会社勤めで在宅勤務という方は別として、自宅で仕事をされている方は、個人事業主として税務署に開業届を出されていることでしょう。
賃貸アパートにお住まいであれば、開業場所の住所はその自宅アパートで登録されているはずです。
では、毎月のアパートの家賃は、個人事業主の「経費」で落とすことはできるのでしょうか。
また、アパートの名義が家族の場合はどうなのでしょうか。
今回は、個人事業主の経費のお話しを中心にしていきましょう。
自分名義のアパートの家賃は経費で落とせる?経費の定義とは
まずは、個人事業主の経費についてお話ししていきましょう。
税金対策のためにも、経費で落とせるものはしっかりと落としていきたいものです。
自分名義のアパートの家賃は、経費で落とすことができるのでしょうか。
以下で経費で落とせるものをまとめました。
【経費で落とせるもの】
・アパートなどの家賃
・光熱費
・通信費
・消耗品
・交通費(ガソリン代など)
・旅費
大まかにご紹介すると、以上になります。
基本的に、仕事に関わるものは経費で落とすことができ、家庭で使用するものはここに含まれません。
自宅で仕事していると、文房具などは混同してしまいそうになりますが、そこはしっかりと分けましょう。
また、経費で落とすためには次のようなものが必要になります。
・領収書(またはレシート)
・出金伝票
領収書がなくても、レシートがあれば問題ありません。
レシートや領収書が入手できない場合に関しては、出金伝票で対応することができます。
上記を紛失すると経費で落とすことはできなくなるため、しっかりと管理しましょう。
経費で落とせないものとは?
自分名義のアパートの家賃は、経費で落とすことができることが分かりました。
その他も、事業に関するものならば、経費にあてることができます。
では、経費で落とすことができないものには、どのようなものがあるのでしょうか。
以下でまとめてご紹介していきましょう。
●事業主自身の支払い
個人事業主の場合、自分自身のために使ったお金は経費で落とすことはできません。
具体的には、自身の給料、健康診断の費用、スーツや靴の費用、自身の税金などが挙げられます。
●仕事と関係ない支払い
仕事に関係する飲食や贈答品に関しては経費で落とせますが、それ以外の飲食や、個人的な贈答品などは経費で落とすことはできません。
自宅で仕事をしている場合は、混同しがちなため、より注意が必要です。
●家族への給料
基本的に、従業員への給料は経費で落とせるものですが、生計を共にする家族への給料に関してはここに含まれません。
同じ家計内で生活しているとみなされるため、事業主自身への支払いの一部と考えられるためです。
アパートの敷金や高額な買い物も経費で落とせない?
続いても、経費で落とすことができないものについてお話ししていきます。
●敷金や礼金
事業用に自分名義でアパートを借りると、もちろん家賃は経費で落とすことができます。。
しかし、賃貸契約時に発生する敷金などに関しては、経費とすることができません。
敷金は「のちのち帰ってくるお金=資産」として捉えられるためです。
一方の礼金に関しては、20万円以下であれは経費とすることができ、それ以上の金額の場合は、敷金同様に資産の扱いとなります。
●10万円以上の買い物
パソコンなど、1つあたりの金額が10万円以上と高額の場合、経費ではなく「固定資産」とみなされます。
そのため、購入時に経費として落とすことはできません。
パソコンであれば、その耐用年数によって、減価売却費を計算することとなるでしょう。
●交通違反の罰則金
仕事中に発生した交通違反などの罰則金は、経費にはなりません。
駐車のための料金、レッカー代に関しては、経費で落とすことができます。
按分を知って賢く税金対策しよう
ここでは、自宅で仕事をする上で非常に大切な「按分(あんぶん)」についてお話ししていきましょう。
按分とは、アパートで仕事をしていて、事業として使用している分の光熱費などの割合を、必要な経費として落とすことを指します。
以下で自宅で仕事をする方の、按分の目安をご紹介しましょう。
【自宅が仕事場の按分の目安】
・自分名義のアパートの家賃…仕事部屋の床面積の割合
・電気代…仕事の時間、またはコンセントの使用数による
・インターネット通信費…仕事で使用した時間による
・車関係(ガソリン代など)…仕事に使用した走行距離による
不正を防ぐため、確定申告などのタイミングで、税務署の方に勤務時間などを問われることがないとも言い切れません。
どのくらいの時間業務をしていたのかを証明するために、勤務表などを作成し、毎日しっかり記入しましょう。
自分名義の家賃の按分はどのくらい?光熱費は?
ここでは、自分名義のアパートの家賃の按分を見ていきましょう。
仕事をする部屋が決まっているようでしたら、床面積に応じで按分計算することとなります。
例として、アパートの家賃が10万円だったとします。
アパートの広さは60m²で、仕事部屋として使用している場所は10m²であるとします。
この場合は次のようになります。
10万円×10/60m²=15,000
つまり、経費として落とせる家賃は15,000円分となります。
これにならって、インターネット通信費を見ていきましょう。
インターネットは24時間使用できますから、もちろん仕事中以外も使用することとなりますよね。
通信費は業務をした時間により按分することができます。
例えば、毎月の通信費が5,000円だとして、業務で使用している時間が1日あたり6時間であったとします。
また、業務外の趣味でインターネットを使用している時間は、1日あたり4時間であったとします。
上記で按分計算すると次のようになります。
5,000円×6/10時間=3,000(業務)
5,000×4/10時間=2,000円(趣味)
つまり、経費で落とせる通信費は3,000円ということになります。
家族名義のアパートの家賃は経費で落とせる?
例えば、妻が個人事業主として自宅で働いていたとします。
一方の夫は定職についており、審査に通りやすいということから、アパートの名義が夫であったとしましょう。
この場合、妻の事業の必要経費として、アパートの家賃を按分して落とすことはできるのでしょうか。
税務署によると、夫の名義のアパートであっても、家賃を妻の経費として落とすことはできます。
これは所得税法56条によるもので、「事業をしている妻が夫の資産(アパート)に対価を払って事業用に使用している場合は必要経費とみなす」とされています。
また、「事業をしている妻が夫の資産(アパート)を無償で借り、事業用に使用している場合は必要経費とみなす」とも記載されています。
要は、賃貸アパートが家族名義であっても、経費として按分して落とすことができるです。
しかし、注意したいのは、必要経費で落とせるのはあくまでも「家賃」であるということです。
持ち家で事業をしている方で、住宅ローンを組んでいるという方も多いでしょうが、住宅ローンに関しては経費として落とすことができないようになっているため、注意が必要です。
家族名義のアパートの家賃も必要経費で落とせる!
個人事業主の経費についてお話ししましたが、経費で落とせるもの、落とせないものは、事業に関わりのあるものかどうかで判断するということが分かりましたね。
家賃も経費で落とせるものに含まれますので、家族名義であっても問題はありません。
経費で落とせるものは、しっかりと落としましょう。
そして、按分計算して計上することを忘れずに行ってください。