円安・円高が輸出や輸入に与える有利な点と不利な点

通貨の価値は、毎日変動しています。

円安や円高などという言葉を聞いたことがありますよね。

円安、もしくは円高が進むと経済はどのようになるのでしょうか。

また、それが輸出や輸入に与える影響はどのようなものなのでしょうか。

両方の有利な点・不利な点をまとめました。

円安・円高が経済や輸出・輸入に影響を与える

毎日のニュースで天気予報と同様に必ず報じられるものがあります。

株価と為替です。

為替を読み上げて「円安・ドル高です」などと、アナウンサーが伝えているのを見たことがあると思います。

「円高」「円安」は日本の経済や輸出・輸入を左右する大きな要素です。

それぞれの意味を解説します。

●円高

円の価値が上がることです。

例えば極端ですが、1ドル=120円だった為替相場が1ドル=90円になったとします。

これが円高です。

1ドルを手にするために120円払わなければならなかったものが、90円払えば1ドルを手にすることができるということです。

円の価値が上がる、これが円高です。

見た目では円の価格が下がっているので、勘違いしてしまうかもしれませんが、理由がわかれば円高の意味が分かりますよね。

●円安

円安はその反対です。

1ドル=90円だったものが、1ドル=120円になったとすると、同じ1ドルを手に入れるために30円も多く払わなければならなくなります。

円の価値が下がったため、多く払わなければドルを手に入れられないのです。

これが円安です。

円高と円安は通貨の交換が必要な場合に発生します。

つまり、輸入や輸出などの貿易の際には、必ず為替取引が発生するのです。

そのため、円高か円安かによって、輸入と輸出の際に有利・不利が生じることがあります。

円高になると有利になる輸入

円高と円安には、それぞれ貿易にとって有利な点と不利な点が存在します。

円高の有利な点を見てみましょう。

円高になると有利なのが、輸入です。

円の価値が高いため、海外の製品を安く買うことができます。

輸入品が安く買えると、輸入が増えます。

高くて手が出ないブランド品も安く買えるチャンスです。

また、原油価格が下がることで電気代やガソリン代が下がることもあります。

物価全体が下がる傾向になり、国内の物価が安定することにつながります。

また、円高のときは海外旅行にも安く行くことができます。

例えば、ハワイ旅行が1000ドルだったとします。

1ドル=120円(円安)であれば12万円ですが、1ドル=90円(円高)であれば9万円です。

円高であれば、外貨を多く換金できるため海外旅行には有利です。

円高の不利な状態から脱却するために海外進出することも

円高の不利な点は、輸出です。

海外から見たとき、円高になると日本で生産された物の値段が上がることになります。

日本から輸入するのに多くお金を払わなければ買えないため、日本の物が売れなくなるのです。

また、海外で物を売って外貨を手に入れた場合、円高だと売り上げが減ってしまいます。

日本の会社が、アメリカの会社に商品を1億ドルで売るとします。

そのとき、1ドル=100円だった場合と1ドル=99円だった場合を見てみましょう。

1ドル=100円であれば、1億×100=100億円です。

しかし1ドル=99円になると、1億×99=99億円です。

1円の差といえども、その売り上げ金に1億円もの損失が出るのです。

そのため、輸出をしている会社は円高の際、外貨を円に換えるタイミングに苦慮しています。

過去に円高による不況があった際、日本の輸出企業は海外進出をして現地生産を促進させました。

海外で生産すれば、円高や円安に左右されることはありません。

日本企業が海外に拠点を持つのは、このような理由もあるのです。

円安は輸出企業の利益を改善させる

次に、円安の有利な点です。

円安になると、輸出が有利になります。

海外に対して物を売りやすくなるのです。

例えば、日本で100万円の自動車をアメリカで売るとします。

1ドル=100円(円高)だと自動車は1万ドルです。

1ドル=200円(円安)であれば、自動車は5千ドルです。

価格に大きな差が生まれます。

円安になると、海外で日本製品の価格が下がり、たくさん売れるようになります。

たくさん売れるということは、輸出が増えるということです。

これは、輸出企業の利益改善につながります。

また、海外から日本への観光客が増え、外国人の消費が増えやすくなります。

これは観光業や関係する業界に好影響を与えることが考えられます。

さらに、円安になると外貨預金・外国株式・FXなど、外国通貨建ての資産価値が上がります。

100万ドルの海外資産が、1ドル=100円から1ドル=110円の円安になると、100万ドル×100=1億円だった資産が、100万ドル×110=1億1千万円になるということです。

円安の有利な点は多くあります。

続いては、円安の不利な点も押さえておきましょう。

輸入についてはどうなるのでしょう。

円安は輸入にとっては不利な状態

円安の不利な点についてです。

円安では、輸出において有利になるとお話ししました。

そうなるとやはり、輸入においては不利になります。

海外から物を買う際、多くの円を払わなければならないからです。

輸入品が値上がりします。

原油価格も値上がりすることになりますので、電気代やガス代の値上がりにもつながります。

企業であれば、輸入に依存する原材料の調達コストが上がり、国内生産であっても商品やサービスが値上がりすることになります。

輸入品の価格が上昇することにより、最終的な製品の価格も値上がりすることになります。

そうなるとインフレが発生しやすくなってしまいます。

海外旅行も不利になります。

円の価値が下がるため、海外の通貨が高くなり買いにくくなるからです。

旅行の際に海外の通貨に交換する際に不利になるのです。

海外旅行が割高となり、行く人が減ります。

先ほど、円安になると海外資産の価値が上がるとお伝えしましたが、つまり、海外資産が値上がりするため海外の資産を買いにくくなるということにもつながります。

また、国内資産の価値が下がるので、国内の資産が海外から買収されやすくなるという不利な状況も起こります。

どちらに傾きすぎても不利になる

円安になると、輸出量が増加して輸出企業の業績が改善します。

そのため、国内の景気を回復させやすいといわれています。

また、円安は株価が上昇する傾向にあるともいわれています。

こういったことから、以前ですと円安は経済にとって有利で、景気を回復させてくれると考えられていました。

しかし、前項でもお話しした通り、円安には不利な点も存在します。

円安によって輸入品の価格が上昇することが、国内経済に与える影響は小さくありません。

商品の値上げで消費が低迷し、それにともなって企業活動も低迷することになり、国内の経済に良くない影響を与えます。

そのため、現在では簡単に円安が有利といえなくなっているのです。

円安にしろ円高にしろ、過剰な動きは経済にとって不利な状態です。

そのため、急激な変動が経済に対して悪影響を与えると判断された場合、政府によって為替介入が行われることもあるのです。

為替は私たちの生活に大きく関わっている

円安や円高などの為替レートは、日本経済に大きな影響を及ぼすことがわかりました。

特に、輸入や輸出において大きな売り上げを出している企業であれば、それは顕著です。

企業の収益が変われば、景気も変わります。

円安でも円高でも日常生活には関係ないと思われるかもしれませんが、為替は私たちの生活にも大きく関わっています。

そのため、大きな波が起こらないように政府も注視し、時には介入を図るのです。