共同住宅の中でも、メゾネット物件が人気です。
メゾネットは1階から2階までを1住居としていて、中に階段を設ける必要があります。
階段の蹴上げや踏面、踊り場の寸法は、細かく法律でで定められているのです。
メゾネット物件の特徴と、階段の寸法についてお話します。
共同住宅メゾネットの特徴
アパートやマンションだけでなく、メゾネットは共同住宅です。
共同住宅の場合、1フロアのみを使って部屋を作るフラットタイプが主流ではありますが、メゾネットは1住居が1階と2階になります。
ロフトが付いている物件も似ていますが、メゾネットとは呼べません。
なぜならば、部屋の基準である天井の高さや窓の面積を、ロフト部分は満たしていないからです。
メゾネットは、1階も2階も基準を満たしていて、この間を階段で繋いでいます。
メゾネットのメリットとしては、耐震耐火性に優れています。
マンションと一戸建住宅の良いところを兼ね備えているため、魅力的に感じるかたもいらっしゃいます。
また、多い形式では2層部分にバルコニーが設けてあります。
バルコニーがあることで自然の光や風を感じ、開放的な空間が広がりますよ。
小さな子供のいる家庭は、子供部屋を2層部分に設けることで、足音などの音漏れの心配が軽減されるといった声もあります。
デメリットとしては、部屋の内部に階段があるため、掃除や洗濯などの家事に動力が求められることでしょうか。
物件次第では、冷暖房の効きも悪くなることがあります。
では、階段を作るときに用いる、踏面などの基本用語について見てみましょう。
踏面は階段のどこの部分?
階段を共同住宅に作るときには、専門知識のあるかたと、プランを立てることになります。
基本的な用語を覚えておくと、なにかと便利です。
階段は主に、踏板・蹴込み板・側桁などで構成されています。
☆踏板(ふみいた)
足をのせる板を指します。
先端部分を段鼻(だんはな)、上面部分を踏面(ふみづら)と呼びます。
☆蹴込み板(けこみいた)
足がのる踏板と、踏板の間の垂直部で、引っ込んでいる立ち上がり部分のことです。
☆側桁(がわけた)
階段の両側にある斜めの桁材で、踏板や蹴込み板を固定する役割があります。
☆踏面(ふみづら)
足をのせる板の上面です。
☆蹴上げ(けあげ)
階段の一段分の高さを指します。
専門用語を全て覚える必要はありませんが、上記のワードはマスターしましょう。
設計をお願いするときも、スムーズにプランが進められます。
共同住宅以外の建物も階段の踏面寸法は決められている
何気なく使っている階段ですが、蹴上げ、踏面及び踊場の幅の寸法は、法律で定められています。
建物内にある階段の寸法を見てみましょう。
共同住宅以外も併せてご覧ください。
●小学校(児童用)の階段
階段及び踊場の幅 140㎝以上
蹴上げ 16㎝以下
踏面 26㎝以上
●中学校・高等学校・中等教育学校の階段
階段及び踊場の幅 140㎝以上
蹴上げ 18㎝以下
踏面 26㎝以上
●客用の階段(劇場・映画館・公会堂・集会場など)
●床面積の合計が1,500㎡を超える客用の階段(物販店舗など)
階段及び踊場の幅 140㎝以上
蹴上げ 18㎝以下
踏面 26㎝以上
●直上階の居室の床面積の合計が200㎡以上の地上階用の階段
●居室の床面積の合計が100㎡以上の地階、地下工作物内の階段
階段及び踊場の幅 120㎝以上
蹴上げ 20㎝以下
踏面 24㎝以上
●上記以外・住宅以外の階段
階段及び踊場の幅 75㎝以上
蹴上げ 22㎝以下
踏面 21㎝以上
●住宅の階段(共同住宅の共用階段は除く)
階段及び踊場の幅 75㎝以上
蹴上げ 23㎝以下
踏面 15㎝以上
このように、細かく規定があります。
登りやすい階段の寸法は蹴上げと踏面が重要
共同住宅の階段は、蹴上げ22cm以下であり、踏面21cm以上と法律で定められています。
しかし、規定通りにするとなると急な階段になってしまいます。
あまりに急な階段ですと生活がしにくくなりますし、なにより安全面が心配です。
登りやすい階段は傾斜が緩いだけでなく、蹴上げと踏面との関係も重要になってきます。
そこで、登りやすいといわれている階段の目安があります。
『蹴上げの2倍+踏み面=60cm』です。
この数値が小さくなると、小股で歩くイメージです。
反対に数値が大きくなると、大股で歩くといったイメージで良いでしょう。
例)
●住宅の場合
蹴上げ19cmX2+踏み面22cm=60cm
●オフィスビルなどの共用階段
蹴上げ18cmX2+踏み面25cm=61cm
●公共の緩い階段
蹴上げ15cmX2+踏み面30cm=60cmこの60cmの数値は、日本人の体格の変化から60~62cm程度が登りやすいとして設計されています。
人によって、登りやすい階段は異なりますが、目安としてお考えください。
階段の形状は?
規定内の階段のサイズが決まったら、形状を決めましょう。
一般的なものであれば、以前では現場で階段が作られていたのですが、ここ最近の流行りは、建材メーカーが工場で加工したものです。
踏板や蹴込み板などがセットになっているのが、ほとんどになります。
色々な形状があるので、ご紹介します。
●直階段
1階から2階まで、まっすぐな階段です。
使う面積が少ないので、狭小住宅やメゾネットでも多く用いられています。
急な階段になりやすいので、注意が必要です。
●折り返し階段
踊り場が中間にあり、折り返して上り下りするタイプです。
万が一足を滑らせたとしても、下まで転げ落ちるリスクが少ないのが特徴です。
子供やご高齢のかたがいらっしゃるご家庭では、安心材料になることでしょう。
ある程度のスペースは必要ですが、ゆとりのある空間が生まれます。
●かね折れ階段
L字型になっていて、途中の踊り場で直角に曲がるタイプです。
●螺旋階段(らせんかいだん)
面積が限られていても設置することができます。
踏面が三角形のような踏み板が螺旋状に曲がった階段です。
デザインは良いですが、安全面は配慮が必要です。
大きな家具などの上げ下ろしは、少々困難なこともあります。
共同住宅などに入居するかたにとっては、螺旋階段を避けるかたもいらしゃるかもしれませんね。
共同住宅だからこそ安全性への配慮を
毎日のように使う階段だからこそ、誰もが使いやすいものにしたいですよね。
共同住宅では、単身者やら子供のいるご家族、ご高齢のかたまで幅広い年齢層の方が住んでいます。
そして、思わぬ事故につながらないためにも、安全性を重視していくことが大切です。
とくに階段の事故で多いのが、幼い子供やご高齢の方が滑って転んだり、最悪の場合落下してしまう可能性もあります。
こういったことを予測して、配慮のある階段にしましょう。
急すぎる階段は足をひっかけて転びやすくなります。
階段の勾配を緩やかにしたり、踏面の幅を広めにとって踊り場を設けるなど、ゆとりのある設計にしましょう。
滑りにくい仕上げを施したり、踏板が溝があるもの、手すりをつけるといったこともポイントです。
また、夜間でも利用しやすいように、通常の照明にプラスして、足元灯などを取り入れるのもおすすめです。
すでに踏板にLEDライトが内蔵しているタイプもありますよ。
階段のある住居は計画的に
階段の寸法が法律で決められているのは、驚きでしたね。
必ず規定を守って階段を設置しましょう。
どのような形状にするのかで、必要なスペースが異なります。
そして、住宅を建てる場合や、リフォームを行うときは念入りに計画しましょう。