住民税の計算方法はどのようなものか、みなさんはご存知でしょうか?
毎月の給与から引かれてはいるものの、だいたいの金額を把握している程度ではないでしょうか。
そこで今回は、年収250万円の会社員に絞って、その計算方法を簡単に見ていきたいと思います。
住民税の計算方法の公式
住民税は、年収250万円を基準として、そこから控除できるものを差し引いた金額に、住民税の税率をかけて算出します。
さらに、そこから税額控除といわれる調整額などを差し引いたものが、最終的な住民税です。
住民税には市区町村税と都道府県民税があり、それぞれに所得割と均等割があります。
それらを合計したものが、住民税として給与から引かれているわけです。
このように、会社が社員個人に代わって徴収や納付を代行することを特別徴収といいます。
所得税の場合は源泉徴収といい、同じように給与から天引きしますが、両者はその計算方法も似ています。
年末調整で、源泉徴収された所得税を、所得控除額を加味して再計算していることはご存知かと思いますが、住民税もそれに似た計算をします。
ただ、所得税は国税なので税率は全国同じですが、住民税は住所地である市区町村や都道府県によって、その税率に多少差があります。
そこで、今回は大阪市大阪府を例にとって、住民税の計算方法を解説していきたいと思います。
では最初に、住民税の計算方法の公式を書いておきます。
所得割税額=(年収-給与所得控除-所得控除)×10%(市民税6%、府民税4%)-税額控除等。
均等割税額=市民税3,500円+府民税1,800円=5,300円。
この所得割と均等割の合計が住民税の年額で、これを月割に直したものが、みなさんの給与から天引きされている住民税なのです。
年収250万円の住民税の計算方法、給与所得控除
では、年収250万円の会社員の住民税の計算方法の中身を順を追ってみていきましょう。
まず、給与所得控除というものがあります。
これは、会社員にとっての経費のようなもので、納税者全員が対象で、無条件に税金がかからない金額になります。
その額は、年収によって段階的に定められています。
年収250万円の場合は、年収180万円超360万円以下という分類になるので、給与所得控除は、年収×30%+18万円になります。
実際に当てはめて計算してみると、250万円×30%+18万円で93万円ですね。
年収250万円からこの給与所得控除93万円を引くと、157万円、これがあなたの「給与所得」になります。
公式に立ち戻ると、この給与所得から、さらに所得控除を差し引くことがわかります。
所得控除は、さまざまな条件に該当する人が受けられる控除です。
代表的なものは、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などですが、ほかにもありますので、次に列記していきたいと思います。
年収250万円の住民税の計算方法、所得控除のなかの人的控除
①基礎控除
すべての納税者につき33万円。
②配偶者控除
所得金額38万円以下の配偶者がいる場合、33万円、70歳以上の配偶者は38万円。
③配偶者特別控除
所得金額38万円超76万円未満の配偶者がいる場合、所得によって33万円から3万円。
④扶養控除
16歳以上69歳以下の扶養親族がいる場合、33万円、そのうち19歳以上22歳以下は45万円、70歳以上は38万円、同居老親等は45万円。
⑤障害者控除
本人か扶養家族に障害者がいる場合、26万円、特別場会社は30万円、同居特別障碍者は53万円。
⑥寡婦(不)控除
本人が寡婦(夫)の場合、26万円、特別寡婦は30万円。
⑦勤労学生控除
本人が勤労学生の場合26万円。
これらは所得控除のなかでも人的控除といわれるもので、それぞれに該当する場合に控除が受けられます。
先に述べた年収250万円の住民税の計算方法の公式の、税額控除の計算にこの人的控除が関わってきます。
所得税における人的控除の金額と、住民税における人的控除の金額が異なるため、あとでその差額の5%を調整控除として差し引くのです。
少しややこしいので、後ほど実際の計算のときに再度説明しますね。
年収250万円の住民税の計算方法、その他の所得控除
他にも、住民税の計算方法で控除できるものがあります。
①雑損控除
災害、盗難などにより資産に損害を受けた場合、(損害金額-保険補填)-(所得金額×1/10)と、個人支出-5万円のうち、多い方の金額。
②医療費控除
(支払った医療費-保険補填)-(所得金額×5/100)と、10万円のいずれか少ない方の金額。
③社会保険料控除
健康保険、年金、介護保険料など社会保険料は全額。
④小規模企業共済掛金等控除
小規模企業共済法で定められた共済の掛け金なども全額。
⑤生命保険料控除
生命保険料や簡易保険料と、個人年金保険料についてはそれぞれ以下の通り。
・1.5万円以下は全額。
・1.5万円超4万円以下は支払った保険料×1/2+7500円。
・4万円超7万円以下の場合は支払った保険料×1/4+17500円。
・7万円を超える場合は3.5万円。
⑥地震保険料
地震保険料が5万円以下の場合は保険料×1/2、5万円超の場合は2.5万円。
このような所得控除の合算を給与所得から差し引いたものを「課税所得」といいます。
たとえば、所得38万円以下の配偶者と16歳の子供がいて、社会保険料が30万円、生命保険が12万円だったとします。
すると、所得控除額は、基礎控除33万円、配偶者33万円、子供33万円、社会保険料30万円、生命保険料3.5万円で、合計132.5万円になります。
年収250万円の所得金額が157万円だったので、そこから所得控除132.5万円を引いて、24.5万円が課税所得ということになります。
住民税の計算方法の公式に当てはめて、所得割を計算してみよう
所得割を出すために、税額控除について説明します。
先ほどの人的控除についてですが、例えば所得税では配偶者控除は38万円で、住民税では33万円です。
この差額を調整するために、差額の5万円の5%(市民税3%+府民税2%)を算出された税額より直接差し引きます。
これを、差額控除といいます。
さきほどの所得控除の例でいうと、基礎控除、配偶者控除、扶養控除が人的控除になりますが、それぞれ所得税では38万円、住民税では33万円です。
人的控除の差額合計は15万円になるので、市民税は15万円×3%の4,500円、府民税は2%の3,000円が差額控除ということになります。
では、実際に年収250万円の住民税の計算方法の公式にあてはめて、所得割を計算してみましょう。
公式は、所得割税額=(年収-給与所得控除-所得控除)×10%(市民税6%、府民税4%)-税額控除等です。
市民税=(250万円-93万円-132.5万円)×6%-4,500円=10,200円。
府民税=(250万円-93万円-132.5万円)×4%-3,000円=6,800円。
これが、所得割の年額になります。
他にも主な税額控除には、住宅ローン控除やふるさと納税などの寄付控除などがあります。
たとえば、住宅ローン控除は、所得税で引ききれなかった額を住民税から上限13.65万円の範囲内で直接控除できます。
ふるさと納税では、2,000円は自己負担ですが、それを超える部分については住民税から税額控除されます。
ただし今回は、差額控除のみとして進めます。
忘れてはいけない住民税の均等割、最終的に住民税はいくら
最後に合計の住民税を算出するための計算方法として、均等割を足します。
市民税=所得割10,200円+均等割3,500円=13,700円。
府民税=所得割6,800円+均等割1,800円=8,600円。
住民税の年額は、13,700円+8,600円=22,300円ということになります。
ただし、端数処理の規則があり、課税所得金額は1,000円未満切り捨て、所得割額は市民税、府民税それぞれで計算し、100円未満は切り捨てます。
今回は、該当する端数処理はないため、上記の金額22,300円が、年収250万円の住民税ということになります。
みなさんの給与から差し引かれているのは、これを12で割った金額で、端数は住民税の年度の初月になる6月分に足しこまれています。
ちなみに、配偶者や扶養控除がなかった場合では、課税所得が90.5万円となり、住民税年額は93,300円になります。
人的控除の額が課税所得にかなり影響することがわかると思います。
シングルの人などは、家族を養っている人に比べると、かなり税金が高いといえますね。
このようなことも、計算方法がわかって初めて知ることではないでしょうか。
また、収入のあった年度の翌年6月からその支払いが始まります。
つまり、今支払っているのは前年度分の住民税であることも、覚えておかなければいけません。
住民税は一生支払い義務がある
みなさんが、これまであまり気にしていなかったであろう住民税ですが、実は年金生活になっても所得税と同様に課税されます。
計算は複雑ですが、一生支払う税金でもありますので、所得控除などを最大限生かして、節税しながら、うまく付き合っていきたいものですね。