資産運用を考えた場合、「信託銀行」と「証券会社」のどちらを利用したら良いのでしょうか?
「どちらも大差ないのでは?」と、思っている方もいるかもしれません。
しかし、信託銀行と証券会社には、それぞれの特徴や機能面での違いがあります。
自分の資産運用にあった会社を選ぶには、それらの違いを知ることが大切になります。
「信託銀行」と「銀行」の違いは何?
「信託銀行」と「証券会社」の違いをお話しする前に、まずは、「信託銀行」と普通の「銀行」の違いを見ていきましょう。
通常、わたしたちが利用する「銀行」は、お金を預けたり、貸してもらったり、また振り込みなどの手続きをしてくれるところですよね。
このことは、銀行の三大業務で「預金業務」「貸付業務」「為替業務」と呼ばれています。
では、「信託銀行」とは、どんな業務をしているのでしょうか。
信託銀行は、通常の銀行業務に加えて「信託」と「併営」という、ふたつの業務も行っています。
「信託」とは、自分の財産を「信」頼できる人に「託」すことで、その財産を運用管理してもらうことを言います。
この場合の財産とは、お金や有価証券、動産、不動産などがあり、運用して得た利益は、財産を託した人に還元されます。
「併営」とは、遺言などの「相続関連業務」や、企業の株に関する「証券代行業務」、不動産の売買などの「仲介業務」などです。
この併営業務は、信託銀行などの「兼営法」の許可を得た金融機関にのみ認められている業務です。
実際には、各信託銀行によって業務の範囲は変わってきますが、銀行と信託銀行にはこのような違いがあります。
「信託銀行」と「証券会社」違いとは?
信託銀行は、普通の銀行と違い、信託業務と併営業務ができることが、お分かりいただけたと思います。
しかし、銀行も規制緩和で、信託銀行ほどではありませんが、資産運用の業務が行えるようになりました。
そのため、銀行と信託銀行の違いがわかりにくくなってきていますが、併営業務ができることが大きいということを覚えておいてください。
では、信託銀行と証券会社の違いは何でしょうか。
証券会社と聞くと、「株」のイメージが強いかもしれません。
しかし、証券会社は株以外にも、投資信託をはじめとする、「債券」や「年金保険」など、幅広い金融商品を扱っています。
また、ネット証券であれば、月々1000円ほどの少額からはじめられる「積立投信」などもあります。
このように見てみると、資産運用をするにはあまり違いはないように感じるかもしれません。
信託銀行と証券会社の一番大きな違いは、証券会社は「直接株の売買ができる」ことです。
信託銀行は、株の直接売買はできません。
しかし、いくつかの証券がまとめられた金融商品を購入することで、似たような資産運用をすることができます。
つまり、同じ証券を扱っていても、その取引の方法に違いがあるということです。
資産運用の違いで「信託銀行」か「証券会社」か変わってくる?
資産運用をするときに、信託銀行と証券会社のどちらを利用したら良いのか迷ってしまいますね。
どちらかに決める前に、資産運用の仕方の違いを見ていきましょう。
【老後などに備えるお金】
当面使う予定がないお金は、高い収益が期待できる、株式や投資信託がおすすめです。
遠い将来に使う予定のお金は、万が一投資が思うようにいかない場合でも、長い目で見ることができるので、挽回のチャンスがあります。
【結婚資金や住宅資金など目的がはっきりしているお金】
結婚や住宅購入など、数年後には使うことが決まっているお金は、定期預金、個人向け国債、公社債投資信託などがおすすめです。
このような商品であれば、大きな収益は見込めませんが、投資であっても元本の安全性が高いので安心です。
【生活費や不意の出費に備えるお金】
何かあったときに、すぐに使いたいお金は、換金性があって安全性の高い商品が良いでしょう。
普通預金やMMF、MRFなどがおすすめです。
このようにお金をどのように使うかで、運用商品が変わってきます。
資産のなかで、すぐにでも使う可能性あるお金は預貯金に回して安全資産を維持しつつ、当面使う予定のない資金を運用していくと良いでしょう。
投資信託で資産運用するための基本情報
当面使う予定のない資産を運用する場合、株や投資信託がおすすめだとお話ししましたが、前述したように株の売買は証券会社でしかできません。
そこで、信託銀行でも証券会社でも扱うことのできる「投資信託」について見ていきましょう。
投資信託は、ファンドとも呼ばれていて、「投資家から集めたお金を、まとめて運用の専門家が投資し、運用管理する商品」のことを言います。
運用をすることで発生した利益は、それぞれの投資額に応じて分配されます。
しかし、運用が上手くいく場合ばかりではありません。
投資信託の運用は、市場や世界情勢などによって変動し、いくら専門家が一生懸命に運用管理をしていても、運用が上手くいかず投資した額を下回ってしまい、損をすることもあるのです。
この投資信託は、信託銀行や証券会社はもちろん、普通の銀行でも販売しています。
しかし、投資のために集めた資産を預かるのは信託銀行です。
ここが信託銀行と証券会社の違いになります。
そして、信託銀行では投資家から集めた資産を分別管理しているので、例え信託銀行が破綻したとしても、「すべて保護される」仕組みになっています。
投資信託について「信託銀行」と「証券会社」の違いとは?
それでは、投資信託をはじめる場合、信託銀行と証券会社の違いについて見ていきましょう。
それぞれの違いを知って、自分に合ったものを選んでください。
【信託銀行の場合】
メリットとしては、ATMでの入出金、振り込みなど、通常の銀行業務を利用しながら、投資信託がはじめられるという手軽さがあげられます。
給与口座を投資信託の口座として利用できるので、売買をするのにもお金の移動がスムーズです。
投資信託の口座開設や売買などの面倒な手続きも、窓口の担当者がすべて行ってくれます。
また、投資信託以外でも、銀行の強みである、お金の相談にも乗ってもらえます。
【証券会社の場合】
証券会社で投資信託をはじめるメリットは、なんと言っても商品数の多さでしょう。
株や債券などの投資商品を専門的に扱っているので、信託銀行に比べると情報量も豊富です。
そして、投資の専門家が窓口で対応してくれるので、投資信託以外の投資についても相談でき、これから資産運用を積極的にしたい方にはおすすめです。
証券会社も信託銀行と同じく、担当者が口座開設から売買までの手続きを行ってくれるので安心です。
「信託銀行」と「証券会社」のもっとも大きな違いはこれ!
これまで、資産運用について、信託銀行と証券会社の違いについてご紹介してきましたが、大きな違いは併営業務で、なかでも「相続関連業務」でしょう。
「遺言」も「信用して委託する」もののひとつです。
遺言は自分が亡くなった後、財産分与などで親族が争わないように記しておくもので、信託銀行ではこの遺言を管理する業務も請け負っています。
このことは、資産を運用する上でも大きなメリットではないでしょうか。
自分の資産運用や預金など、信託銀行にまとめておけば、死後の管理や処分を引き受けてくれるのですから、安心です。
以前の信託銀行は、資産がたくさんある富裕層が利用するイメージがありましたが、最近では普通の銀行と同じような雰囲気で気軽に利用できるようになりました。
信託銀行は、総合的に「お金を管理する」金融機関と考えると良いでしょう。
一方、証券会社は、投資信託だけでなく、株式投資など、高いリターンが期待できる商品がたくさん揃っているので、「積極的にお金に働いてもらう」金融機関と言えます。
「信託銀行」と「証券会社」違いとは
「お金を管理」するのに向いている信託銀行と、「積極的にお金に働いてもらう」証券会社、それぞれの違いをお分かりいただけたでしょうか。
大切なお金ですから、信用ある金融機関に預けて、なるべく安全に運用管理したいですよね。
信託銀行と証券会社、それぞれの違いを知って、自分に合った資産運用方法を見つけてください。