現代風のモダンな建築様式も素敵ですが、近年、町家、長屋のような昔ながらの古民家の人気も高まっています。
その懐かしい雰囲気や落ち着いた空間を活かして、カフェや民宿として再利用されているところが多いです。
しかし、町家、長屋と聞いてその差を知る人はあまりいません。
その呼び名だけでなく、どんな違いがあるのか、何故このような建築様式になっているのかご紹介します。
町家とはどういうもの?読み方の違いはある?
町家と長屋との違いを知る前に、まずはそれぞれの作りについてご説明します。
町家とはその漢字の通り、町人の住む家のことです。
一般的には「まちや」と読みますが、「ちょうか」と読んでも間違いではありません。
町で商人や職人が農家に対し、商売や工業をするために建てられた店舗併設型の都市型住宅のことを町家といいます。
町家はそれぞれの住宅が直接通りに面して、均等に密接する形で立ち並んでいます。
その住宅は間口が狭いのに対して奥行が深くなっているのが特徴で、その構造から「ウナギの寝床」とも言われていました。
現在も地域によって観光地としているところも多く、特に有名なものとしては京都の京町家があります。
宿泊可能な町家や、町家カフェとして利用されているものがほとんどです。
長屋とはどういうもの?平屋のこと?
次に長屋についてご説明します。
長屋とは集合住宅タイプの家のことです。
町家はそれぞれの住宅が独立しているのに対して、長屋は複数の住宅が一つの建物の中で壁を共有しています。
住宅同士で壁を共有しているものの、玄関は独立しているため、それぞれの住宅から外へ出入りすることが可能です。
また、長屋と聞くと、一階建てのいわゆる「平屋」を想像する方が多いと思いますが平屋だけではありません。
二階建ての長屋もあります。
江戸時代までは一階建てのものがほとんどでしたが、現在は二階建てのものも多く建てられています。
例えば、「テラスハウス」という言葉をご存知でしょうか。
テレビ番組の影響で、一戸建てでの共同生活のイメージの強いテラスハウスですが、実は違います。
テラスハウスは長屋の一種です。
テラスハウスは二階建てが主流で、一戸建て住宅がつながったような形になり、外観がおしゃれなものが多いです。
壁は共有していますが、部屋は二重構造(メゾネット)ですし、玄関は独立しているので、一戸建てに近い感覚で暮らせます。
町家の作りとその魅力!問題点はプライバシーと虫?
町家は前に述べた通り、住宅が均等に密接しており、間口は狭く奥行きが深くなっています。
長屋と違い、壁は共有していませんが、隣の住宅との距離が近く、奥まっているという点だけみると日当たりや風通しが不安ですよね。
それらの課題を解決するために、町家にはその作りにいくつかの工夫がなされています。
一つは敷地の中央に中庭を設けることです。
これによって日光も入りやすくなり、各部屋へ風も通りやすくなります。
さらにもう一つの工夫が仕切りです。
部屋同士の仕切りを壁やドアで完全に遮断することなく、障子を使用することで開閉が簡単に出来るようになっています。
障子ならば開けると風が通りますし、たとえ閉めていても日光が入り込んで完全に暗くなりません。
中庭があることで緑や四季を感じられるのも良いですね。
問題点としては、仕切りが簡易的なのでプライバシーはあまり重視されていません。
また、中庭があることで虫が出やすいという点はあるかもしれません。
長屋の作りとその魅力!問題点はやはり騒音?
一戸建て住宅に近い感覚で暮らせるので、二階建ての長屋であるテラスハウスは魅力的ですよね。
では、実際どんな魅力、または問題があるのかご説明していきます。
まず、一番の魅力は二重構造(メゾネット)ではないでしょうか。
一階と二階があるため、一階をリビングや客人との共有スペース、二階を寝室や子供部屋のプライベートスペースなど、用途に分けて部屋を使うことが可能です。
また、小さい子供がいる場合、たとえ二階でも階下への足音の心配が軽減されるという点も助かりますよね。
玄関を出てすぐ外に出られるため、買い物から帰宅したときや、大きな荷物の運び入れも便利です。
反対に問題点として、やはり一番気になるのは隣の住宅の音ではないでしょうか。
一戸建てに近いとはいえ、長屋は集合住宅タイプです。
町家と違い、壁は共有しているので、音はどうしても響きやすくなります。
アパートなどの集合住宅に比べると、上下階の騒音の心配は軽減されますが、それでも騒音トラブルが起きないように最低限のマナーや気遣いは必要でしょう。
長屋とアパートの違いは何?
町家は都市型住宅で、長屋は隣の住宅と壁を共有している集合住宅のことをいう、とご説明しました。
これを聞いて、集合住宅ということはアパート、マンションも長屋の一種なのか疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アパート、マンションも同じように隣の住宅と壁を共有していますし、玄関はそれぞれの住宅で独立していますよね。
ところが、同じ集合住宅でもアパート、マンションは長屋には分類されません。
それには簡単な違いがあります。
玄関から外に出るまでに共有スペースがあるかどうかです。
アパートやマンションは玄関から外の通りに出るまでに廊下や階段、エントランスなどの共有スペースを通って行きますよね。
これに対して、長屋は共有スペースを通らずに、玄関を出るとそのまま外の通りに出ることが出来ます。
アパート、マンションと長屋は同じ集合住宅ではありますが、長屋の方がより独立した作りになっています。
どちらも魅力的な町家と長屋の違い
これまで町家と長屋について、その構造やそれぞれの魅力や問題点をご説明しました。
大まかな「古民家」というイメージから町家、長屋それぞれの住宅としての魅力や違いをお分かりいただけたかと思います。
住宅の作りが独特で、昔からの利点を大きく残している町人の家、町家。
狭い敷地で問題点となる日当たりや風通しを解決するために中庭を設けたり、仕切りに障子を利用したりと様々な工夫がなされています。
町家の木造の作り、雰囲気がなんとなく好きだったという方も、また違った感覚で見ていただけるのではないでしょうか。
一方長屋は、古くからある平屋と思われがちな集合住宅です。
こちらは古くからのものや観光というよりも私たちの暮らしに近い存在です。
特に近年よく聞く「テラスハウス」の意味は誤解されやすいため、長屋の一種であるということを知らない方も多く、驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長屋は集合住宅でありながら独立している点も多い、魅力的な物件です。
一戸建てでの生活を理想としているけれども経済的に難しい方にはおすすめです。
町家、長屋で暮らすこという選択肢も
町家も長屋も数は減ってしまったものの、廃れることなく現在まで残っているということはそれだけ魅力があるということですね。
また、宿泊場所やカフェなどの観光目的だけでなく、生活をするためのマイホームとして町家、長屋の作りを希望する方もいます。
昔ながらゆえに不便な点ももちろんありますが、興味のある方は候補として検討してみてもいいかもしれませんね。