価値があるものとして名高い「金」ですが、なぜほかの金属よりも価値があるとされているのでしょうか。
銀や銅など、美しい金属はほかにもあります。
しかし、資産として高く取引されるのは「金」です。
今回の記事では、金・銀・銅それぞれの価値について、また、金と比較されることの多いプラチナについてもお話しします。
金・銀・銅の価格の違い
金・銀・銅というと、オリンピックのメダルを思い浮べる人も少なくありません。
上位の成績を残した人にのみ贈られるそのメダルの価値は、金銭的な価値に換算できないものです。
そのメダルに使用される金・銀・銅ですが、これらの金属はどのような性質を持っているのかご存知ですか。
これらの金属は、貴金属性が高く安定的で錆びない金属といわれています。
特に、金はアクセサリーなどに使われるだけでなく、資産的な価値が高い金属として名高いですね。
金と銀と銅は、価格に大きな差があります。
ある日の1キロ当たりの取引価格を見てみます。
金:470万円
銀:6万7千円
銅:530円
価格の違いは一目瞭然ですね。
しかし、同じ金属である鉄は1キロ当たり0.5円程度であることを考えると、銅も十分高価な金属といえるのかもしれません。
価値が高い金属であり、それぞれ異なる美しい輝きを持つからこそ、オリンピックのメダルに使われているのですね。
ところで、金や銀は、価格を見て分かるように、非常に価値が高いものとして扱われています。
特に金の価値は世界共通で、その希少性からはるか昔から世界中で資産として扱われ、富や権力の象徴とされてきました。
紙幣が登場するまでは、広く通貨としても利用されてきた歴史があります。
その価値は現在も色あせることがありません。
なぜ、金はこれほど長い間高い価値を維持し続けているのでしょう。
金の価値が高い理由
金の価値が高いのは、その埋蔵量に理由があります。
約6000年前、人類が金を手に入れてから現在までに採掘された金の総量は、およそ17万トンといわれています。
17万トンといわれても、具体的な想像がつかないかもしれませんが、ほかの金属と比べてとても少ない採掘量なのです。
さらに、地球上に眠っている残りの金の量は、およそ7万トンといわれています。
すでに地球上の金は半分以上が採掘されているのです。
しかも、その残りの7万トンは地下数千メートルの鉱脈であったり、マグマであったり、採掘困難な金です。
近い将来、採掘可能な金鉱脈は枯渇してしまうともいわれています。
現在、金は全世界で年間2千5百トン程度のペースで産出されています。
このままのペースで採掘が進めば、いつかは金の鉱脈が枯渇してしまうことは明らかです。
もしかしたら、技術の向上により今まで不可能であった金の採掘が可能になるかもしれませんが、それがいつになるのかはわかりません。
このように、金はもともとの埋蔵量が少ないため、簡単に増産することが出来ません。
しかも、ジュエリーだけでなく現物資産としても金の人気は衰えを知りません。
埋蔵量の少なさと需要の高さが、金の価値を高めているのです。
次項からは、銀と銅についても見てみましょう。
銀が金よりも価値が高い時代があった
前項でご説明した通り、世界的な価値の高さを持つ金ですが、銀の方が価値が高かった時代もありました。
昔は銀は自然銀や砂銀として産出されることがまれで、金よりも産出量が少なかったこともあり、希少性が高かったのです。
古代エジプトでは、銀の方が金よりも価値が高かったといわれています。
その価値を比率にすると、金1:銀2.5という数値であったそうです。
また、大航海時代の代金も銀で支払われることが多かったようです。
しかし、精製技術の発達と19世紀の大きな銀山の発見によって銀の生産量が上がり、その価値は下がりました。
その後は金が銀に代わり、高い価値を有する金属となったのです。
有史以来、銀の総採掘量は100万トン以上に達するといわれています。
先ほどの金の17万トンと大幅に差がありますね。
しかも、銀は回収システムも整備されているため、希少性が低くなり金の価値に及ばないようです。
しかし現在、地球上の銀の埋蔵量は57万トン程度といわれています。
そのため、銀もいつかは枯渇するとされています。
それでは、銅はどうなのでしょう。
銅は古代から人類にとって重要な金属
銅は、古代から人類と関わりの深い金属です。
古くから重要な金属として扱われてきました。
銅は自然銅として自然に存在しており、人類の初期の文明でも使われてきた金属です。
1万年ほど前から人類によって利用されてきましたが、これまでに採掘された銅の95%以上は1900年以降に抽出されたものです。
資産として価値のある金属というよりも、工業用として多く利用されています。
古くから貨幣の材料として使われ、現在でもさまざまな場面で銅は利用されています。
電線、配管、産業機械など、身近な製品に多く使われています。
また、現在の地球上の銅の埋蔵量は9億4千万トンといわれています。
このうち、採掘が可能なのは6億9千万トンとされます。
年間の生産量はおよそ1600万トンです。
リサイクルも大きな銅の資源となっています。
銅は製品中に含まれている状態であっても、品質を失わずに100%リサイクルすることができるのです。
一時、銅線の盗難が問題になったことがありました。
これは、銅の価格が一時的に高騰したことによるものです。
金・銀・銅は埋蔵量に差はありますが、どの鉱物も埋蔵量に限りがあります。
いつか資源が尽きてしまう可能性があることに違いはありません。
金・銀・銅以外の価値のある金属、プラチナ
さて、金・銀・銅という金属についてお話ししてきましたが、価値のある金属というともうひとつ思い浮かびます。
プラチナです。
現在、金と並んで希少な金属として扱われています。
プラチナの埋蔵量は全世界でもおよそ1万6千トン程度と推定されています。
希少といわれる金よりもさらに希少です。
プラチナの歴史はほかの金属よりも浅く、有史以来採掘された総量も5千トン程度です。
ほかの金属から比べても、群を抜いて少ないですね。
推定埋蔵量から考えるとすでに1/5が採掘済みであり、さらに採掘が難しくなっていくものと考えられています。
プラチナというと、ジュエリーのイメージが強いと思いますが、実はプラチナの需要はジュエリーだけにとどまりません。
プラチナは、その需要の60%以上が工業用として利用されているのです。
自動車やコンピューター、医療用機器、バイオ技術など、プラチナは生活に関わる工業製品に多岐にわたって利用されています。
埋蔵量が少ないうえ、今後このような技術はさらに発達していくものと考えられますので、プラチナの価値はさらに高まっていくでしょう。
金・銀・プラチナの需要
このように、埋蔵量に限りがあり、採掘が難しい金・銀・プラチナは資産価値が上昇していくと考えられますが、具体的にどのような需要があるのかを見てみましょう。
金は、銀・銅に続いて金属の中では3番目に電気伝導率が高い金属です。
そのため、一定の工業利用の需要があります。
しかし、金の需要の約80%はやはりジュエリーと投資が占めます。
工業需要が低いため経済不況の影響を受けることが少なく、価値が下落しにくいのです。
希少性と高い需要を持つため、人気の現物資産です。
銀は、すべての金属の中で電気伝導率が最も高い金属です。
そのため、電子機器のケーブルから回路基板まで、幅広い工業用途に利用されています。
さらに、酸化銀電池や銀亜鉛電池は寿命が長くエネルギー効率に優れているため電池需要も高いのです。
銀の工業需要はおよそ75%です。
工業需要が高いということは、経済状況によって価格が暴落する恐れがあるということです。
反対に考えると、世界情勢によって需要が上昇する可能性もあります。
日本でも注目されている太陽光エネルギーですが、太陽電池の電極材料として銀は必要不可欠です。
環境にやさしいエネルギーの開発が世界的な課題のため、銀の需要はこれから上昇していくものと考えられます。
プラチナは先ほどもお伝えした通り、工業需要が60%以上を占めます。
自動車の排気ガス浄化装置の触媒や制癌剤などに利用されています。
工業需要が高いため、やはり経済状況によって価格が下落しやすいことが挙げられます。
現在、プラチナは金に比べて相場が小さいことや価格の不安定さから、投資用としてその価値は不安視されています。
しかし、工業技術には欠かせないため、プラチナが無価値になることはありません。
地球全体の埋蔵量もきわめて少なく、その希少性は金以上といわれることもあります。
この先、プラチナの価値は上がっていくものと考えて良さそうです。
限りがあるからこその価値
金は世界的な価値を持つため、国籍のない貨幣ともいわれます。
その価値は、この先もなくなることはほぼないでしょう。
資産として人気が高いのも理解できます。
しかし、ほかの金属も採掘量に限りがあることは間違いありません。
数十年後には、資源が枯渇するかもしれないのです。
都市鉱山という言葉があるように、これからはより一層金属のリサイクルが進むものと考えられます。