家賃滞納で裁判になった場合、費用は誰の負担になるの?

世の中いつどんなことがあるかわかりません。

万が一、不本意にも収入の道が断たれ、家賃滞納してしまったという場合、家主との話し合いが決別し、裁判になることがあります。

その場合、どのような裁判で、どのような判決が考えられるのでしょうか。

そして、裁判の費用などは誰の負担になるのでしょうか。

家賃滞納をするとすぐ裁判になるわけではない

定年まで、ずっと同じ会社に勤めることができるのは、今の日本では幸せなことかもしれません。

そのくらい、会社の破綻やリストラなどが当たり前の世の中であるといえます。

そんな中で、不本意にも突然の解雇を言い渡され、収入の道が断たれてしまった場合など、家賃を始めとする生活費が途絶えることになります。

失業保険だけでは、とても家族を養っていけるわけもなく、やむなく家賃滞納をしてしまった場合、どのようなことになるのでしょうか。

もちろん、家賃の支払いが滞るような場合、まずは管理会社か家主さんに事情を話さなければなりません。

そして、おそらく1~2ヶ月であれば、管理会社かオーナーである家主さんから、催促の電話や督促状などが届く程度でしょう。

そして、支払うことができれば、退去まではいかないのではないでしょうか。

ところが、なかなか次の仕事が決まらず、支払いのめどさえ立たないということが続く場合、訴えられることがあります。

そう、裁判になるのです。

裁判の経験は、なかなかできるものではありません。

もちろんしないに越したことはないのですが、もしそうなった場合、どのような判決が下され、どんな費用が発生するのでしょうか。

家賃滞納による裁判は民事の簡易裁判

まずは、家賃滞納をしないことが最善の策といえますが、どうしようもない場合があるかもしれません。

そのとき、最初にするべきことは、管理会社や大家さんに相談することです。

そして、全額でなくとも払える金額だけでも支払うことです。

そうすることで、黙って滞納するより誠意があるとみなされて、裁判までいかないことも考えられます。

しかし、それでも何ヶ月もの滞納が続くと、裁判になる可能性が高いといえます。

どのような裁判かというと、家賃の支払いと諸費用の支払いを求める民事裁判です。

裁判には、民事と刑事があり、民事は当事者間の権利義務に関する紛争を取り扱います。

刑事裁判は、刑法に触れる犯罪行為をした場合に、真実を明らかにし量刑を決める争いになります。

家賃滞納の場合は、犯罪を犯したわけではなく、大家さんの収入である家賃の支払いを怠ったわけです。

つまり、大家さんに損害を与えて訴えられるという民事裁判になります。

民事裁判の中でも、請求金額が140万円以下の訴訟では、簡易裁判となります。

この場合、訴状の提出、答弁書の提出、口頭弁論などを経て、判決となります。

また、損害金額が60万円以下の場合は、少額訴訟となり、簡易裁判は1日で終了し、費用もそれほどかかりません。

家賃滞納による裁判の手順

では、実際の裁判はどのような流れで進んでいくのでしょうか。

まずは、何ヶ月かの家賃の滞納を受けて、大家さんから裁判所に訴状が提出されます。

裁判所は、訴状を受理したら第1回口頭弁論の日にちを決定し、入居者に訴状と呼出状を送付します。

次に、被告である入居者は、原告である大家さんの主張に対する言い分を、答弁書に記載して裁判所に提出します。

そしてやっと、大家さんと入居者が出頭し、裁判の第1回口頭弁論が開かれます。

口頭弁論では、提出書面に基づく双方の主張を述べ、証拠の提出などを行います。

裁判官は、争点について判断するために、証書の取り調べ、証人尋問、当事者尋問などの証拠調べをします。

証拠調べののち、原告の請求が認められるか、もしくは認められないかの心証を得て、はじめて口頭弁論が終了し判決が下ります。

原告である入居者が、家賃滞納の事実を認めれば、おそらく1回で裁判は終了すると思います。

もし、入居者が出廷しない場合は、即日敗訴となり、裁判費用や請求金額の支払いなど、判決に従わなければなりません。

実際の裁判にかかる費用はどのくらい?

一番気になることが、裁判になった際にどのくらいの費用がかかるのかということだと思います。

家賃を滞納するくらいなので、生活がままならないうえに、裁判費用の支払いまで負担するとなると、どうしようもありません。

しかしながら、裁判で敗訴した場合、一般的に裁判費用は敗訴した側の負担になります。

家賃滞納では、原告側も弁護士まで頼む必要はないと思いますので、本人同士か、代理人として司法書士さんなどの出廷ですむはずです。

そして、弁護士や司法書士さんに支払う着手金や成功報酬までは請求されませんが、実費は請求されます。

実費は、内容証明郵便料や謄本等の取得費用が数千円、代理人日当が4,000円程度、交通費、訴訟の印紙代が請求金額の1%程度、ほかに切手代などです。

敗訴すれば、未払い家賃に加えて、このような原告側の裁判費用まで負担しなければならなくなります。

そして、実際に家賃を滞納しているわけですから、こちらに勝ち目はないわけですね。

そして、裁判になった場合は、100%とはいえませんが、強制退去も覚悟しておかなければなりません。

強制退去にかかる費用も、原告から請求されると思っておきましょう。

裁判の費用や請求支払い義務が果たせない場合

ところで、もし判決に書かれた請求金額が払えない場合はどうなるのでしょう。

強制退去後であっても、どこへいこうとも、判決から逃れることはできません。

現金がなければ給料などが差し押さえられ、家財や車などがあれば、それらも差し押さえられます。

厳しいと思うかもしれませんが、社会的には当然の結果というしかありません。

なぜなら、家賃滞納をした時点で、大家さんからすると、すでに損害を受けているからです。

店子である入居者は入居する際に、遅延なく決まった家賃を支払うことを契約しているわけです。

滞納という契約違反をしたうえ、その状態が継続的であれば、大家さんは裏切られ、損害を受け続けているのです。

さらに裁判となると、手続きにかかる時間や費用、心的ストレスまで考えると、大家さんこそ被害者ですね。

逆に考えてみるとわかると思います。

勤めている会社が、規定の給料日に給料を支払わず、それが続いているという状態と同じです。

家賃滞納による裁判は費用だけでなく周囲への迷惑も

民事訴訟では、刑事訴訟と違って判決が下っても、あくまで支払い命令であり、前科がつくわけではありません。

しかし、入居者が家賃滞納をしたことで、周囲に多大な迷惑や損害が及ぶことになります。

入居者自身で終われば自業自得といえるかもしれませんが、入居時に親族などに保証人になってもらっていた場合、入居者だけでは終わりません。

入居者が費用や請求金を支払えない場合は、保証人である親族に督促がいきます。

保証人は、契約上入居者の負債を保証する立場の人ですから、支払えなかった家賃や諸経費を支払わなければなりません。

このようなことにならないためにも、現在の収入に対して、生活費は多少余裕をもって設定する必要があります。

余裕資金は貯蓄し、失職などの不測の事態に備えることが必要です。

万が一家賃を滞納するような事態になったとしても、周囲にできる限り誠意ある対応をし、生活を立て直す努力をすべきです。

そうすれば、裁判や強制退去などという事態は避けられるはずです。

家賃滞納の裁判の判決に向き合うことが大切

誰しも家賃滞納をしようとしてするわけではないはずです。

いろいろな事情が重なって、やむなく裁判という事態になっても、とにかく働けば事態は快方に向かうはずです。

役所に相談して、生活保護という公的援助を受ける方法もあります。

やるべきことはひとつです。

決してあきらめないで、できることを必死でやり続け、経済的に立ち直ることをすべきことです。