これをご覧の大家の皆さんは、家賃の領収書を出す場合、印紙は貼っていますか?
貼るとしたら、ほとんどの場合200円の印紙(家賃5万円以上100万円以下の場合)ですが、部屋数が多いと毎月なかなかの出費です。
とはいえ、違反が発覚すると重いペナルティがあるので、貼らないという選択肢はありません。
そこで今日は、家賃の領収書に貼る印紙について、貼る場合と貼らない場合の違いから、印紙代の節約術までをご紹介します。
家賃の領収書に印紙を貼らなかったときのペナルティ
家賃の領収書に印紙を貼らなかった場合、調査で発覚すると、過怠税(本来の額の2倍の額)が加算されて、合計で3倍の額を払わなくてはなりません。
時効は5年ですから、最悪5年分、1室あたり200円×3倍×60ヶ月=3万6000円を納付することになってしまいます。
税務署に自己申告すれば、本来の額の1.1倍を納付するだけでよいことになります。
そのため多くの場合、税理士さんに「自己申告させてください」と泣きつくことになるでしょう(これは割と認められやすいようです)。
また、せっかく印紙を貼っても消印をしなかった場合は、やはり過怠税が加算されて2倍の額を納付しなくてはならないというペナルティがありますので、消印を忘れないようにしましょう。
「自己申告で1.1倍で済むなら、ばれるまで貼らなくてもいいか」という悪魔のささやきも聞こえてきてしまいますが、印紙のせいで、税務署から目を付けられてしまうのが、何より重いペナルティです。
税務署ににらまれて、税理士さんに頼まざるを得なくなってしまったら、印紙代どころではない金額が飛んで行ってしまいます。
やはり、コンプライアンス重視で、必要な印紙はきちんと貼ることをおすすめします。
家賃の領収書に印紙を貼らなくてよい場合とは
では、家賃の領収書に印紙を貼らなくてよいのは、どのような場合でしょうか。
5棟10室未満なら印紙不要とか、個人での賃貸なら印紙不要とか、様々な話を聞いたことがあるかもしれませんが、これらはいずれも、残念ながら誤解です。
5棟10室は、「事業的規模」として青色申告の優遇を受けるための基準となる目安で、印紙税とは関係ありません。
また、個人での賃貸でも、「継続的な営利活動」としての貸家の場合には、家賃の領収書に印紙が必要です。
「継続的な営利活動」ではない例は、転勤等で自宅を一時的に賃貸に出しているような場合だけに限られてしまいます。
1室だけの大家さんでも、2年ごとに更新して、空いたらまた募集して、と反復継続する場合には、「継続的な営利活動」に該当してしまいます。
ですから、ほとんどの大家さんにとっては、残念ながら、個人でも家賃の領収書に印紙が必要でしょう。
しかし、そうすると、印紙代だけでなかなかの金額がかかります。
そこで、次は、家賃の領収書に貼る印紙代の節約術を見ていきましょう。
家賃の領収書に貼る印紙の節約術1~領収書を出さない~
家賃の領収書に貼る印紙を節約する方法の1つ目は、ずばり領収書を出さないことです。
領収書は、入居者に「ください」と言われてしまったら、大家さんは出す義務があり、むげに断ることはできません。
とはいえ、入居者に「振込明細だけじゃだめですか?」とお願いすることが禁止されているわけでもありません。
まずは一度、入居者に「振込明細だけにしてもらえないか」、お願いしてみてはいかがでしょうか?
個人の方ならそれほどこだわらない方も多いでしょうし、事業者や法人だって絶対ではないですから、一度頼んでみるのもよいでしょう。
ちなみに、税務署から「領収書を一切出さないのはダメ」と言われてしまっても、例えば、何ヶ月分かを1枚にまとめて出す、という節約方法もあります。
印紙税は「1枚ごと」に課されますから、何ヶ月分かまとめて出しても、1枚に記載された金額が100万円以下なら200円、100万円を超えて200万円以下なら400円の印紙で済みます。
ただ、あまりしつこくお願いしたり、ややこしくしたりするのは考えものです。
入居者には、気持ちよく借りて長く暮らしてもらうのが一番ですし、空室が増えてしまったら本末転倒なので、大家さんの都合で領収書についてのお願いするのはほどほどにしましょう。
家賃の領収書に貼る印紙の節約術2~家賃帳を使う~
家賃の領収書に貼る印紙を節約する方法の2つ目は、「家賃帳」を使うことです。
文書に貼る印紙の額は、印紙税法という法律の最後の方、「別表第一 課税物件表」に載っています。
家賃の領収書に貼る印紙の額(印紙税額)は、「別表第一 課税物件表」の第十七号で、領収書に記載された金額に応じて定められています(5万円以上100万円以下の場合200円)。
家賃帳に貼る印紙の額は、「別表第一 課税物件表」第十九号で、1冊400円です。
1冊にまとめたら何年分でも400円・・・と期待させる書き方ですが、残念ながら、1年ごとに400円です。
「1年ごとに新しい家賃帳を作ったと見なす」というのは、ずいぶん無理がある解釈にも思えますが、致し方ありません。
また、家賃帳で注意が必要なのは、家賃1年分の合計金額が100万円を超えてしまう場合です。
この場合、100万円を超える部分については、新たに第十七号の領収書を発行したと見なされて、200円ずつ印紙を貼ることになります。
それでも、全体としては節約になる場合が多いでしょう。
家賃の領収書に貼る印紙の節約術3~領収書を分ける~
家賃の領収書に貼る印紙を節約する方法の3つ目は、領収書を分ける方法です。
節約術1では、何ヶ月分かまとめて出す方法をご紹介しましたが、今度は逆に、1ヶ月分の領収書を複数通に分けて、記載された金額を5万円未満(非課税)にしてしまおう、という荒技です。
例えば、家賃4万8000円と共益費5000円の場合、領収書1枚だと5万3000円なので200円の印紙が必要です。
一方、家賃と共益費を別々に分けて2枚の領収書で出せば、2枚とも5万円未満なので印紙は不要です。
ただ、おすすめできるのはここまでで、例えば、6万円の家賃を受け取って、3万円ずつ2枚の領収書で出す、というあからさまな方法はNGです。
もちろん、実際に3万円ずつ2回に分けて支払われたなら別ですが、実態に合わない形で領収書を分けて税を免れるのはNG、と心得ましょう。
「ならば賃貸借契約書で家賃を半月ごとに定めて・・・」などと大家さんが頑張れば、税務署もその努力を認めてくれるかもしれません。
でも、おかしな賃貸借契約書になってしまって、入居者に怪しまれてしまったら本末転倒なので、やはりほどほどが良いでしょうね。
家賃の領収書に貼る印紙の節約術4~消費税を「金額まで」明記する~
家賃の領収書に貼る印紙を節約する方法の4つ目は、消費税を金額まで明記する方法です。
事業用(事務所や倉庫など)の賃貸借なら、消費税を請求できます。
「個人の賃貸だから消費税は非課税」などという言葉に、騙されてはいけません。
課税売上が1000万円未満で納税義務が免除されている大家さんは、うっかり騙されてしまうかもしれませんが、納税義務が免除されていても、消費税を請求していいのです。
税務署に直接納めていないだけで、電気・ガスなど色々な業者さんに消費税を支払い、これが巡り巡って税務署に行くのですから、もらうときもきっちりもらいましょう。
そして、家賃が4万8000円で消費税が8%(3,840円)の場合、合計5万1840円の領収書を出せば、200円の印紙が必要です。
ですが、領収書に消費税額を金額まで「3,840円」と明記すれば、この部分は印紙税額の決定ではカウントされません。
4万8000円、つまり5万円未満の領収証と見なされて、印紙は不要になるのです。
しかし、ここで重要なのは「金額を明示すること」であるため、「税込み」と書くだけではダメなので注意が必要です(領収書の用紙に税額を書く欄があるのは、このためです)。
共益費の消費税も明記すれば、節約術3のように無理して領収証を分けなくてもいい場合が増えるかもしれません。
なお、この方法は、節約術2の家賃帳では使えませんので、ご注意ください。
家賃帳の場合、1年分1冊あたり400円の印紙で済むのは、税込合計100万円までです。
たかが印紙と侮るなかれ!
大家さんにとっては、余計な出費は避けたいところですが、税金だけは法律に従ってきちんと納めることが重要です。
正確な知識を身に着けた上でコツコツ節約するというのが賃貸経営の成功の秘訣ならば、印紙について学ぶことも、成功への第一歩かもしれません。
「たかが印紙」と侮ることなく、知識をつけてきちんと印紙を貼り、印紙代を納めるようにしましょう。