会社員のみなさんは、毎月の給与から住民税が引かれていることと思います。
しかし、その計算方法をご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、年収180万円の会社員の場合を例にとって、住民税の計算方法について解説したいと思います。
年収180万円の住民税、まずはその仕組みを知ろう
住民税は、居住地である市区町村と都道府県が、1月1日において住民である個人に課税する税金です。
会社員のみなさんの場合、会社が当年1~12月の給与を、翌年の1月に各市区町村へ給与支払報告書として送付しています。
その年収をもとに、各市区町村ごとに決められた計算方法で税額を計算し、4月以降に会社に決定通知書と納付書を送付します。
会社はその月割り金額を、6月の給与を初月として、社員の給与から天引きにより徴収します。
徴収した住民税は、給与支払い月の翌月10日までに、会社が納付書などによって自治体に納付しています。
6月ごろになると、皆さんの手元にも住民税決定通知書が配られると思いますが、それは前年度の住民税ということになりますね。
このように、会社員の場合、会社がその徴収と納付を代行してくれているわけです。
また、住民税には市区町村税と都道府県民税があり、それぞれに所得割と均等割、調整控除などがあり、それらを総括して住民税といいます。
さらに、自治体によって多少税率や臨時措置に差があるので、ここでは大阪府大阪市を例に話を進めていくことにします。
みなさんが計算する際は、基本は同じですが、居住地の自治体のHPをのぞいて、差異を確認してください。
では、年収180万円の会社員について、具体的な計算方法を見ていきましょう。
年収180万円の住民税の計算方法、まずは給与所得の算出
住民税の計算方法において、最初に算出すべきは年収から「給与所得控除」を差し引いた「給与所得」です。
給与所得控除とは、サラリーマンの経費のようなもので、税金がかからない金額をいいます。
そして、年収によってその控除額が決まっています。
年収180万円であれば、給与所得控除額は年収×40%で、72万円となります。
そして、年収180万円から給与所得控除の72万円をひいた108万円が給与所得です。
ちなみに、年収180万円はひとつの区切りの金額で、それ以下の場合は年収×40%、それが65万円に満たない場合は65万円が控除額になります。
年収180万円を超えて360万円以下では、控除額は年収×30%+18万円です。
給与所得控除の他にも、さまざまな条件に該当する場合に、各種の所得控除が設けられています。
代表的なものは、基礎控除で、納税者全員に対して、33万円の控除が認められています。
そして、所得が38万円以下の扶養対象の配偶者がいる場合、一般の配偶者は33万円、70歳以上の配偶者の場合は38万円の配偶者控除があります。
配偶者以外の扶養控除は、16歳以上70歳未満(19歳以上23歳未満のぞく)で33万円、19歳以上23歳未満で45万円が控除されます。
他にも70歳以上の老人扶養親族では38万円、同居老親等は45万円という扶養控除があります。
また、障害者控除は本人や扶養対象親族に障害者がいる場合、1名につき26万円、特別障害者は30万円が控除されます。
給与所得控除以外にもある、住民税のさまざまな所得控除
年収180万円から控除できるものは他にもあります。
正しい住民税の計算方法を知るために、他の所得控除にもふれておきます。
・配偶者特別控除
所得が38万円超76万円未満の扶養対象外の配偶者について、所得により33万円から3万円の段階的な所得控除がある。
・社会保険料控除
健康保険、年金、介護保険料など社会保険料は全額控除。
・小規模企業共済掛金等控除
小規模企業共済法で定められた共済の掛け金なども全額控除。
・生命保険料控除
生命保険料や簡易保険料と、個人年金保険料についてはそれぞれ以下の通り。
①1.5万円以下は全額。
②1.5万円超4万円以下は支払った保険料×1/2+7500円。
③4万円超7万円以下の場合は支払った保険料×1/4+17500円。
④7万円を超える場合は3.5万円。
・地震保険料
地震保険料が5万円以下の場合は保険料×1/2、5万円超の場合は2.5万円。
・医療費控除
(支払った医療費-保険補填)-(所得金額×5/100)と、10万円のいずれか少ない方の金額。
・雑損控除
災害や盗難で資産に損害を受けた場合、(損害金額-保険補填)-(所得金額×1/10)と、個人支出-5万円のうち、金額の多い方。
・寡婦控除
夫と離婚または死別していて独身で扶養対象親族がいる場合、年収500万円以下は30万円、それ以上の場合は26万円。
・寡夫控除
妻と離婚または死別していて独身で、年収500万円以下であり、同一世帯に所得38万円以下の子供がいる場合、26万円。
住民税の計算方法その①所得割
これら所得控除の合計を、給与所得から引いたものが課税所得になり、これで年収180万円の住民税の計算方法を知る準備は整いました。
ところで、大阪府大阪市の場合、住民税には市民税と府民税があり、先にそれぞれに所得割、均等割、調整控除などがあると述べました。
まず所得割の税率は、市民税6%+府民税4%の合計10%です。
具体的に、給与所得が年収180万円から給与所得控除72万円をひいた108万円で、基礎控除33万円以外の所得控除がなかったとしたら、次のようになります。
・住民税=課税所得金額75万円×10%=7.5万円(内訳は、市民税が4.5万円、府民税が3万円)。
ただし、まだ続きがあります。
税額控除といって、算出された税額から、さらに税額自体を減らす控除のことです。
まずは調整控除額ですが、所得税と住民税とで扶養や配偶者、寡婦(寡夫)、障害者などの人的控除額が異なるため、調整する必要があります。
所得税より住民税の方が人的控除額が少ないため、その差額合計か課税所得金額のうち、少ない方の5%(市民税3%、府民税2%)を税額控除するのです。
たとえば基礎控除であれば、所得税では38万円、住民税では33万円なので、差額の5万円の5%をひきます。
その他の主なものでは、住宅ローン減税の適用を受けている人は税額控除があります。
ただし、所得税で控除しきれなかった金額についてのみ上限13.65万円の範囲内で、市民税で3/5、府民税で2/5の税額控除になります。
住民税の計算方法その②均等割
最後に、住民税の均等割についてですが、均等割は文字通り、所得の多少にかかわらず、一定の税額が課税されます。
まず市民税は、標準税率で年額3,000円、府民税は年額1,000円です。
しかし、臨時措置として平成26年度から35年度までの間、防災のための施策に要する費用の財源確保のために、それぞれ500円づつが加算されます。
さらに、大阪府では、平成28年度から31年度までの間、森林の公益的機能を維持増進するための森林環境税として、府民税に300円が加算されます。
まとめると、平成29年度の住民税だとすると、市民税は3,500円、府民税は1,800円ということになります。
年収180万円の住民税を総括すると、
・市民税の所得割=課税所得金額×6%-調整控除(人的控除の3%)-税額控除(住宅ローン控除の未処理分などの3/5)。
・市民税の均等割=3,500円。
・府民税の所得割=課税所得金額×4%-調整控除(人的控除の2%)-税額控除(住宅ローン控除の未処理分などの2/5)。
・府民税の均等割=1,800円。
以上の合計金額が、住民税です。
実際に年収180万円の住民税を計算してみよう
最後に、前提条件を定めて、年収180万円の住民税の計算方法を使って、実際に住民税を計算してみましょう。
注意事項としては、端数の処理について、課税所得金額は1,000円未満を切り捨てます、
また所得割額は、市民税と府民税それぞれで計算し、100円未満の端数は切り捨てます。
前提条件は、平成28年度の大阪府大阪市に住む、年収180万円の会社員です。
家族構成は、扶養対象配偶者のみ、住宅ローンなどはなしとします。
①給与所得控除は、180万円×40%=72万円
②給与所得は、180万円-72万円=108万円
③所得控除は、基礎控除33万円+配偶者控除33万円=66万円。
④課税所得金額は、108万円-66万円=42万円。
⑤人的控除の差額は、基礎控除5万円+配偶者控除5万円=10万円。
これらのことから、
・市民税所得割=42万円×6%-10万円×3%=22200円。
・市民税均等割=3500円。
・府民税所得割=42万円×4%-10万円×2%=14800円。
・府民税均等割=1800円。
端数処理には該当しませんでしたので、以上を合計して、住民税の年額総合計は42,300円となります。
月払い金額は、端数の300円は初月である6月に足しこんで、6月は3,800円、その後11ヶ月は3,500円ということになります。
所得控除を知って活用しないと損をするかも
年収180万円の住民税の計算方法について、簡単にまとめてきました。
実際には市区町村で計算しますが、所得控除を活用することで、所得税だけでなく住民税も軽減できることがわかったと思います。
ぜひ年末調整時には、控除書類をできるだけ集めて提出しましょう。