあるのか両者を実際に比較してみましょう。

一方は、15年で諸費用200万円、頭金300万円の計500万円貯金してから、20年の住宅ローンを組んだとしましょう。

もう一方は、諸費用、頭金なしで35年の諸費用込み住宅ローンを組んだ場合です。

実際にブログの住宅ローンモデルを比較してみよう

まず、前提として、物件価格は2,800万円、金利は変動金利で、平成30年6月の基準金利2.475%から1.85%の金利優遇があったとして、0.625%とします。

また、便宜上、どちらの場合も金利の変動は考えないこととします。

35年ローンの場合は、諸費用込みローンなので、物件2,800万円と諸費用200万円の合計3,000万円の借入になります。

シュミレーションすると、毎月の返済額は79,543円、総返済額は33,408,060円となります。

一方、20年ローンの場合は、諸費用200万円と頭金300万円があるので、借入額は2,500万円です。

この場合、毎月の返済額は110,839円で、総返済額は26,601,360円となります。

これを金利という観点から見ると、35年ローンでは340万円もの金利がかかり、20年ローンでは160万円で済むことから、20年ローンが得と言えます。

しかし、よく考えてみると、500万円の貯金ができるまでの間、15年間に支払った賃貸の家賃は、月額8万円だったとすると1,440万円にもなります。

つまり、35年という期間にかかった住宅費用は、41,001,360円にもなると考えることができます。

さらに、ローンを組んでからの支払額が、賃貸のときと比較して3万円以上も増えることから、総合的に判断すると35年ローンに軍配が上がりそうですね。

先のブログ主が貯金をしてから購入することにメリットはないと考えたのは妥当と言えるでしょう。

ブログ主を後押しした団体信用生命保険の存在

そして、ブログでは他にもいくつか頭金なしでマイホーム購入に踏み切った理由が述べられています。

金銭的メリット以外にも、家族のことを考えると、ブログ主が病気や事故で亡くなった場合、賃貸だと妻に家計の負担が課せられてしまいます。

その点、住宅ローンには団体信用生命保険があるので、万が一の場合でも家族に住む場所を残してあげられるということです。

団体信用生命保険とは、契約者が病気や事故で亡くなった場合、ローンの残債が0になるという保険で、ローンを組む際には加入が義務づけられています。

死亡だけではなく、高度障害などでも残債がなくなることから、確かに何かあった時の家族の負担は賃貸とは比べ物になりません。

また、ほとんどの銀行で保険料は金利に含まれており、銀行が負担してくれる形になっています。

確かに、家族のことを考えると、ブログ主の言う通りでしょう。

万が一というのは誰にでも起こりうることなので、団体信用生命保険というのは非常にありがたい制度だと言えますね。

また、契約内容によっては、3大疾病に対応した団体信用生命保険などもあるので、保険の見直しも兼ねて検討してしてみるのもよいでしょう。

頭金なしの住宅ローンは「支払いができる物件」ありきで

そしてもう1つ、ブログで述べられていることは、昨今はローコスト住宅などもあり、販売価格の安い物件が多くあるということです。

つまり冒頭に述べた「頭金なし、家賃程度の住宅ローンの支払いで家が買える」根本的理由がこれですね。

いくらマイホームが欲しくても、収入や支払い可能額に見合った物件でなければ、買うことは無謀としか言えません。

これは、貯金があろうがなかろうが、頭金があろうがなかろうが根本的に同じことです。

ブログでは、貯金なしで家を買うのは無謀という意見はもちろん正しいけれど、結局は「支払いができる物件を買えばよい」と述べています。

そして、実際にローコスト住宅を購入し、住んでみた感想を述べています。

「すごく良い家ではないけれど、そこまで悪い家でもなく、一言でいえば普通の家。ただ、貯金なしでも支払いができて、家族も安心できるので満足です」

私はこのブログ主にとっては、頭金なしで住宅ローンを組むことは正解だったのだと思います。

ただ、貯金ができない人、我慢ができない人は、どのような買い方であっても無謀であることに変わりはありません。

結局「足るを知る」人ならば、このようなマイホームの買い方もあってよいのではないでしょうか。

住宅ローン金利の変動に備えることも必要

このように、頭金なしの住宅ローンでマイホームを買うことは決して不可能ではありません。

ただ、長期間の住宅ローンにおいては、金利の変動の危険性を忘れてはいけません。

超低金利時代と言われる昨今なので、今後金利が上がる可能性は大きいでしょう。

それに備えて、住宅ローンを支払いながら貯金もできるという価格の物件を見つけることが、マイホーム購入の第一歩になるのではないでしょうか。