町家と町屋どっちが正しい?造りの魅力と他の住居との違い

京都の観光地では、格子で囲まれた木造店舗が立ち並ぶ風景をよく見かけますよね。

こういった造りは町家と呼ばれ、風情を感じられますし、その落ち着いた雰囲気はとても人気です。

この町家、表記が町屋となっていることも多く、どっちが正しいか疑問に思ったことはありませんか。

今回はこの町家(町屋)について、読み方や建築構造などと一緒に魅力をご説明していきます。

「まちや」「ちょうか」読み方はどっちが正しい?

町家と町屋、漢字の違いも気になるところですが、まずこちらの読み方はご存知でしょうか。

「町家カフェ」というように、他の単語と合わさっている場合ならば響きが推測出来ますし、一般的には「まちや」という読み方をすることの方が多いですよね。

しかし、町家(町屋)というように単語単独の場合、「まちや」か「ちょうか」かどっちが正しいか迷いませんか。

実は、どちらの読み方をしても間違いではありません。

ただし、先ほどの「町家カフェ」や、京都にある「京町家」などは「ちょうか」とは読まずに「まちや」と読みます。

また、現在の町家の意味とは異なりますが、昔は町の集会所のことも町家と表記しており、この場合の読み方は「まちや」でも「ちょうか」でもなく、「ちょういえ」と呼ばれていました。

一つの単語でも意味、読み方が色々あるのは日本語の面白いところですね。

ちなみに東京都荒川区の地名である町屋は、もちろん「まちや」と読みます。

町家と町屋は同じ?どっちが正しい?

次に「まちや」と「ちょうか」、読み方がどちらでも間違いないのならば、漢字は「町家」と「町屋」どっちが正しいのでしょうか。

実はこちらも読み方と同様、「町家」と「町屋」どちらも間違いではありません。

町家(町屋)とはそもそも町人の住む家のことを意味しています。

町にいる商人や職人が、農家に向けて商売を行うために住んでいる家のことを町家と呼んでいます。

お店と住居が一体化した店舗併設型の都市型住宅のことですね。

そのため、町家と町屋どちらも間違いではありませんが、店舗としての意味合いが強い場合は「町屋」、住居としての意味合いが強い場合は町の家で「町家」とすると区別しやすいです。

一般的には町家造り、町家カフェ、京町家など、「町家」の方が多く使われているので、もしも迷ったときは町家と表記すれば大丈夫でしょう。

町家(町屋)の建築構造はウナギの寝床

ここまで町家(町屋)の読み方や漢字、どっちが正しいかを説明させていただきました。

ここからは町家そのものの建築構造についてもご説明していきます。

店舗併設型の都市型住宅である町家(町屋)は敷地を有効活用したその造りに大きな特徴があります。

まず、町家は玄関である間口が狭くなっており、その先の奥行きが深くなっています。

その構造から「ウナギの寝床」と呼ばれていました。

これには理由があり、江戸時代頃の町費は間口の広さによって決められていたからです。

間口が広いほど、金額も大きくなってしまうため、町家の間口は狭く作られるようになりました。

町費は現在でいう税金のようなものですね。

また、町家はそれぞれの住宅が、通りに対して均等に密接して立ち並んでいます。

間口が狭いうえに奥行が深く、隣の住宅とも密接していると、日当たりや風通しが心配ですよね。

この問題点を解決するために、町家はその造りに工夫がなされています。

まず、敷地の中央に中庭を設けることで、風通しを良くすると同時に、日光も取り入れやすくなるため、日当たりも良くなります。

さらに、各部屋との仕切りを障子にすることで、仕切りの開閉を容易にしています。

障子を開けると風が通りますし、閉めていても日光は通るので日当たりの問題も解決出来ますよね。

特に、現在も町家が多く残る京都は暑いので、冷房器具などがまだない江戸時代、こういった工夫はとても有効だったことでしょう。

町家と商家どっちが正しい?時代によって発展していった町家

町家(町屋)は商人が住む家でもあるため、商人の住んでいた町家は商家(しょうか)と表記されることもあります。

では、町家と商家は同じものなのでしょうか。

元々、平安時代初期頃、町家は民家という意味は持っておらず、店舗施設のことを「店屋(まちや)」と呼んでいました。

住居としてよりもお店、店舗としての役割が大きかったのですね。

それが地方の商人が都市に徴用されたりすることで商売の場も広がりました。

そのうち商人が都市での生活をするようになっていき、住居で商売を行い始める民家が町家と呼ばれるようになりました。

そのため、町家、商家どっちが正しいという決まりはありません。

時代によって、商人による経済の発展とともに町家の形と意味は少しずつ変化していったのです。

町家(町屋)と違う農家の住居

狭い敷地を有効利用するため、間口は狭く奥行きが深い建築構造が町家(町屋)でした。

町家は商人や職人が住むための住居ですね。

では、地方に住む農家はどういった住居で暮らしていたのでしょうか。

農家の住宅には「田の字型住居」と言われ、土間にも特徴があります。

田の字型に客間や居間などの部屋が配置されており、各部屋との仕切りには襖が使用されていました。

催事が行われる際には、この襖を外すことで各部屋をつなげて大きな広間として利用することが出来たようです。

まず、土間には炊事が出来るように、食物を煮るためのかまどや、馬屋が設けられています。

また農家の仕事道具である農機具置き場、農作物の貯蔵置き場としても使われていました。

同じ時代の住居でも、町家、農家、住宅構造は大きく違いますね。

違いはありますが、住居にはどっちが正しいという優劣はありません。

町家も農家も、昔からそれぞれ自分たちが使いやすいように、住宅にも生活に合わせた工夫がされていたのです。

町家に住んで暮らすということ

ここまで町家(町屋)の読み方や意味、住宅構造について説明させていただきました。

知識や情報が増えると、想像がしやすくなり、身近に感じますよね。

町家についての興味も持っていただけたでしょうか。

また、町家に宿泊するだけではなく、町家に暮らしてみたいと思った方もいるかもしれません。

実際、現在でも町家の賃貸物件というものもありますし、町家風にリノベーションしたり、町家の造りを取り入れて新築を建てる方もいらっしゃいます。

木造の古民家特有の雰囲気や、中庭や障子のある町家の空気はとても魅力的ですよね。

現代の機械技術よりも知恵を活かした町家の建築構造には感動しますし、惹かれます。

しかし、実際に暮らすとなると、それゆえの不便さも考えておかなければなりません。

木造なので音は響きますし、町家の造りはプライバシーも重視されていません。

夏は涼しいですが、冬は底冷しやすいです。

機械技術を活かした物件と町家造りの物件、どっちが正しいということはありませんが、毎日生活をする場所なので、とても重要です。

以上の問題点もふまえて、興味がある方はぜひ町家での暮らしも検討してみて下さい。

まずは町家に触れてみよう

町家、町屋、商家など言葉も呼び名もそれぞれですが、意味に大きな違いはありませんでしたね。

その移り変わりや言葉、町家の造りの意味合いを知ると、一層町家が好きになってきませんか。

有名なのは京町家ですが、地方にも素敵な町家はあります。

まずはご自分の近くの町家を訪れてみてはいかがでしょうか。

実際に町家の造りや雰囲気に触れて、もっと身近に感じて頂けると嬉しいです。